どらむろ さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
NНK「天才てれびくん」内の実写CG併用アニメ。意外に骨太なSF冒険活劇!
1993年4月5日から1994年1月27日にNHK教育テレビ『天才てれびくん』内で放送された、実写とCGを併用したアニメです。
1994年『ジーンダイバー』、1997年度放送の『救命戦士ナノセイバー』と合わせて『バーチャル三部作』の一作目です。
実写パートとアニメパートを組み合わせつつ、主人公の女の子「萌」ちゃんがバーチャル世界で恐竜人類にまつわる大冒険をします。
子供向け番組ながら(当時の時点では)最新鋭の科学知識や物理学に基づく本格派なSFで侮れません。
「強い人間原理宇宙論」を用いて世界を自在に改変!というトンデモないギミックまであり。
こ、子供向け番組とは思えん…!?
…一説によると「萌え」の元ネタは本作ヒロインの萌ちゃんという説もあるようです(真偽は不明)。
{netabare}『物語』
全60話ですが、「天才てれびくん」内番組で1話辺り30分より短いです。
実写パートではCG+「てれび戦士」(天才てれびくん内の子役)の山口美沙ちゃんが会話したりしつつ、「バーチャル大陸」という仮想空間にダイブ→ハンドルネーム「萌」(もえ)ちゃんとなり、バーチャル大陸を大冒険!
比較的短い尺でテンポ良く話が進むので、観易いです。
1993年当時の最新の科学考証に基づく恐竜の知識(実はカラフルだったかも?羽毛が生えてたかも?等々)をふんだんに盛り込み、NHK教育番組としても骨太です。
今でこそ古くなった知識もありますが、当時としては画期的で、最先端の恐竜知識を子供たちに分かり易く伝えていました。
ストーリーは大きく分けて2部に分かれ、第一部では対立する二つの恐竜人類の抗争に巻き込まれる形で萌ちゃんが大冒険。
草食恐竜から進化した恐竜人類フォロルが味方で、肉食恐竜から進化したギラグールが敵と分かり易い展開。
…本来は仮想空間に過ぎないバーチャル空間が実際の次元に影響力を持ち、過去改変による陰謀など、かなりSFチックな展開も見所あり。
見所は恐竜世界の興味深い知識やタイムスリップ系SFめいた冒険活劇に加え「萌ちゃんかわいい」♪のも大きいです。
実写パートでのアッケラ缶による解説やナビゲートも絡めて、これらがテンポ良く進行。
萌ちゃんの危機に的確な支援したりと、こちらもハラハラさせてくれる。
萌ちゃんは結構ピンチが多く、ちょっといけない方向で萌えてしまいますw
かよわい人間の女の子な萌ちゃんが戦闘種族なギラグールに対抗する切り札「タイムブースター」登場してからが面白い。
一定時間、萌ちゃんの時間を1000倍に加速!
「仮面ライダーカブト」とか「フェイトゼロのキリツグの固有時結界」みたいな感じかな?
超強力ですが、使用の際に酸素ボンベ付けないとダメな辺りがSFとしてしっかりしてて面白い。
しかも発動時間が限定されていて、どのタイミングで切り札を切るか!?
な駆け引きも盛り上がります。
一見無敵の能力ですが、特性を見抜いた敵に攻略されちゃう展開でハラハラドキドキ。
CGパートのアッケラ缶が発動担当するので、うまくアニメと実写融合している。
SF冒険活劇としても一品級の面白さですが、もう一つの見所は恐竜人類との交流でしょうか。
最初は敵対していたギラグールの科学者のハルと、文化の違いから色んなギャップを乗り越えて交流と理解が深まる過程が良い。
我々人間の価値観が絶対的ではない、こういう別の価値観もあるんだな…と思わせてくれる。
ギラグールは「嘘という概念が無い」という設定が面白く、「お前たち哺乳人類は何故嘘をつく?」という問いは、色々と考えさせられます。
この他、萌の「現代っ子らしい価値観の優しさ」が、必ずしも絶対的に正しいのか?独善ではないのか?
など、一筋縄ではいかないテーマも垣間見えるのが中々に深いです。
第2部もSF冒険活劇として更に盛り上がりますが、最新の物理学を用いたギミックが素晴らしい。
「量子力学」の「不確定性原理」の「人間原理」
…を利用して「バーチャル世界の観測者たる恐竜たちの脳」を集め
「最強の観測者」たる「宇宙の目」を構築して、神に近い全能となる!
