P_CUP さんの感想・評価
3.8
物語 : 2.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
栗山さんが可愛い!・・・のだが
いや、栗山さん可愛いですね。健気だしドジっ娘だし、眼鏡も似合ってます。
眼鏡キャラってそんなに好きじゃなかったんですが、アッキーよろしく眼鏡ストに思わずクラスチェンジしそうになります。
・・・が、この作品、最大の魅力とも言えるメインヒロイン栗山未来の可愛らしさが、同時に最大の弱点にもなってると思うんです。
栗山さんは作中「呪われた血の一族」であると語られ、実際、その能力はえげつない。
異界士仲間からも疎まれ続けた一族であり、重い宿命を背負っている・・・という設定なんですが、
その禍々しさや悲惨さが、可愛らしさによって打ち消されてしまっている。
一族が如何に迫害を受けて来たのかの描写も凄く少なく、
また、栗山さん自身も、その宿命に対して苦痛を感じてる様子が終盤まであまり描かれない。
故に、可愛い女の子が、それなりに楽しく過ごしてるようにしか見えない部分が多々あって、感情移入しづらいんですね。
例えば、桜を相手に「先輩は、なんというか『普通』なんです」と、その惚れた理由(と言って良いでしょう)を語るシーンがありますが、
「触れることすら恐れられた自分に、普通に接してくれる」という部分、確かに台詞ではそう言ってますし、そういう芝居もしています。
が、実際に「他者から触れることすら恐れられている」→「それによって辛い思いを抱いていた」という肝心の描写が皆無に等しいせいで、
京アニお得意の感情表現が生かせておらず、栗山さんが何を想って何を感じているのかって部分がイマイチ伝わってこないんです。
主人公である秋人についても然り。本来ならこの2人、互いにとって「人生が変わる」級の関係であるはずなんですが、
2人が、どのように心の距離を近づけて行ったのかって部分の描写が足りない。そのために秋人の数々の英雄的行動もストンと落ちてこない。
1話単位なら、或いは、シーンだけを切り出せば、すごく名作臭のする作品なんですよ。
名シーンを挙げろと言われればいくらでも候補が出てくる。なのに、繋げて見てしまうと、「あれ?」ってなる。
最終回の「撫でてください」→「うれしいなぁ、うれしいなぁ」なんて、こちらの感情移入度が高まってたら、
もう、一晩中泣き明かすくらいの名シーンであったはずなんですが、「あ、うん」って感じでしかなく、なんとも勿体無いなあ、と思いました。
あ、OPとEDは良いですね。OPは監督の石立さんとキャラデザの門脇さんが、たった2人だけで全ての原画・動画を描いたというから驚きです。
そして、なによりED。これは映像込みで凄く良く出来ていると思います。極論すれば本編以上に物語している。
ずっと手を差し出し続ける栗山未来(その手には呪われた血の力が宿る)。
花が咲いても、雨が降っても、ただ立ち止まって手を差し出し続ける。
誰もその手を握ろうとはしない。皆、傍らを通過していくだけ。
だが、ふと顔を上げれば、そこに秋人が立っている。彼だけは自分の方を向いて、そして手を差し伸べてくれる。
差し出された手がコマ送りのように描かれ、その中には秋人の手だけではなく、幼いころの彼女自身の手も混ざっている。
・・・いや、よく出来ていますね。それだけに返す返すも本編の描写不足が惜しまれます。