どらむろ さんの感想・評価
3.6
物語 : 2.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
歴代富野作品で一番ややこしい
「機動戦士ガンダム」の生みの親・富野由悠季監督が御年73歳にして挑戦した、(多分?)最後のガンダム。
敵味方の勢力関係が非常~に分かり辛いのと、俗に「富野節」と呼ばれる独特のセリフ回しや会話劇が特徴。
…富野作品上級者向けかも。
※出来る限り、ウィキを読まずに1週目時点の認識で感じた事を記述します。
{netabare}『物語』
舞台背景は、宇宙世紀から数千年経過した未来、だけどターンAの時代よりは昔な感じ。
宇宙世紀の教訓から、科学技術抑制して宗教による管理、やや退化している模様。
人類は衰退しました…?
「キャピタルタワー」という軌道エレベーターが聖域として重要な位置付け。
※軌道エレベーターは「ガンダム00」で重要な存在でした。
ターンAガンダムにも「ザックトレーガー」という軌道エレベーターっぽい施設あったような。
…初見で「宇宙世紀と∀の中間くらいの時代なんだなー」と認識。
※ところが、富野監督の発言によると「∀より未来」?
うーむ、どっちなんだ…。
私的には、∀がラストであってほしい気がします。
…色んな専門用語や組織名が飛び交い、殆ど解説されずに、独特のセリフ回し(富野節)が乱舞する。
私は慣れているので、むしろ懐かしい雰囲気で好意的でした。
予備知識として軌道エレベーターも知っていたし(00視聴済みなら当然分かる)、「フォトンバッテリー」等の供給関係辺りは、会話聴いていれば自然と分かりました。
実は世界観の説明は意外と丁寧で、過剰なまでの会話のやりとりを聞いていれば、何となく分かる。
それより、主人公ベルリが戦う理由やモチベーションの方が終始あやふやでモヤモヤしました。
ベルリの立場はキャピタルタワーを守る「キャピタルガード」という組織の兵士なので、キャピタルタワーに攻めてきたアメリア軍のアイーダ達と戦うのは分かる、しかし、何故その後アメリア軍と共闘する流れに?
いや、なんとなくの成り行きは分かる気が、しないでもないのですが…
本作最大の特徴は「怒涛の会話劇で何となく状況が流れていく」雰囲気。
これが実に巧妙かつ妙に心地良く、リアルタイム視聴時は意外と退屈せずに観れてしまうのは凄い。
…凄いのだが。
冷静に振り返ると、あれ?なんで敵対してたのにいつの間にか共闘してるの?
別にキャピタルガードと敵対する理由は無い(母がタワー運行長官、本人もアメリア軍に入ったつもりなし)はず。
キャピタルアーミーへの反感だろうか?
しかし、ベルリにとっては特に敵対する理由が分からん。
Zガンダムのカミーユだったら、ジェリドに「女みたいな名前」と言われてブチ切れる理由分かり易いのですが、ベルリにはそこまでの理由が無い気がしてしまいます。
なんとなくの雰囲気で戦って、戦死者出ても、何となく流されていく空気が、なんだか終始モヤモヤしました。
宇宙からの脅威トワサンガのドレット軍が存在する事が判明、アメリア軍に協力して戦う理由は分かった。
だったらキャピタルアーミーも味方のハズ、でも共闘…は出来ず、まあZガンダム以来の三つ巴なんですかねぇ?
(ゼータで言うとアメリア、エゥーゴ アーミー、ティターンズ ドレット、アクシズみたいな?)
ここからベルリやアイーダも参加しての会談などで、政治的に複雑なお話になっていく。
ここからビーナスグローブとかジット団とかが絡んで、三つ巴どころではない話に。
…初回視聴時はチンプンカンプン、2回目でもダメ、ネット上の解説レビュー読んでようやく分かった。
タイトルである「レコンギスタ」通り、地球圏への帰還を求める戦争狂たちが真の敵なのかな?
∀のギンガナム御大将みたいな。
何となく本作の構図は理解は出来たが、勢力関係やキャラクタードラマは混迷を極め、後半~終盤はついて行けなかった。
本作はそれなりに面白かったのですが、全体のテーマがいまいち分からない。
再び宇宙世紀の過ちを繰り返してはならない?
