OZ さんの感想・評価
3.1
物語 : 2.5
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
人とアンドロイドとの間に生まれた刹那の恋
原作 脚本を『STEINS;GATE』のシナリオライター 林 直孝さん
監督は『未確認で進行形』で監督も務めた 藤原 佳幸さん
制作会社は最近の作品で言えば『月刊少女野崎くん』でもお馴染みな
女の子の可愛さに定評ある動画工房と
何とも期待が高まってしまう面々が集っており
オリジナルアニメとの事で2015春アニメの本命作品
■人とアンドロイドとの間に生まれた刹那の恋■
「デジタルな記憶の中から生まれるラブストーリー」
本作品のキャッチコピーである。
この言葉から想像する通り
人間である主人公 水柿 ツカサと
ギフティアと呼ばれる人型アンドロイドのアイラ
互いに心を通わせた一人と一体は
限られた僅かな時間の中で惹かれ合い
記憶と言う名の思い出を重ねていく
近未来を舞台にしたラブストーリーだ。
第1話から"別れ"を題材に
誰もが予想出来る展開で進行していく
所謂"泣かせる事に重点を置いた"
感情を揺さぶる作品である。
さて「本作品で何が1番印象に残った?」との
問いがあるとしたら
大半の視聴者は口を揃えてこう答えるだろう。
"アイラが可愛かった!"と。
そう!やはり特筆すべきは
見た目の愛らしさは勿論
何かとポンコツな所が憎めない
ドジっ娘アンドロイドのヒロイン アイラである。
彼女に入れ込めば入れ込む程
来るべき避けられない別れは感動を生み
本作品になくてはならない存在だ。
だが 同時に主人公のツカサを始め
他の登場人物達よりも
圧倒的に"キャラクターが立ち過ぎ"ているのである。
言い換えるとアイラ以外のキャラクター達が弱いとも言える。
なので ほぼアイラで以って作品が成り立っており
彼女に魅力を感じられなければ
そこで凡作止まりと位置づけられてしまうのは否めない。
また日常系とは異なる
ストーリー重視の作品だと観ていたので
萌え要素を強く引き立ててしまうと
却って本質のテーマから遠ざかってしまい
魅力的なキャラクターは本来長所となるが
本作品の限っては短所にもなり得る
表裏一体の存在でもある。
最近の作品で例えるなら
2014秋アニメで放送された『天体のメソッド』に
どことなく近い感覚を抱いたものだ。
後に改めて記述するが
本作品は不可解な点が幾つか残り
泣かせる為だけに仕掛けられたと
受け取られてもやむを得ない設定が目立つ為
ハッキリ言って構成面は力不足である。
ツッコミ所の多い設定をどう捉えるかで
評価は大きく異なってくるはずだ。
次に作画に関してだが
手放しで称賛をするのは難しく
終盤に差し掛かるとアイラ以外の作画が目に見えて崩れ
息切れしてしまったのは惜しい。
動画工房と言えば
安定した作画や可愛い女の子を描く事に定評があり
辛うじてアイラだけは死守したと言ったところだろうか。
厳しめに書いているが
キャラクターのタッチを含めて好みな制作会社なので
今後の期待を込めた愛のムチと受け取って頂ければ幸いである。
一方で評価したいのは音楽面だ。
まずOP「Ring of Fortune」
低音域のベースを少なめに高音域メインで仕上げられ
感情を込め過ぎてしまうと
歌うのが難しく思われる楽曲だが
囁く様に歌い上げた佐々木 恵梨さんは見事である。
映像も本編と程好く重なり
サビ直前に振り返るアイラと共に
季節の移ろいでいくカットがお気に入り。
続いてED「朝焼けのスターマイン」
第8話のエピソードを中心に
ツカサからアイラへの想いが
そのままストレートに綴られ
彼の優しさに満ちている楽曲だ。
「愛しさ溢れてゆく」のフレーズ時に
様々な表情を見せるアイラが印象的。
楽曲の良し悪しは別にして
EDの最後にアイラが
何かを語りかけている場面があるのだけれど
最終回でも明かされなかったのは心残り。
本編の内容も含め「思い出をありがとう」的な事を
おそらく口にしているだろうと想像はつくが
ここだけは視聴者に判断を委ねずに
ちゃんと明かしてもらいたかった。
もしも台詞が挿入されていたのなら
より作品に感情移入する事が出来
ひいては評価が上がっていたのかもしれないので
残念とまでは言わないが
非常に勿体無く感じてしまったものである。
■疑問の残る設定■
上でも書きましたが
設定の粗が決して少なくなかった本作品。
例えば何故ギフティアをあそこまで人間そっくりに
作り上げる必要があったのだろうか?
