STONE さんの感想・評価

4.1
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.0 キャラ : 4.5 状態：観終わった

ある意味「WORKING'!!」だな

　先が予想できないような波乱の展開も無ければ、泣きに至る
ような大感動もないが、各話のテーマの捉え方、会話の妙、
テンポの良さ、独特の空気感など、脚本のレベルが高かった
印象。
　設定などから「昼ドラ」みたいと言われることも多いみたい
だが、そこまでドロドロしたものではなく、シリアスなネタ
でも比較的ライトに処理している。この辺は脚本の妙だなと
感じた。
　ライトに感じられる要素の一つにいわゆる悪役然とした
キャラがいなかったことが大きかったように思える。結名や
崇子の立ち位置は定番ストーリーだと、性格の悪いキャラが
出てきそうな感じだが、この作品に関してはそういうことは
なかった。

　これはアニメに限ったことではないが、主人公が異なる環境
に突然放り込まれるようなシチュエーションの場合、
「人(主人公)が場(環境)を変える」、「場が人を変える」に二分
される。大概は両者混合の中、どちらかの比重が高かったり
するが、この作品に関しては「場(喜翆荘)が人(緒花)を変える」
比重が高かったように思える。そういう意味では緒花の成長
物語であり、自分探しの話だったのかなと。
　自分探しに関しては、緒花自身が望んで環境を変えたわけ
ではないので、当初は「自分はどうしたいのか?」さえ判って
いなかった。それが「自分は輝きたい」ということを見つけ、
「輝くための場所は喜翆荘にある」、「喜翆荘で自分は何を
したいのか」といった感じで変化しつつ、より明確になって
いく過程がなかなか面白かった。

　全体を貫くテーマとしては、「働く」ということを真正面
から捉えた印象。
　この「働く」ということに関して、前述のように自分の進む
べき道を探しながら、暗中模索する緒花、明確に進むべき道が
見えている民子、進むべき道以前に「働く」ことを通じて、
自分を変えていこうとする菜子と、同じ年齢でありながら三者
三様であったことが興味深い。
　また、この少女達に対して、旅館が舞台ということで、
様々な世代のキャラがおり、それぞれの目線があるのも
良かった。こういうのは同年齢キャラ同士のやりとりに終始
してしまう学園ものだと、なかなか得られない感覚。

　個人的には「働く」ということに関して、今更ながら
考えさせられることが多かった。
　もう惰性で社会人をやっている自分が言うのも
何なんだけど(笑)、これから社会人になる若い子に見て
もらいたい作品。と言って、肩肘を張るような作品ではなく、
娯楽性にも富んでおり、気楽に見られる。

　作画に関しては、いわゆる斬新な演出やインパクトのある
映像などはなく、比較的オーソドックスなものだが、ていねい
に作られており、和服の動きなどに代表されるが、細かい
ところにも気を配っている印象。
　あと印象的だったのは、階段や坂を使ったコンテが多かった
こと。二次元だと難しい奥行きの表現を、階段や坂による
高低差を利用して、うまいこと表現していた。