∀ガンダムは二勢力の対立を経て、黒歴史の過ちを繰り返してはならぬ!
と分かり易く壮大な物語でしたが、本作は勢力多過ぎ+ベルリが何をしたいかが不明瞭な為か、2週した今もモヤモヤしてます。
総じて
会話劇で毎話面白く観せてくれる構成力は流石
勢力関係、キャラの行動理由、全体のテーマが非常に分かり辛い。
(視聴中は結構楽しい気がする…でも視聴後、あれ?本当に面白いのか?と疑問が湧く)
ドラマチックさも足りない。
ターンエーならディアナ様とハリー大尉の恋愛とか、キングゲイナーでも恋愛面の見せ場で感情的にグッと盛り上がるシーンありますが、本作には特に無い。
淡泊。
…私の理解力が足りないだけで、色々と分かると面白いのかも知れないけれど。
出来れば、もう少しシンプルなお話が良かったです。
『作画』
サンライズロボット物としては及第点なのでは。
戦闘も近年の華麗なバトルには見劣りしますが、パイロット同士の気合いのぶつかり合いによるバトルシーンは迫力十分。
演出面が優秀なので、バトル面では絵の綺麗さ以上に楽しめました。
キャラデザも味があって良い。
…ただ、ターンエー程の感動や緊迫感は感じないです。
アイーダ様も可愛いのですが、ディアナ様&キエル嬢には敵わぬ。
『声優』
ベルリの石井マークさんは本作が初主演の模様。
富野監督がイメージする主人公にピッタリだったんでしょう。
アイーダの嶋村侑さんは脇役多い中でのヒロイン級、好演だったのでは。
ラライアの福井裕佳梨さんはグレンラガンのニアの人ですな。
クリム中尉の逢坂良太さんは珍しいタイプの役柄好演されました。
ビーナスグローブ総裁は子安武人さん。
…ターンエーでは戦争派御大将、本作では穏健派指導者、因果を感じるw
全般に配役は違和感なく優秀でした。
『音楽』
前期OP「BLAZING」はまずまず、後期「ふたりのまほう」はいまいちしっくりこない。
ED「Gの閃光」は意味はよく分からんがノリが良くて好き。
「Gのレコンギスタ~♪Gのレコンギスタ~♪」
ちゃんとタイトル入っているのは良い!けどテーマは良く分からん!
『キャラ』
主人公ベルリのキャラクターに終始戸惑った。
富野監督視点の「現代っ子」なんですかねぇ?
非常にセンス溢れる優等生なんですが…行動原理が不明確なのが気になる。
いや、いい子なのは分かるんですけどね…。好きでも嫌いでも無い「よく分からない」主人公です。
アイーダさんは中々魅力的なヒロインでした。
良きお姉さん、葛藤しつつも戦う理由もベルリよりは分かり易い。
いっそ、彼女を主人公に据えた方が面白かったのでは。
ノレドは可愛かったのだが、負けヒロイン。
終盤は富野作品の女性らしい暴走ぶり見せてくれるも、中途半端な感。
最初は「チュチュミィ!」としか喋れないラライアちゃんかわいい。
後半覚醒してからはまさかの凛とした正統派美少女っぷりステキ。
天才クリム中尉が一番好きです。口先だけでは無い実力者かつ現状認識も出来る有能な男。
中尉のバトルが一番盛り上がりました。
マスク大尉はシャアポジ…かと思いきや、終始空回りしていた感。
ベルリのお母さんも強烈な人物で魅力あり。
富野作品の親にしては珍しく、良いお母さんでホッとした。
メガファウナのクルーも個性的で良い感じ、整備士も存在感あり、ここら辺のキャラ描写は流石冨野作品。
全般に会話劇によるキャラクター描写は巧みなのですが、これといって印象に残るほどのキャラは居ないです。
特に、敵に存在感ある奴が不在。
ギンガナム御大将ほどに記憶に残る名敵役は本作には居なかった。
本作は狂気が足りない!
…それでもキャラ層の厚さゆえに4点評価は付けてますけど。{/netabare}