どらむろ さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
時代劇+「漢字」具現化退魔バトル。MBS土6枠で随一の不人気。でも悪くはないですよ…
ボンズ制作。江戸時代末期を舞台に、異界の化け物「妖夷」と戦う退魔バトル系です。
リアルだが地味な時代劇、主人公が40近いオッサン等々、MBS土6枠では異色すぎる作風の為か、不人気過ぎて2クールで打ち切られてしまった…。
ガンダムや鋼の錬金術師と比べて不人気なのは仕方が無い面もありますが、その独特の世界観は決して悪くは無いです。
…良作ですが、萌えやスタイリッシュさは期待出来ない地味アニメではあります。
※2015夏「アクエリオンロゴス」放送されましたが、ロゴスが漢字具現化系のバトルなのを見て「妖奇士(あやかしあやし)」思い出し、この機にレビューしてみました。
{netabare}『物語』
黒船来航を10年後に控えた江戸末期が舞台の時代劇+異能退魔バトルです。
天保年間の時代背景や江戸の習俗といった要素を取り入れて「蛮社の獄」等の史実をリアルに再現しているのが見所です。
…リアル過ぎて、エンタメとしては地味過ぎるのが不人気の要因となってしまった。
※2010年度のノイタミナ枠「さらい屋五葉(ごよう)」と並び、アニメのリアル江戸時代のツートップと言えましょう。
両作ともに良作だと思うのですが、地味。とにかく地味です…。
更に、主人公の竜導往壓(りゅうどう・ゆきあつ)は39歳という、夕方アニメの主人公らしからぬオッサン。
さらい屋五葉の主人公の政(マサ)も往壓よりは若いでしょうけど少年じゃないですし。
…さらい屋五葉はノイタミナ枠なので、少数派でも一定のファン層付けば成功なのでしょうが、妖奇士(あやかしあやし)は天下のMBS土6枠。
求められる人気の分母が違い過ぎる…。
…ちょっと脱線しました。
リアル人情派時代劇のさらい屋五葉よりも、本作は異能バトル系なので、ある程度派手な展開に期待…したいところなのですが。
この異能バトルが良くも悪くも独特。
往壓の異能は「漢字の意匠の具現化」
森羅万象の意味を持つ「名前」の漢字を具現化して、その意匠の異能で妖夷とバトルします。
ああ、なるほど!この文字にはそういう由来があったのか!とか、漢字だけでなくケツァルコアトルみたいな海外の神話まで絡めて文字を具現化していくのがユニークで面白かったです。
…主人公の漢字の姓名の意匠具現化はバトルのみではなく、主要キャラクターの葛藤やドラマにも活かされているのも見所でした。
宰蔵(さいぞう。14歳の男装少女)の過去トラウマからの、実は名前の漢字の真意判明して救われる流れは、なるほど~と思った。
※2015年夏期アニメ「アクエリオンロゴス」もこの流れです。
ロゴスはまだ序盤なので何とも言えませんが、今のところは文字の意匠や由来の活かし方では、妖奇士が一枚上手に思える。
(現時点では。ロゴスの今後に期待大です)
往壓の漢字具現化以外でも「蛮社改所」(妖蛮対策の部署、主人公達が所属)の奇士(あやし)の同僚の戦闘スタイルが独特なのも見所。
蘭学知識活かして銃火器使ったり、陰陽道っぽい技あったり、ユニーク。
本作の独特の世界観も魅力あり。
異界とは人間の欲望の世界、誰しも持つ欲望・業が具現化したモノが「妖夷」であり、その妖夷を倒してその肉を喰らうと、他の食べ物では満足できなくなってしまう。
この設定は中々興味深いです。
各々の欲望や業を描いたドラマが展開されたり、単なる退魔バトルに留まらない魅力がありました。
アステカやアイヌのキャラも居たり、江戸時代劇としては世界観に幅がありましたが、その魅力はエンタメとしては地味で伝わり難い感じ。
それでも各々のキャラクタードラマと世界観(リアル江戸時代+退魔異能系)が良く組み合わさっていて、ストーリーはかなり面白かったです。
『作画』
かなりリアルな天保年間時代劇の風俗描写、異界や漢字具現化の幻想的なバトルシーン等、ボンズの意欲作として見所十分。
キャラデザも安定してますが、時代劇しかも主人公オッサンなので、萌え的には地味かも。
宰蔵のギャグ顔、アトルはエキゾチックさは中々可愛い。
『声優』
往壓の藤原啓治さんがイメージばっちり。藤原啓治さんのオッサン主人公は珍しい(エウレカ7のホランドもサブ主人公かな?)
声優陣は全般的に渋いベテラン勢多いので割と豪華です。
宰蔵の新野美知さんの男の子っぽい女の子な元気さも合っていました。
『音楽』
「いきものががり」が担当する主題歌は中々良曲ではあるのですが、主題とシンクロしているかは疑問。
BGM含めて音楽面も悪くは無いのですが、特に良くも無いです。
『キャラ』
夕方アニメの主人公にあるまじき、39歳冴えないオッサン竜導往壓(りゅうどう・ゆきあつ)が大活躍。
39歳は当時隠居しててもおかしくない年齢、と作中言われてたりしつつも、葛藤したり克服したり。
仲間では、男の子っぽい少女・宰蔵が可愛かったです。
かわいいけれど、色気や萌えは乏しい…のも本作の地味さか。
名前の漢字具現化の本作の設定で一波乱あり、メインヒロインの一人か。
アステカ出身のアトルが一番可愛かった。
14歳の少女二人居るのですが、やっぱり萌え的に地味なのがつらい。
若干20歳で蛮社改所を指揮する小笠原放三郎(おがさわら・ほうざぶろう)まじ苦労人でした。
蛮社の獄を絡めてドラマあり。
鳥居耀蔵(とりい・ようぞう。蛮社の獄起こした史実の人物)の存在感も中々。
この他実在の人物多数登場するのも本作の見所で、江戸時代に詳しい人なら興味深いかも。
水野忠邦や遠山の金さんら有名人も物語に登場。
本作では14歳の狩野派の絵師、河鍋狂斎(かわなべ・きょうさい)は男の子だけど実質ヒロインか。
女装青年の江戸元閥(えど・げんばつ)、寡黙なエミシのアビもキャラは濃く、個別ドラマもあり。
魅力的なキャラクターの層は十分に厚いです。
ただ、萌えやスタイリッシュなイケメン要素が乏しいだけです…
『余談』MBS土6枠随一の不遇作、ボンズの黒歴史?
ドル箱なこの時間帯アニメとしては、多分唯一、4クール予定から視聴率低迷で2クールになってしまった。
(公式には視聴率低迷が原因ではない言われてはいますが…)
ガンダムXだって3クールはあったのに…。
…でも、本作が2クールだったお陰?で「地球(テラ)へ…」が放送されたのはせめてもの僥倖…といって良いのかどうか、複雑な思いです。
地球へ…も名作なんですけどねぇ。
この二作品は、もっと評価されてもいいと常々思ってます。
いや、一般に受けない作風なのは仕方が無いとして、そこまで悪い作品じゃないです。
『余談』海外では結構人気
日本本国では不人気でしたが、海外では中々の好評だったとか。
ジャパニーズ時代劇+漢字(カンジ)・マジック!
外人さんにウケる要素は満点ですよ!
…日本人が観ても面白いです!{/netabare}