STONE さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
それぞれの生存競争が生む悲劇
原作は未読。
視聴したのはテレビ放送版。
形としてはグロ要素の強い一種の異能バトルものなのだが、捕食する側とされる側の
生存競争により生じる悲劇の連鎖、人を食べないと生きていけないグールによる、人と共存して
いくことの苦悩と葛藤といったテーマなどが根底にあり、更に精神的に母の庇護下にあった
主人公である金木 研の精神的自立などの要素もあり、思った以上に重厚なドラマ。
そう考えるとグロ要素も心理的葛藤を生み出すための重要なファクターであり、単なる悪趣味
的なものではなかったりする。
ただ癖壁するぐらいグロシーンの規制があり、ここまでくると「最初から表現方法を
変えりゃあいいのに」と思ってしまう。
まあ「規制なしが観たかったら、製品版を買ってね」ということなんだろうけど。
この規制に関してはテレビ放送の少し前に起きた「佐世保女子校生殺害事件」の影響も
大きかったのかな。
映像的なグロ要素もさることながら、精神的に重い部分もかなりあり、視聴していてきつく
感じる部分も多々。
そういう意味では、バトルものでありながら、「敵を倒した。やったぜ!」みたいな
カタルシスはかなり弱いみたい。
序盤は人間であった金木がグールになってしまうことから始まる。
グールとしては新参者である金木はここで初めてグールの社会を知るが、それまでの金木に
とっては単に人を食らう怪物という印象だったグールが、実は人間と同じく様々な感情を持った
存在。
あんていくのメンバーのように、人を殺さずに人との共存を望む者がいたりする反面、人を
単なる捕食対象とみなしている者など他種多様といった印象。
逆に人間側も真戸 呉緒のようにグール駆除を単なる職務以上のものとして残虐性を発揮する
者もいたりするが、真戸がこうなったのも妻がグールに捕食されたのを端に発しているようで、
単純に非道な人と割り切れるものではない。
この真戸の過去話以外にも、劇中展開では身内や仲間を殺されたことによる復讐の連鎖という
面が強く、中盤で霧嶋 董香と亜門 鋼太朗がそれぞれ語ったように、自分の側から見た相手は、
懸命に生きようとする者の命を奪う許し難い存在に映るのだろう。
金木のように人とグールの双方を知る存在としてはなんとかしたいところではあるが、先の
感情的側面を差し引いても、捕食する側とされる側という前提があるゆえに如何ともしがたい
ものがある感じ。
終盤のCCG、アオギリ、あんていくの三つどもえ抗争はバトルものとして盛り上がる感が
あったが、思いっきり中途で終わってしまった。
展開的締めを無視して、金木の意識の変化を区切りとして終わらせたわけだが、この辺に
関してはある種の潔さは感じる。中途半端なことやるよりこちらの方がいいかな。