あにめじさん さんの感想・評価

4.6
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 3.0 状態：観終わった

タイムリープとモラトリアムの終焉

つい先程見終わったのですが、かなり面白かったので古い順からレビューする自分お約束を曲げてレビュー。

タイムリープものと言えば、近年で言えば「時をかける少女」や「まどかマギカ」「涼宮ハルヒ、エンドレスエイト」、古いもので言えば「うる星やつら、ビューティフルドリーマー」などがあげられる。
小説や実写映画、漫画を含めればそれこそ大きなカテゴリーとしてひとつ出来上がるほど溢れている。
しかし、その作品群のなかで、タイムリープというものの価値を正確に理解して作品として成立させているものがどれ程あるだろうか。
SF的ギミックとして(若しくは単なる作品ガジェットとして)タイムリープを扱っているのならば、それは大間違いだと言いたい。
タイムリープする物語の主人公は、望む望まないは別にして「今」を繰り返す。それは言い換えれば「何をどうやっても今の自分の状態は変わらない」事を暗示している。状態を変化させる事はタイムリープの終わりであり、それは物事が強制的に決着させられることの暗示でもある。

話を少し変えて、状態が変化しない繰り返しの事を考えてみる。これはアニメではよくあることだ。
主人公たちが年を取らない延々と続く学園ものだったりラブコメだったり、それはどこにも進まない非日常である。
彼らは卒業後の進路に悩むこともなく(そういうのもあるのはあるが)、いっこうに進展しない想い人との生活、繰り返されるクリスマスなどのイベントに疑問を持たない。
アニメなんだから、別に良いじゃないか。確かにそうだ。登場人物たちは。
しかし、それを見ている我々は、彼らに何を投影しているのだろうか。終わらない日常的非日常へ、自らの過去への郷愁や憧れを見ているのではないだろうか。それはまさに自分が何者でもなかった時、モラトリアムを享受しているといえる。

さて、話を戻してタイムリープ。

ごく普通にあるラブコメや学園もののアニメがモラトリアムを受け入れるものだとするならば、タイムリープものとはどういうものか。タイムリープは前述したように主人公が繰り返しの中にいる自覚のある物語である。主人公は視聴者の投影である。つっまりタイムリープとは「終わらない物語を終わらせに行く。モラトリアムの終焉を自らつかみに行く成長(をしない破滅するタイプもある)の物語である」といえるだろう。
色々な視点はあるが、特にこのSTEINS；GATEに関してはこれは非常に大きな要素になる。そしてそれを見事に描ききった良作である。
さて、以後ネタバレレビュー

主人公である岡部倫太郎、このキャラクターを受け入れられるかがこのアニメの最大の山場といっても過言じゃない。初見の時、始まって10分で一回見るのをやめました、私。なぜって{netabare}この人、ひどい中二病的発言を繰り返していて苦痛なんです。ラボメンと呼ばれる彼の仲間もネットスラング(しかも作品世界時間の2009年当時でもかなり古め)多用するし、なんか展開もだるんだるんだし。
でもそこで見るのをやめた私は再度見はじめて激しく後悔しました。中二病的発言を後の展開で岡部自身が「設定だ！」と自己否定します。それは彼自身がモラトリアムからの脱却をしなければならない状況に追い込まれたためですが、それと同時に彼は助手を好きだと自覚していきます。
モラトリアムから抜け出すことで、彼は自己に責任を追う「何者か」になっていくのです。その流れが進む中盤は見なければわからない引き込まれようです。ああ、最初の時にきちんとそこまで腰を据えてみていれば。。。
ともかく、モラトリアム的になにも責任を追わず、自身の行動を決めていた彼が、変化していくさまはまさにタイムリープの王道です。
とはいえ、人間そう簡単に全部変わるはずもなく、未来の彼はやはり言葉遊びとしての中二病を持っています。その演出もこ憎い。{/netabare}
ともあれ、どうやって彼がタイムリープに入り、そこから抜け出すために何を得るのかは視聴をおすすめします。
評価はキャラクターデザインが好き嫌い別れそうなので3、それ以外は5です。
あと、準ヒロイン(失礼)の椎名まゆり(花澤香菜)の「とぅっとぅるー」がやたらと残ります。