きゅ~ さんの感想・評価
4.7
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
「高齢ヲタク向け」作品であるにも関わらず、「衰えた高齢ヲタクは三度以上観ないと理解できない」ハードな一作
展開はそこそこ早い「四コマ漫画原作アニメ」のくせして、「間を猛烈に持たせて視聴者に行間を読ませる」質の悪い一作。アニメ読解力の落ちた高齢ヲタクは何度も観ないと理解しきれない一作です。
☆第1話「一年生になった」は、鉄道好きと田舎民に行間を読ませる一作。
駅で東京に出る姉を送り出すシーンがポイント。ところどころサビさせたレールバス描写が興味深い。その背景にあった「3~4月頃なのに水が張ってる田んぼ」が”ため水田んぼ”の複線なのか、ただのミスなのかが(ひねくれアニメ好きにとっては)ポイント。
☆第二話「星を見に行った」は、動物アニメ好きと中山間地住民・山好きに行間を読ませる一作。
無駄に動物・鳥獣描写が多い。なくてもいいワンカットに無駄に丁寧な描写で鳥や犬の動きが描かれる一作。それに挟まれるようにして、田舎道の難解さや夜道の怖さがジワジワと伝わってくる一話。
☆第三話「連休中にやる気を出した」は、割と純粋な学園もの。
一話・二話の「過剰な作画」で引っ張る姿勢ではなく、「テストと宿題」という、生徒的には最も引きのない題材で30分持たせた回。教員をうまく「具」にして、この笑えないネタを笑いに変えたことがなにより驚きの回。
☆第四話「てるてるぼうずを作った」を観ての印象を率直に表現すれば「物語がやっと作画に追いついた」。
追ったテーマをこの一回で追い切れた、とは感じていない。そんな重いテーマを描き切るには一定以上の作画が必要で、そんな回を「浮いた回」にしないためには、それまでの数回で「無駄に高度な作画レベル」を維持しておく必要もあるんだ、と。第四話のための第一話~第三話だった、と思えばいろいろ納得も行くし、あとは消化試合ならぬ消化回でもいいか、と思わせてくれる一話。
☆第五話「お好み焼きを食べた」はノスタルジーを表現した回。
駄菓子屋という今やコンビニに駆逐されたと言ってもよい商習慣を、田舎という舞台を借りて表現した回。製作者はお好み焼きではなくもんじゃでこれをやりたかったんだろうな、という本音は強く感じた。
☆第六話「ホタルと仲よくなった」は、田舎という娯楽の少ない舞台設定を借りて、「場を盛り上げる役割」の多様さを表現した回。
都会では、お金さえかければヒトもモノも潤沢に集められ、自ずと楽しい雰囲気が作れる。そのすべてがない「田舎」という環境で、盛り上がりを作るために人がどういう役割を果たすかを細かく描写した回。
なお「田舎の描写」という意味ではあまり正確でない箇所も多い(トマトの成り方とか灌水法とか)。
☆第七話「思いきって飛び込んだ」は、1期第4話「夏休みがはじまった」と対比すると面白い回。
田舎にはありがちな夏休みならではの交流を、1期は「泣ける話」として扱い、2期は「少女の成長譚」として扱った。どちらがキャッチーか、とかそういう観点ではこの話に勝ち目はない。ただ…固定客が着いている2期だからこそ取り扱える話だとは思った。
☆第八話「給食当番をした」はBパート最後の1分が全て。
大事なものを大事にできてこそ大人、逆に言えば大事なものすら大事にできないのが子供。
☆第九話「みんなでお月見をした」、第十話「すごく練習した」、第十一話「甘えんぼうになった」は、まとめて言うなら「保護者の存在」を示唆した回。
のんのんびよりの特徴は「子供だけしか出てこず、上下関係のほぼないフラットな世界観」。そんな世界を見守りつつやんわりと参加する年長者の存在を、ふんわりしたエピソードと共に描いた。
「日常系アニメ」に年長者が出てくると、話は締まるものの往々にして説教臭くなるのが常なのですがそうはならず。この作品の世界観が持つ懐の広さを再確認できた回でした。
☆第十二話「一年がたった」は、第一期と第二期の違いを端的に示した回。
田舎のよさを表現する言葉に「なにもない、がある」があります。
第一期は、それを「無」で表現した。第一期で多用された「背景画のみで無音」というアニメ表現がその端的な例。攻撃的なあのアニメ表現が、無駄にアニメばかりを見てる”おっきなお友達”の心をわしづかみにした。
第二期は、あくまで「なにもない、はある」ことを前提にアニメ作りをしていた感がある。
この回の中盤にあった「母親の井戸端会議を待っているシーン」がその端的な例。基本的に「退屈なシーン」、なにかドラマチックなことが起こるわけでもない。それを「なんでもないことの連続」として描いた。あの定点カメラ的な画面の使い方は実写ではやりにくい、アニメならではの表現。興味深いシーンでもありました。
語弊のある表現を使うなら、「第二期は第一期の自主同人作品」と言えるでしょう。
第一期では表現し切れてなかった部分を、平行時間軸ではなくあくまで同じ時間軸の上で表現した。最終回のラストの部分もそういう感じがあった。視聴者に強烈ながらも切ない印象を与えた第一期のラストと同じ設定・時間軸の話を扱いつつ『なんだか、すごく賑やかなお花見』として第二期を終えた。
興味深いやり方ではありましたが…第二期は第三期へのハードルを意図的に高く上げたな、とも思う。第一期のラストは「これで終わり」という納得を視聴者に求めた感があった。しかし、第二期のラストはこれを超える第三期を作ることは難しいし下手に作らない方がよい、という諦観を視聴者と共有しようとしてる感がある。その辺も含め、いい第二期・いいラストの作品だった、と個人的には思います。スタッフ・キャストの皆様、お疲れ様でした。