人間と変わらぬ思考を持ち
約9年4ヶ月もの期間を共に過ごす事が出来るのだから
いくら人間でないとは言え情が湧いてしまい
回収する際に揉め事が起きてしまうのも至極当然な話である。
次に疑問となったのは
第4~5話で描かれたワンダラー関連のエピソードだ。
ワンダラー化してしまうとどうなるか?
回収間近にあるギフティア暴走の恐ろしさを知る事で
最終的にツカサとアイラに逃避行をさせない為の
謂わば予防線として組み込んだエピソードなのだろう。
そうなってくると今度は
闇回収業者関連のエピソードがおざなりとなり
彼等の目的が結局曖昧なまま終わってしまうのである。
そして1番疑問に感じた点は
アイラがアンドロイドである理由だ。
作中で触れられているのは食事の違いのみで
後はアイラの残り稼働時間ばかり言及され
人間とアンドロイドを隔てるであろう"壁"が
全く感じられないのである。
これでは人と人が普通に恋愛しているのと同じで
アンドロイドである設定が無いのに等しい。
もっとも人間と同じ様に接している世界なので
深く掘り下げる必要はないのかもしれないが
余命までのタイムリミットがある点において
不治の病を患った薄幸の美少女と置き換えても
大して差はないと言えてしまうのだ。
要するにアンドロイドでなくても
この『プラスティック・メモリーズ』は成り立ってしまう為
アイラがアンドロイドでなければならない
明確な理由付けを示してもらいたかったもの。
気になった点を挙げればキリがないが
これだけ技術の進歩している世界なのだから
何かしら対策を講じなかったのだろうかと
近未来を舞台にしているだけに
疑問がつきまとってしまう設定なのである。
■あとがき■
かなり厳しめに評してきましたが
作品自体は悪くなく
奇を衒わない真っ直ぐなラブストーリーは
結末が分かっていても
充分に感情を刺激してくれる全13話でした。
第10話から最終回にかけては
そりゃ泣くよ!って言いたくなるくらい
思いっきりストレートな展開でしたね。
特に観覧車でのやりとり然り
眠りについてしまったアイラを抱え
カヅキから「最後までよく頑張ったな」と
慰めに似た感謝の言葉を掛けられた直後
そこで初めて別れが現実のものであると悟った瞬間に
ツカサが泣き崩れる場面は
彼と同じく涙が流れてしまいました。
全てを観終った後に最終回のOPをもう一度観たら
ラストで一瞬顔が曇るも
笑顔で涙を流すアイラの表情が
本作品の全てを物語っていた気がします。
アイラの残り寿命が2000時間程度と説明された際
2000時間=約83日(正確には83日と8時間)だから
初回放送開始日が4月5日で
83日後は最終回の放送される6月27日と
現実の世界とリンクさせている
些細なネタも胸を締めつけましたね。
今回観終って切に感じたのは
無意識とはいえ捻りのあるシナリオを
当たり前の様に期待してしまっていた事。
色々な作品に触れたりしていると
本作品の様なラブストーリーに限らず
"ストレートな展開=安易"と捉えてしまい
確かにもう一捻りあっても良かったのでは?と
感じた事は否定出来ないですが
"目新しさの無さ=作品の評価"に繋がってしまいがちなので
案外安易なのはそういった概念にとらわている
観ている側なのかもしれないと思わされました。
設定に粗が目立ったのは残念であるけれど
今や凝ったシナリオがスタンダードであるかの様に
存在している現状だからこそ
真っ正面からやりたい事を描いた点は
素直に評価したいものです。
いつの日か人間とアンドロイドが共に生活し
ツカサとアイラの様にお互いを慕い合い
やがて恋をする未来がくるのでしょうか。
少なくとも生きている内には
実現しないであろう世界であるが
遠い未来では有り得ない話ではないのかも
なんて想像を膨らませると
どこかロマンを感じさせてくれました。
最後になりますがツカサとアイラ
もしも彼等がもう一度出逢えるのならば
次は一人と一体ではなく"二人"として
生涯を添い遂げるパートナーに
生まれ変われる様願いたいです。
そこまで都合良くはいかないだろうけれど
それでもきっとアイラならこう答えてくれるでしょう。
大切な人と いつかまた巡り会えますように
そうツカサと約束したので・・・と。
満足度 ★★★★★★☆☆☆☆ (6)