kurosuke40 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
タイトルなし
現実には救済があるのかはわからないが、この世界には目に見える救済がある。
人に親切に接することで救済に近づけるというなら、私はただ私だけのために人に親切にする。だからそれは本心からの親切ではないだろう。私のために私は君を親切に利用する。全く私は冷たい奴だ。
それはどうだろうか。確かに君は私のことなんかこれっぽっちも思わず、私に親切にしていたのかもしれない。それでも私が受けた安心、心強さ、温かさは紛れもないものだ。君が私のことを気にしなかったように、私も君の事情なんか気にしない。ただ私は私の身勝手な感情で君を助ける。それだけだ。……そして君は気づいてないかもしれない。ただの手段であった親切がもはや君自身の一部になっており、君が弱き者の導き手になっていることを。
レキは良い意味で手段が目的化した人物だと思う。救済という概念が彼女を偽善に走らせたが、半ば親切であることが当たり前になっている。救済があるという価値観自体にも価値があるもんだな。ただレキは最後まで「己の行為は自分のためだけにしている」という考えから抜けだせず、自分自身を許せない。結果的に他者のためにもなっていることに彼女は価値を見いだせないのだ。だから「行為の理由なんて関係ねぇ、お前の行為マジでサンキューな」と強引に感謝状を叩きつける他者が必要だったのだと思う。それまで自分のためだけに親切にしてきた(と思っている)ため、レキは他者に対して借りを与えたことはない。だから対価として助けを求めるなんて出来ない。そこにラッカが恩があることを示し続けることで、ちょっとは借りを与えたかなと思い直して、「助けて」と言えたのだ。この瞬間レキは他者と断絶ではなくなった。レキさんはちょっと真面目すぎたんや。
正直、前半はレキの内心が話の肝だとは見抜けず、見事に魅せられました。ラッカ側の準備をしっかりと用意してからの、良いシナリオだっと思います。
以下戯言
{netabare}
レキの救う方法は、他者との断絶を無くすことのため、方法としては彼女になんらかの大きな借りを(無理矢理)与えて、借りを返させる方向性もありなんだけど、クラモリの救済(とその後にネムに対する迷惑)やヒョウコの瀕死など、彼女に与えようとしても、結果的に諸所に迷惑がかかって終わるだけだと経験的に閉じてしまっている。ここらへん、神様(作者)も悪よのう。
似たような題材で見たことあるのはABだけど、あちらは人間じゃなくてキャラクターが動いている感じで、灰羽の方が断然人間らしくて題材に馴染んでますね。特に個人的にですが、救済という西洋的な宗教世界での人々はきっとレキのようなジレンマに生きていたのだろうなと教えられ、思うと心苦しくなります。
灰羽は加えて、設定がはっきりしていないのも魅力的で、結局救済は生だったのか死だったのかもわかりませんし、また語られる設定についても灰羽たちの個人的意見程度にすぎないことも。筋道はしっかり示しつつも、解釈の余地が多くある深みを持った作品なので、色々と考察を漁るのも面白そうで、楽しみです。
{/netabare}