退会済のユーザー さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
残酷な麻枝のテーゼ
ざっとあらすじ
翼を持つ少女を探す青年と、とある町の数人の少女との出逢いとひと夏の物語。
{netabare} ~
AIR(key)の作画は、童顔作画によって観てる側まで、心を童心化させると感じる。キャラにしても、「不治の病」「前世からの宿命」などと言った、萌えと泣き要素で構築された姿なのに対して、本作はその萌えるという要素を引き付けておきながら、視聴者を極端に突き放す物語である気がする。
ただ、それはそれとして、本作は奇妙なほど、物語を進める上での世界観描写が欠如していて、いつ、どこで、などと言った輪郭がまるでない、設定だけを組み合わせた骨組の形で運ばれていく。それによってセカイ系のような、キャラだけのセカイになっているし、肉片としての世界観が存在しているように感じる。
本作のさらに奇妙な点は、女子キャラとの関係性だ。本作では男主人公が不遇女子を助けるという、お馴染みが展開されているが、どうにも恋には発展しない。さらには女子キャラには母がいて父親不在がテンプレで、その家族観と皮肉な運命を解決させる事によって、父親になる展開が確信犯的に見て取れる。しかし、本作の残酷な所は「父親にも恋人にもなれない」のである。そういった視点に気づいた頃から、更に別の「プレイヤー=主人公でもない」第三者視点での鑑賞に気づく仕掛けがしてある。
そう言ったメタ視点も含めて
本作は更に視点がカラスになってしまうのである。これはもう明らかな悪意ですが、「父親にも恋人にもなれない」それでも「彼女を助けたいor自由にしたい」との願いを持つが、幾たびも辛い光景を目の当たりにしても、観ていることしか出来ない。
人間の姿での挫折と、カラスの姿での挫折を二重に体感させる二重奏であると同時に、父の不在と、プレイヤーの不在というダブル二重奏によるメタが、本作のテーマでもあるかのようであって、しかし何故こんな批判的な内容なのかと、
というのは、無責任な父親のせいで、このような悲しい少女が誕生してしまったわけで、昨今のオタクな男性に対する、「オヤジになれない弱さを自己肯定してもらうというor良いオヤジになってほしいという」メッセージなのだろうか?というのは大袈裟ですかねw
{/netabare}