STONE さんの感想・評価
3.2
物語 : 2.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
文学的青春群像劇
正直なところ、最後までモヤモヤとした感が残った作品。
ストーリー自体はひと夏の青春群像劇と、その中心となる男女のボーイ・ミーツ・ガールを
軸にファンタジー的な事象が彩りを加えた感じで、それほど難しいものではないが、演出や表現
方法に癖があり、「何を見せたかったのか」が判りづらかったかなあ。
演出自体はアニメで文学、それも純文学寄りなことをやりたかったのかな?といった印象。
キャラの直接的な心情表現を控えめにして、遠回しな発言や行動で視聴者に行間を読ませる
手法自体は悪くないが、そこまでして読んだ肝心の中身が「別に遠回しに表現しなくても」と
思うような箇所が随所に。
セリフ自体も、小説だと文章が全てであるから着飾ったような表現方法も読ませる手助けに
なることが多いが、絵が動いて、その中のキャラが喋ると結構浮いてしまうものだなと
思ったり。
演出でもう一つ印象に残ったのは止め絵がやたらと多いこと。
止め絵というと足りない時間、金、人を補うために使うこともあるが、この作品に関しては
意図的な演出でやっているようで、止め絵のタッチから故出崎 統氏の演出を意識したもの
かな?と。
ただ出崎氏の場合は、視聴者や劇中のキャラが衝撃を受けるような部分が止め絵になることが
多く、視聴者やキャラの感情が固まるのを絵で表現している印象があったが、この作品は
「なぜ、そこで止める?」と首を捻るような部分が多々。
作品の個性化のための様々な要素はあまりストーリーに活かされていない印象。
深水 透子のガラス工房、高山 やなぎのモデル、永宮 幸の病弱、井美 雪哉の陸上など、
いずれもキャラの特徴を示すものにはなっているものの、キャラの性格を裏付ける象徴的な
ものではないし、ストーリーの大筋にはあまり影響がないみたい。
他にも学校の鶏などは描写が多かったりする割には、別にいてもいなくもいい存在
だったりで、こういう個々の要素をもっとうまく使えなかったのかな?という感が強い。
透子の特殊能力に関しては沖倉 駆との関係性において、うまいこと使われている印象だが、
この能力自体がなんだったのかは最後まで判らず。
こういった不思議現象に関して、エンターテイメント性の強い小説などは理由や原因を明確に
描くことが多いの対して、純文学系小説などはこういった現象に直面したキャラの心情表現に
重きを置いて、事象そのものの設定などは特に書かないということが多々あるので、これは
これでいいのかなと。
キャラに関しては全体的に淡々としている印象が強い。
恋愛模様などは様々な感情が交差して、もっとドロドロしてもよさそうなものだが、キャラが
淡々としているせいか、「あまりたいしたことないこと」みたいな印象になっている。
透子などはいい子といった感じだが、他のキャラは自分の感情に素直というか、結構性格の
悪さも出しており、そういったきれいごとで済ませてない部分は生々しくて面白い。
ただ、こちらも淡々とした部分が仇となっているのか、キャラの感情は生々しくても、キャラ
自身はリアル感が乏しかった印象が強い。なんと言うか、誰かがキャラを演じているような
感じが最後まで拭えなかった。
P.A.WORKSらしく相変わらず背景画は素晴らしい。