どらむろ さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
原作から大幅アレンジされたファンタジーラブストーリー。ジュリエットが現代的ながんばる女の子です!
超有名なシェイクスピアの戯曲を題材に、、ゴンゾが制作。全24話。
「巌窟王」に続く海外古典シリーズ第二作で、前作同様に原作から大幅にアレンジされていて、ほぼ別作品です。
本作ではジュリエットを主人公に、悲劇的な運命に引き裂かれるロミオとのラブストーリーを描いています。
全般的に現代的なアレンジといいますか、奥ゆかしく運命に流されるだけではダメ!女の子も頑張って立ち向かう!
純粋なラブストーリーにしてファンタジーや活劇風味も見所あり。
安定感のある良作なのですが、終盤の展開がやや釈然としない部分もありました。
{netabare}『物語』
ゴンゾの前作「巌窟王」並みに原作とは別物です。
ガイナックスの「ふしぎの海のナディア」と「海底二万里」程ではないけれど。
原作そこまで詳しく無くても「ロミオとジュリエット、二人が家の対立のせいで愛が阻まれる悲恋ストーリー」という認識だけでOKです。
本作一番のアレンジは、主人公が主にジュリエットである事。
ジュリエットのキャピュレット家が、ジュリエットが幼い頃にロミオの父モンタギューに滅ぼされ、ジュリエットはキャピュレット家の姫として暴君モンタギュー打倒を目指す…。
でもロミオと出逢い、愛し合ってしまい…
という展開に。
モンタギューの暴虐や、自らに課せられた責務(キャピュレットの生き残りとしてモンタギュー打倒、市民を救う)を自覚しつつも、次第に惹かれていく愛するロミオが、憎むべきモンタギュー家の息子である事を知り、当然のように葛藤していく。
ロミオもまたジュリエットがキャピュレット家の娘であると知り苦しむ…。
活劇展開からのロマンチックなラブコメは非常に丁寧で萌えます♪
舞台が空中都市ネオ・ヴェローナで空飛ぶ馬いたり、ファンタスティックな舞台背景も魅力。
序盤はヒーローっぽいジュリエットが暴君モンタギューの圧政に苦しむ人々を救おうと戦う活劇展開でこれが中々面白い。
が、そこら辺は物語の本筋では無かったり。
…本作の構図は、現代的な「女の子も待つ女は流行らないので、健気に戦い勝ち取る」推奨なのでしょう。
※本レビュー書いてる時点で放送中の「赤髪の白雪姫」とか、近年の潮流ですね。
でも初期のジブリ作品のヒロインも既に強い女の子推奨だったので、この流れは当然なのかも。
原作同様に結ばれ難い悲恋展開ではあるのですが。
アニメ版では「二人の障害はモンタギューだけ」なのでモンタギューさえ倒せば良くね?
と思ってしまうのは良し悪しだろうか?
原作の障害は「家と家の対立、中世的価値観」でどうしようも無い絶望感漂っているのに比べると、アニメは価値観が現代的な為か、原作戯曲よりも絶望感は薄い気がします。
ジュリエットの方が背負うモノが重いので悩み深いのですが、ロミオは最初からモンタギュー大公位に執着皆無なので、愛するジュリエットの為に家を捨てるペナルティーあんまし感じないです。
ここら辺は、やっぱり現代っ子なんですかね。アニメキャラも、視聴者も。
…それでも、暴君モンタギューの壁は決して甘くは無いので、中盤に愛し合う二人が引き離されるシーンは、中々盛り上がります。
ラブコメとしては前半までが一つの山場、中盤以降は離れ離れでそれぞれの道進むのでラブコメとしてはクールダウンしちゃうのは良し悪しあり。
ジュリエットはいろいろ悩みつつも自分の進むべき道を整理していき、一方のロミオもまた、左遷された僻地での立て直しストーリーで頭角を現していく。
ロミオお坊ちゃまが逞しく成長して辺境の仲間達の信頼勝ち得て一大勢力築いていく過程はサクセスストーリーとして中々でした。
離れていても、別々の道を歩んでも、いつか愛は通じ合える。
前半ほどの熱さは無いものの、二人の愛は確実に深まっていくのは良いです。
終盤急展開、暴君モンタギューを討つ!のですが、モンタギューの自滅感が強くて、ボス打倒のカタルシスはあんまり無し。
前述の通りアニメは価値観が現代的なので、モンタギューさえ倒せば自然と解決じゃね?とやや冷めた印象が…
ところが。
終盤にきて、{netabare}「エスカラス」という大樹がネオ・ヴェローナを支えていて、大樹が朽ちかけていてこのままではネオ・ヴェローナ滅ぶ!
