てつ さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
軽そうに見えるが、実は色々考えている主人公
タイトルと絵柄から、本作をただのハイファンタジーと思う人は多いだろう。
しかし実はこの『六花の勇者』はファンタジー×ミステリーという、少し珍しいジャンルの作品だとご存じだろうか?
ミステリー要素に関わる具体的な話は、実際に観て楽しんでいただきたいので置いておく。
しかし『六花の勇者』をオススメするにあたって、このレビューでネタバレをする事を許してほしい。
それは主に、主人公についての話である。
まずこのアニメ、おそらく1話目を視聴した際に主人公をどう評価するかで賛否が分かれるだろう。
事あるごとに自らを「地上最強の男」と呼ぶ主人公、アドレット・マイア。
彼が登場した瞬間に視聴者は(ああ、またこの手のファンタジーアニメね、はいはい…)とうんざり思うかもしれない。正直な話、私がそうだった。
物語のキーとなる「六花の勇者」についての設定や歴史なども矢継ぎ早に語られ、なんだかお腹いっぱいの初回かもしれない。
しかし真骨頂は2話以降である。
なんだか不安に見えた主人公も、だんだんと思慮深さや思いやり、地道に積み上げた経験から来る強さを見せ始める。
単に口がデカいだけの男とは少し違うかも、と気付くだろう。
---【2話で見せるアドレットの強さや行動について】(ネタバレ)---
{netabare}アドレットは敵である凶魔(きょうま。敵の親玉「魔神」から生まれた魔物)についての生体、行動、弱点を学んでいる。師匠のアトロ・スパイカーから叩き込まれているのだ。
さらに六花の勇者の戦いの歴史を熟知しており、今回の旅でどういった展開が起こりそうかも想定している。
ナッシェタニア(ウサギ兜の姫様)が初の実戦で緊張し未熟な面を見せる中、素早く戦況を見極め、支持を出し、冷静に対処する。
彼が様々な武器を持っているのは各凶魔の特性に合わせた弱点をつくためであり、凶魔にしか聞こえない音を出す笛なども使った。
また、村で倒されている凶魔を発見した際には撃ち込まれた鉛玉を、口に含んで確認。火薬が使われている事から石弓ではなく銃器の類と予想を立てる。
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私はアニメを観てから原作となったライトノベルを2巻まで読んだ。
だから分かるのだが、実はこの思慮深い描写やキャラクターの動作・セリフにはアニメオリジナルの物がいくつもある。
原作は割と淡々とした文章で語られており、キャラクターの心情や舞台背景の描写が物足りない。「地上最強」を自称する主人公にはちょっと疑問を感じる場面が多々ある。
だがアニメ版ではキャラクターの行動自体に深みが増していて、優しく頼りになる、人望が集まる主人公だという設定に説得力があるのだ。
この『六花の勇者』を観ようか悩んでいる人は是非4話まで観てほしい。
それまでにアドレットを好きになれたなら占めたものだ。
そこから謎が深まり盛り上がるストーリーを、アニメスタッフがどう演出するか大いに期待しよう。