退会済のユーザー さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:途中で断念した
タイトルなし
あらすじだけを見ればSAOを彷彿とさせる内容だが、実際に視聴してみると似ても似つかない作り。
ある日突然、自分達の住む場所が、現代社会からゲームに変わってしまう。
慣れ親しんだ社会はなく、命は無限となり、予期せぬ自由を与えられ、そこで人はどういった歩みをみせるのか。記録の地平線に何を見出すのか。
逆説的に社会の必要性、自由の不自由さを説きつつ、同時に、社会を形成していく様子、自由に世界を開拓していく姿にワクワク感が楽しめる。
現代に還れるようになった時、主人公達は、自分達で築いてきた自分達だけの社会を手放すことが出来るのか。その答えは、本作最大のテーマであり、メッセージとなるように思う。
命は永遠で、自分達で設けた制限の下で約束された自由がある。ゲームのような世界で築き上げた、夢のような現実。あるいは、現実のような夢。少なくとも、主人公らは既に、今いる異世界を自分達のリアルと認識したのだ。
おそらく、本作の冒険者は、精神だけが異世界に飛んでいるのだと思う。そう過程すると、仮に現実世界に帰らなかったとしても、現実世界よりも遥かに長生きができることになる。
そして、現実世界の時とは違って、肉体に課せられた制限はかなり緩くなっている。運動しても疲れはほとんど無く、やりようによって五感は満たすことができる。死ぬことはないのだから、子孫を残すという種としての義務も存在しない。
肉体という制限を克服した人間は、それでも限りある命を求めるだろうか?
それとも、すべてが自由な異世界を望むか。
シロエ達がやがて示すことになるであろうその結論も興味深いところだ。(そう考えると、急にSFっぽく感じるよね)
ただ、それを描く為にも、序盤だけでも主人公らが自分達の世界に帰れないことに対して慌てふためく描写はあって欲しかった。
原作でも流れ自体に大きな差はないのだけど、こちらは、リアルでの友達との早い段階での再会と、周囲の人物を見下すことで平静でいられた、と主人公が語るシーンがある。マリエールなんかも、気を紛らす為にわざとハイテンションでいる、という描写が挟まれていたのだが……。
放送局による影響か、本作ではそういう重さを感じさせない、マイルドな作りに仕上がっている。これをリアリティの欠如と捉えるか、もしくはテーマに不必要なものとして切り捨てたのだと判断するかは、観る人次第。
また、一人で無双してしまうようなチートキャラクターを設けなかった点を評価したい。
世界を開拓していくのは一人の英雄ではなく、大勢の人民。本作では様々な役割をもった人物を大勢用意しており、観ている感覚としてはシュミレーションRPGが近いのかもしれない。
反面、やはりこれだけのキャラクターがいても群像劇と呼べるだけのドラマ性には欠けてしまっているのだが……もしくは、ドラマ性を排する代わりにこれだけのキャラクターを用意したのかもしれない。
もっとも、これだけの人数のキャラクターがいて、特定のキャラにしか感情移入できない作品だとそれはそれで非常に勿体ない。様々な視点から、物語を追うのではなく世界を眺める、マクロな視点で作品を楽しめるようにと意図しての可能性も充分に考えられる。主人公を戦闘パートの主役に据えていないのが、その証拠だと思う。
放送局が変われば、あるいはもっと違う作風になっていただろう。
そっちの方が絶対ドラマ性の高いものになっていたはず。アカツキなんて、主人公に【女】にしてもらったヒロインなんだし。
だけど、知っているようで知らない世界を冒険すること、自分達の思う理想の社会に開拓していく姿にワクワクできる作品になっていたかというと、きっと、なっていなかったと思う。
これはこれで、アリだと言える作品。
見応えには欠けるけど、ある意味でゲームよりもゲームらしい正統派ファンタジー。
……ただし、上述の長所を考慮しても、やはり「面白い!」と感じるにはもう一歩かな。