実はジュリエットが生贄になれば世界は助かるよ! {/netabare}
という、唐突な悲劇展開に!
う、うう~む?モンタギューの障害は何だったんだ…?
苦しい葛藤を強いられるジュリエット、ジュリエットへの愛を貫くロミオ。
悲恋は良いのですが唐突な感が否めない。
{netabare}ラストは二人とも死んでしまうが命と引き換えに世界を救う、トゥルーエンド。{/netabare}
う、うう~~~む。
まあ、原作からして悲劇的展開は仕方が無いかもですが、結構ハッピーエンドフラグ積み重ねてきたように思えるので、ここはハッピーエンドで良かったような。
どのみち最初から原作思いっきり改変してるんですし…。
そもそもウィリアム・シェイクスピアが「運命に抗って愛を成就が見たい」
本作全般のテーマが「運命に抗い愛を貫く」なので、このラストだと結局運命には勝てなかったよ…と思ってしまいます。
御都合主義でもいいから、「僕は生きる!生きてジュリエットと添い遂げる!」「しかもネオ・ヴェローナの人々も同時に守る!両方やって何が悪い!?」
それでよかったと思う。
ここら辺は的外れな難癖なのを承知ですが、私的には二人は幸せに暮らしてめでたしめでたしが良かった。
総じて
良くも悪くも「現代的価値観」でアレンジされたピュアなラブストーリーでした。
モンタギューが愛の障害としてはやや力不足を感じるのと、ラストが釈然としない。
そこを除けば非常に丁寧にラブコメが描かれていて、全般的には良作だとは思いました。
『作画』
流石にゴンゾらしく安定感のある良作画です。
特に空中都市ネオ・ヴェローナの風景描写はファンタスティックな美しさあり、愛の物語を盛り上げている。
キャラ作画はやや地味ではありますが、ジュリエットの表情など要所は十分に可愛いです。
『声優』
水沢史絵さんのジュリエット、水島大宙さんのロミオともに感情しっかり伝わりました。
ティボルトの置鮎龍太郎さんが一番イケボ。
コーデリアの松来未祐さんのお姉さんっぷりもステキ。
井上和彦さんのシェイクスピアも絶妙。
立花慎之介さんは「神様はじめました」の巴衛のイメージですがペンヴォーリオの頼りない感じも良いですね。
岩男潤子さんのラスボス演技が中々怖かったですw
声優陣はかなり豪華かつ配役バッチリでした。
『音楽』
OP「祈り〜You Raise Me Up」が主題パッチリな名曲。
完璧な主題歌かつ美しい曲です。
音楽面もかなり良し。
『キャラ』
全般に他のシェイクスピア作品からの流用キャラ多く、キャラ層は厚いです。
原作との最大の相違点、ジュリエットが中世的な奥ゆかしく待つ女ではなく、アグレッシブに運命に立ち向かう女の子なのが良かったです。
それでも激しく揺れ動きメンタルは決して強くない点も女の子らしくて可愛い。
強さと可愛さのバランスが取れていて、好きなヒロインです。
ロミオはジュリエット主人公の煽りで「最近主流のヒロインっぽい男子」な面も序盤はありましたが、中盤以降は自ら運命を切り開く強さを手にしたのが良い。
ジュリエットよりもメンタルは強く、意外に逆境では頼れる男の子でした。
主にジュリエットの周囲のキャラクターの層が厚かったです。
ジュリエットへの密かな想いを終始押し殺したキュリオ、ちゃらけたように見えて一番ジュリエットを良く見ていたフランシスコ、姉ポジとして女の子としてのジュリエットを支えたコーデリア、じいやポジの忠臣コンラッド。
ウィリアム・シェイクスピアはジュリエットに道を示してくれたキーマンでした。
女子では何気にリーガンちゃんが一番可愛い。
ハーマイオニは不遇でしたがヤンデレ化した辺りは輝いていたw
ロミオ母もステキな女性であった。
モンタギューは悪役としては自滅した印象強い。
気の毒な男であったが、彼のドラマはおざなりなのが残念。
そしてラスボスさん…
ポッと出で邪悪っぽさ出されても戸惑います。{/netabare}