ようす さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
日本の文化が生み出すもの。古典もアニメも、こんなにも美しい。
「竹取物語」を原作とした、
高畑勲監督による、2013年公開の映画。
制作期間8年という、膨大な時間をかけて作られたそうです。
かぐや姫のお話は幼いころに慣れ親しんだ人も多いと思います。
しかし、観る前の「竹取物語と言われてもそこまで興味ないなあ。」
という考えは大間違いでした。
竹から生まれて、月へ帰るお話?
いやいや、そんな単純な中身じゃないのですよ。
ストーリーは知っているはずなのに終盤は大号泣でした;;
● ストーリー
「今は昔、竹取の翁(おきな)といふ者有りけり。
野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。
名をば讃岐造(さぬきのみやつこ)となむ言ひける。
その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。
あやしがりて寄りて見るに、筒の中光りたり。」
学生時代に暗唱した人も多いのではないでしょうか?笑
ストーリーはオリジナル部分もあるものの、
ほぼ原作通りに進んでいきます。
かぐや姫の成長は普通の人よりも早いため、
赤ちゃんの成長を早送りで観ているようです(笑)
「ハイハイした!」「おお、立った!」という感動がほぼ同時にくるので、
なんだか忙しかったです(笑)
時間や季節の移り変わりは、背景の植物たちが教えてくれます。
季節の植物に詳しかったら、もっと味わい深く観れたんだろうなあ、と
自分の一般常識のなさを嘆いていました(笑)
≪ 「家族」とは ≫
竹取物語のテーマを明確に「これ」と言うのは難しいと思いますが、
私は強い「家族の役割」を感じました。
かぐや姫を竹の中から拾い、
大事に大事に育てたのは翁(おきな:讃岐造)と媼(おうな)です。
・翁(父親)は、家を大きくし、娘の幸せをひたすらに願い続ける。
(ただし、娘の気持ちに反した独りよがりであることも多い。笑)
・媼(母親)は、娘の気持ちに寄り添い、一番の理解者であり続ける。
これって模範的な家族の形なのではないでしょうか。
竹取物語が書かれたのは平安時代とされていて、
今から千年以上前に書かれた物語です。
この頃から「家族とはこういうものだ。」と考えられていたのかと思うと、
何とも感慨深いものがあります。
≪ 月から迎えがやってきて、かぐや姫を連れていく ≫
お伽話の中でも、感動的で印象的なこの場面。
「泣くとしたらここかなあ。
いやでもよく知っているシーンなのだし、今さら泣けないだろう。」
というのが視聴前の私の考え。
↓↓ 実際は、
このシーンで涙が止まりませんでした;;
別れのシーンが丁寧に描かれていて。
特に、翁と媼がどれだけ娘のことを大事に大事に思っているか、
痛いほど伝わってきて、
今思い出しても涙が溢れてきます;;
遙か昔から語り継がれてきた物語が、
現代最高のクオリティをもって新たな命を吹き込まれたようだと、
心から感動しました。
≪ かぐや姫は幸せだったのか ≫
生まれた山を出て、都で暮らすようになったかぐや姫。
高貴な男性達から求婚されるも断り続け、
日々の暮らしに窮屈さを感じている描写が多いです。
山に住んでいたころは明るい笑顔が絶えなかったのに、
都で暮らすようになってからその笑顔はぐんと減り。
客観的に観ている私からしても、
かぐや姫が幸せな暮らしを送る未来がどうしても思い描けませんでした。
しかし、月には帰りたくないと、
地球に残ることをかぐや姫は強く願います。
翁や媼のように大切で愛する人がいるから、
というのも大きな理由だと思うのですが、
たとえ辛くて嫌なことばかりでも、
人はこの世界を愛さずにはいられないことが
謳われているようにも感じました。
これも竹取物語のテーマの一つなのかもしれないですね。
● 作画
この作品は、ストーリーを楽しむこと以上に
アニメーションを味わうための作品だと思います。
手書きの絵をパラパラとめくっていくような動画。
そこには温かさを感じます。
きっと「ここお気に入り!」という場面が見つかると思います^^
私は
金の粒が控えめに輝いているところと、
木を彫って器を作るところと、
田んぼが夏から秋へ移り変わるところと、
夕日に照らされた屋敷の部屋ところと、
…
とにかくたくさんありました。笑
そうそう、話題になっていた帝のあごは確かにインパクトありましたwww
もう帝はあごにしか目がいかないですwww
● 音楽
【 「いのちの記憶」/ 二階堂和美 】
しんみりすーっと入ってくる心地よい歌声と
物語のその後のかぐや姫の心情をふと考えてしまう歌詞。
いい曲です。しみじみ。
【 BGM「天人の音楽」 】
天人がかぐや姫を迎えに来た時のBGMです。
かぐや姫たちの心情とは正反対の、
リズミカルで明るい曲調。
シーンに関係なく、
この曲単体でもずっと聴いていたくなります。
天人の心の余裕と言うか、
月は幸せな場所であることに何の疑いも持っていない姿勢を
伺わせる一曲だと思いました。
● まとめ
慣れ親しんだ話だけれど、描かれる風景の美しさと、
山場のシーンが心に訴えてくる力強さは圧巻でした。
子ども向けではないと思います。
子どもが観ても理解はできると思うけれど、
途中で飽きてしまうと思います。笑
この作品を観れば、竹取物語をただのお伽話と
見過ごすことができなくなるはずです。
千年前に作られた話とは信じられない。
竹取物語の偉大さとアニメーションの完成度に拍手です。
こんなに素晴らしいものを作り出せる日本の文化を誇らしく思いました。