sekimayori さんの感想・評価
3.3
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 2.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
意識高すぎて意識低くなってない? 【63点】
未知の生物に寄生された主人公の戦いを描く有名漫画のアニメ化。
さすがにストーリーは面白い。
アニメの存在をきっかけに寄生獣を知る方が増えると嬉しいですね。
ただし原作読者としては、アニメならではの付加価値はあまり感じられなかったのが本音。
■女性的な『寄生獣』
最初に良かった点。
確か放送中にTwitterで見かけたのだけど、原作より女性性が強調されているという指摘が(検索かけたけど自分が遭遇したツイートが見つからない……パクリでごめんなさい)。
副題の「セイの格率」、性も含んでいるのでしょうね(他は生、星、正とか?)。
{netabare}考えてみると寄生獣の構成は、「男性と女性」の物語の連続。
母と子(母親、新一)→男と女(新一と加奈)→母と子(田宮、新一)→男と女(新一、里美)
原作は透徹した目線で描かれ、男性性のマッシブさが物語を覆っていたのだけど、女性性の温かみがプラスされた印象は確かにある。
恋する乙女になった加奈もそうだし、花澤ボイスの里美、平野ボイスのミギーも、そうした意図によるのでしょうか。
女性性の強調によって、性別を持たない寄生獣と人間の対比、母を喪失した新一を最終的に里美が包み込むという物語展開に、深みが増したようにも思われます。{/netabare}
■ただ正直、不満点の方が多かったり。
以下は愚痴。
漫画『寄生獣』が名作とされる理由。
人間の相対化とか、環境問題への一段上からの視線とか、それらすべてを包含する共生のメッセージとか色々あるけれど、優れた批評がそこここにあるので、原作読み込んでない私からの言及は控えたく。
ただ個人的に、その全部の根底にあるのが、バディもの・バトルものエンタメとしての確固たる面白さだと思うのですよ。
{netabare}得体が知れないのに可愛いさを醸し出すミギーと、それに翻弄される新一。
二人は(一人と一匹、のはずなのに、二人としか形容しようがない)、種族や身体性というどうしようもない断絶を抱えている。
ミギーが新一を呼ぶ声はどこまでも「シンイチ」であって、「新一」ではないのです。
そんな二人が日常と非日常の中で、いつしか心を通わせる。
その交流の深化に伴い共闘の完成度が高まって、強敵を打ち破っていく。
エンタメとしてのツボをしっかり押さえたことが、テーマに説得力を持たせていたように感じます。
だからアニメで、二人のやり取りが大きく削られているのが、残念でならない。
関係性の深まりが実感として伝わってこなかった。
戦闘の演出もかなり淡白。
原作からして、棒立ち戦闘を絵のケレン味で補っていたので仕方はないけれど、その絵の凄味が消えてしまった以上、アニメならではの緊迫感の出し方を考えて欲しかった。
レイアウト等難しいのは承知の上で、終始ブカブカ不穏なだけの音楽だけでももう少し何とか……。
また、尺の都合があるのは重々承知の上で、田宮の最期を18話Aパートで処理した点は、不満通り越して笑いが出た。
新一の涙(ED曲付)→CM→浦上のオ○ニーシーンって、それどういう構成だよ……。
総括すると、連続TVアニメであることへの意識低すぎでは。
新一の服装に意識高く哲学用語散りばめる前に、純粋に30分×24話のエンタメとしてのパワーを高めて欲しかった。
エンタメ的快感と高尚さのバランスって難しいんだろうなぁとスタッフの苦労を思いつつ、でも原作読んだアニメ好きとしてははっきり不満。
原作の記憶が薄れていることもあり、後藤戦のラストなど2、3点以外「そりゃねーよ」って改変がなかっただけに、余計「あと一歩」感が。
久しぶりにじっくり原作読みたくなりました。 {/netabare}
【個人的指標】 63点