アリア社長 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
分かり合うことの難しさを乗り越えて・・・
『機動戦士ガンダム』誕生20周年記念作品として製作されたTVアニメ。
1999年~2000年放送。全50話。
総監督はガンダムシリーズの生みの親である富野由悠季。
音楽は「カウボーイビバップ」「マクロスF」などを手がけた菅野よう子。
メカニックデザインは映画「ブレードランナー」「スタートレック」のシド・ミード。
キャラクター原案はゲーム「ストリートファイター」などを手がけた安田朗。
とにかくスタッフがめちゃ豪華なアニメ。
【あらすじ】
月の民は故郷である地球に移住する計画を遂行すべく、月の女王ディアナ・ソレルと地球帰還のために組織された軍隊は地球に降りることに。
地球の民は月の民を侵略者とみなし、土地を奪われまいと抵抗する。
こうして月の民と地球の民との間で戦争が始まることとなった。
主人公の少年・ロラン・セアックは月の民でありながら、地球の民と共に争いを止めようとするが・・・
【感想】
これまでのガンダムとはずいぶん雰囲気が違う印象。
自分はガンダム作品として、というよりもSF作品として楽しめました。
また従来のガンダム作品との違い・変化という視点で見ても面白い作品です。
以下特に良かった点3つ。
①敵も味方も一枚岩ではない
ここは従来のガンダム通り、敵と味方の善悪二元論的な単純な対立構造ではなく、それぞれのキャラが色んな考えを持って行動します。
味方も敵も軍事力で物事を解決しようとする者もいれば、話し合いにより互いの主張の着地点を模索しようとする者もいます。
この入り組んだ人間関係が織りなす群像劇が面白かったです。
人の考えは十人十色。だからこそ互いが分かり合うことは本当に難しい。
考えるのを放棄して「これだから地球の民は野蛮人」などとレッテル張りをする月の民もおり、逆に地球の民もまたしかり。
この辺は現実の我々にも当てはまる問題だと思います。
しかしそれでも分かり合うことの難しさを乗り越えて和解しあうために、主人公ロランは奮闘します。
その主人公の真っ直ぐさに好感を抱きましたし、我々も彼から学ぶことがあると思いました。
②ガンダムの新たな可能性
ガンダムといえばもちろん戦闘兵器であり、これまではただの戦闘の道具として描かれてきました。
しかし今作ではガンダムが洗濯の手伝いをしたり、道行く人のための橋代わりになったりと、生活の中にガンダムが溶けこんだような描写がよく挟まれます。
これが自分には結構衝撃的でして、新しいガンダムのあり方が提示されていると感じました。
作品の雰囲気、ガンダムの描き方に関して他のガンダム作品と比較すると、また違った面白さが見えてきました。
③月の繭
菅野よう子が作曲したEDおよび挿入歌の『月の繭』が本当に素晴らしい。
この曲を聞くと∀ガンダム全50話分の様々なシーンを思い出し、どことなくしんみりとした切ない気持ちになります。
ガンダムソングの中じゃ一番好きです。
【終わりに】
「∀」という記号は「全ての〜」を意味する。
要するに∀ガンダムはこれまでのガンダムシリーズの歴史全てを総括する作品という位置づけだそうです。
なのでガンダム作品をこれまで見たことのない人が最初に手を付けるガンダムとしては相応しくない作品だと思います。
ガンダム作品をある程度知ってるという方にはぜひ見て欲しい作品です。