ノリノリメガネ さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ボランティーア
舞台は一昔前の横浜。
主人公は高校生の海(メル)。妹の空、弟の陸と3人兄弟。父は戦争で既に死亡している。
家は下宿を兼ねていて、家族以外にも同居人がおり、仕事の忙しい母に代わり実質海が切り盛りしている状態である。責任ある立場にあるからか、高校生にも関わらず海はどこか大人びている。
今作は、海の恋と学生運動の二つを主軸として物語が進んでいく。
学校で一つ上の先輩である風間俊と出会い、新聞作成を手伝うことがきっかけで交流を深め、次第に恋心へと発展していく。しかし、過去の写真から二人が兄妹であるという疑念が沸き、一転してギクシャクしてしまう。
ラストにその誤解は解けるが、母の前でいままで溜め込んでたものが決壊して海が泣く場面はいつも貰い泣きしてしまう。
一方、学校ではカルチェラタン(文化部の会館みたいなもの??)の存続が議論されていたが、海の提案で大掃除を始め、最終的には理事長への直談判を経て、何とか存続を勝ち取るという結果に。
その他、ジブリは全部そうだけど、背景・美術のクオリティが非常に高い。昔の日本の港町の風景が実に爽やかに描かれており、画面越しに潮風を感じられそうな程である。
また、フライを揚げる音、包丁の音、ドアを閉じる音等、効果音もリアリティが追求されていて、グッと世界観に引き込まれる。BGMも雰囲気にマッチしていていちいちハイセンスである。綺麗な町並みに「上を向いて歩こう」がとても沁みた。
下宿人やカルチェラタンの住人等、魅力的なキャラクターも多く登場するが、特筆すべきはやはり水沼先輩だろう。インテリイケメンで、生徒会長でありながら、さりげなく女子の肩に手を回し、歌も上手く、空気も読めるという高スペック少年だった。
以上のように全ての項目できめ細かな作品作りがされており、最後まで飽きることなく観ることができた。観たあとには楽しさと切なさと爽やかさが残る。
名言も突き刺さった。
「古くなったから壊すと言うなら、君達の頭こそ打ち砕け!
古いものを壊すことは過去の記憶を捨てることと同じじゃないのか?
人が生きて死んでいった記憶をないがしろにするということじゃないのか?
新しいものばかりに飛びついて歴史を顧みない君達に未来などあるか!
少数者の意見を聞こうとしない君達に民主主義を語る資格はない!!」by風間俊
ただし、ハッピーエンドな感じだけれど、戸籍上兄妹なのだとしたら結婚したりするのにはまずいのではないかと思うので、後から変更出来るものなのかとひとつ疑問に思った。