……うう~~~ん?難しい…。
私文系なのですが、宇宙とかには多少の関心があって素人向けの解説本(ブルーバックスシリーズとか)ちょくちょく読んだ事あるのですが、難しい理論ですねぇ。
よ、よく分からんけれど、敵の思惑を阻止しないと、全能の神が誕生して世界の全てを支配されちゃう!みたいな。
…これ、子供向け番組だよな!?
「宇宙の目」の脅威を分かり易く伝えてくれるシーンは「隕石落下を阻止したハズなのに、驚異的偶然が重なり防げない!?」という確率変動。
「天元突破グレンラガン」の確率変動弾みたいなものを、大規模にした感じかな?
強引に確率を変動させ意のままに世界を操る。コワイですねぇ。
…終盤は宇宙の目による世界そのものの消滅か!?というスケールのでかい展開で手に汗握ります!
ストーリー面でもキャラ同士のドラマも丁寧で、誇り高き戦士ラプターとの死闘から共闘したり、幻の人類ドン・ジー・ロンの最期など、盛り上がる名場面多し。
バトル面でもタイムブースター封じのラプターの戦術や、原始的な投石器でギラグールの科学力凌駕したりと見所十分でした。
異なる種族同士が共に冒険をする過程で結ばれた絆は深く、盛り上がるシーンでは目頭熱くなります。
総じて子供向け番組らしい溌剌とした楽しさありつつ、骨太な科学考証に基づくSF作品としても非常に優れています。
萌ちゃんかわいい。萌え♪
意外にハードなSFでありながら子供向けにも観易い冒険活劇!
レアな作品ですが、名作級だと思っております。
『作画』
実写パートはうまく子役の演技とCG融合しており、子供向け番組として面白い。
アニメパートの絵は決して綺麗とは言えないけれど、萌ちゃんはかなり可愛いです。
当時最新の考証に基づく恐竜時代の描写は素晴らしい。
…作画評価は迷うところ。
良い面を見れば、数値以上に良かった印象あります。
『声優』
実写パートでは子役の山口美沙さん御本人が。
アニメパートの萌ちゃんは柴田由美子さんが演じているので、かなり上手いです。
アッケラ缶の上田敏也さんの独特の演技が光る。
声優陣はかなり豪華で、役の兼業が多い点はあるものの、安定感あり。
ハルの玄田哲章さん、ラプターの梁田清之さんは非常にカッコイイ。
梁田清之さんはドンも兼業されてますが、全く違和感無く好演されています。
『音楽』
主題歌はありませんが、作中GGМが中々良かったような。
『キャラ』
ヒロインの萌ちゃんは一説によると「萌え」の語源となったらしいです(諸説あり)。
元気一杯、ハツラツとした女の子で、危険なバーチャル世界で恐竜人類相手に大活躍!
知恵と勇気と優しさ併せ持つ、素晴らしい女の子主人公でした。
萌えますねぇ♪ピンチが多いのも萌える♪
良くも悪くも「現代人らしい価値観の人間」代表な面もあり、彼女の優しさが必ずしも絶対的に正しいのか?
と問われる場面も注目。
実写でのアッケラ缶は良きナビゲーター、努君も頑張ってました。
アッケラ缶の存在は視聴者への解説役、タイムブースター起動係など存在感あり。
味方の恐竜人類フォロル側に好人物多いのですが、どちらかというと敵側のギラグールの方が好きです。
「春の最初の満月の夜に生まれた最初の息子」(長い!)通称「ハル」が良いキャラで、人間とは異なる感性や価値観を提示してくれた。
戦闘狂なラプターもカッコイイ。敵としては頭脳的作戦でタイムブースターを破ったり、味方としても頼もしかったり。
敵の女司令官「雪深き冬に生まれ白き破滅を超越する強き娘」(長い!)も不気味な名将であった。
敵ボスの第一疾走者の存在感もでかいです。
彼女の過ちが招く惨禍…ストーリーを大きく盛り上げてくれました。
幻の原人ドンも良きパートナーであった。
最初喋れないが頭は良く大成長。パワーで科学破ったり頼れる。
終盤の隕石による世界の破滅を救っていく展開は熱く、涙線崩壊です!
他、多くの恐竜たちも活き活きとしていました。{/netabare}