「スピードグラファー(TVアニメ動画)」

総合得点
63.3
感想・評価
244
棚に入れた
1273
ランキング
4498
★★★★☆ 3.5 (244)
物語
3.6
作画
3.2
声優
3.4
音楽
3.5
キャラ
3.6

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ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 4.0 作画 : 2.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

タイトルなし

僕の評価基準では始めが良かろうと終わりが良かろうと全て良しとはならない。しかし、始めと終わり良ければ全て良し、とはなる。
で、本作がまさにそれ。

大人の都合に振り回されて自由を奪われた少女を、戦場カメラマンの主人公が助け出し、二人は自由を求めて逃避行を繰り広げる。
お話のあらすじは簡単なものだが、娯楽性の高さが光る。映像的な魅力、作画の完成度に関しては目を覆いたくなるのは事実だが、ヴィジュアルの魅力は中々なもので、とくに文字通りの【変態】であるユーフォリアのキャラクター性は、実に愉快だ。
ストーリーの核となるのは主に序盤、中盤、終盤の三カ所。ここ以外はユーフォリアとの戦いがメインとなったエピソードが多い。

で、そのユーフォリアとの戦いなんだけど、本作では戦闘中のセリフ回しが特徴的だった。
なんというか、あんまり劇っぽくないのだ。説明的というか演劇的なセリフがほとんどなく、戦闘中はかなり淡々としている。決着も基本的にあっさりしており、敵が断末魔をあげることもほとんどない。ハードコアと自称するだけあって、こういう、ゆっくりだけどノンストップな感じは、結構好きだなぁ。

そして、なんと言っても終盤の展開。これが良かったんだ。
水天宮と雑賀辰巳。二人ともが目的を達成して、本作は幕を閉じたのである。これは珍しいパターンじゃないだろうか。
水天宮は金権社会である国への復讐を達成して満足気に逝き、雑賀は一人の少女を自由の身にさせた。
皮肉にも、自由を訴えた雑賀が戦いの後に享受しているのは、水天宮によってもたらされた自由。そして雑賀は、水天宮によってもたらされた景色を撮る。

ところで雑賀辰巳は、人の死の瞬間を撮ることに至上の快楽を覚えるという、ワリととんでもない変人である。
しかし、この変人を主役に据えることで、主人公の主張する【自由】に、厚みが増したように思う。雑賀の言う自由とは、考える自由と、生きる自由だ。
どんな考えをもった人間も、生きてたっていいのである。それが、他人の自由を奪うことにならなければ。
だから雑賀辰巳は、ユーフォリアとなっても【変態】ではなかった。変人なのである。

一人の人間の運命を背負うという、その重みは、雑賀の内面に変化をもたらす。
貧富の差が拡大し、弱者も強者も心が荒れ、他人への無関心が強まってきた近未来のディストピア。戦場ではなく、社会で戦い抜いた彼が得たのは、一人の少女との弱弱しくも確かな愛。
退廃な社会の中で、健全な愛を育むことで得られる小さな幸福を実感するというラストは、この作品の冒頭からは想像もできなくて、でもこの作品には最も相応しいんじゃないかなと、思う。

中盤以降は水天宮に感情移入するようなシナリオ運びにすることで、大量の紙幣を燃やして国家を破産させるという展開にカタストロフをもたらした。そして、僕らがすっかり感情移入した水天宮の満足気な表情での死によって、僕は虚無感に苛まれる。「ああ、終わったなぁ……」
で、ここで終わらずに、物語は雑賀と神楽が実らせた愛の顛末という至極真っ当なモノを着地点としたことで、言葉で語るよりもより、テーマやメッセージが伝わってくる。結果として、気持ちの良い作品として楽しむことが出来たのだ。

惜しむらくは、神楽が女として開花していく描写が弱かったなぁという感じ。初潮がどうのとか言ってたんだし、終盤ぐらいはもう雑賀を女として意識している、雑賀も女として意識している、というのを匂わせるようなセリフやカットが欲しかったところ。
それを含めて、ヒロインである神楽に魅力が足りなかったところが、実に惜しい。救われる対象以上の存在感を出せないまま終わってしまった。
というか、銀座のインパクトが大きかったんだよな……。その銀座はちゃっかり女としての幸せ掴んじゃったし。
まぁ、雑賀に惹かれたのもカルチャーショックが一番の理由だし、そう考えると両国と結ばれたのは不思議ではないわな。

投稿 : 2015/07/21
閲覧 : 397

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