退会済のユーザー さんの感想・評価
4.0
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
タイトルなし
「結婚しよう!」
「嬉しい、私もそうなれたらいいなって思ってたの…」
文面だけなら陳腐と捉えられかねないこのやりとりに、青臭さはあっても安っぽさはなかった。それこそが、この作品最大の美点だと思う。
この時、雫は自分に対して明確なヴィジョンを持っている。
なにをどうしたいのか漫然としていた少女が、恋愛をキッカケに将来に対して夢を持つまでに至ったのだ。
また、執筆活動で得たであろう経験が、この一連のやり取りにごく自然に説得力をもたせているのが素敵。(聖司も同様に、工房での見習いという経験を経ている)
自分の中からなにかを創り出す。それは大変な難産だったに違いない。自分に対する失望もあったろう。思い通りにならない焦りもあったろう。
だけど、苦労の末に得た経験と言う名の宝石は、雫の未来を明るく照らす。
去っていく想い人を見送る立場から、最後には共に坂道を上る関係へと変わっていき、日の出を眺めての告白である。この告白はもはや、大人となんら変わりないじゃないか。だって、この時点で雫は姉よりも一歩進んでるんだし。
相手と対等でありたいと思う雫。相手の気を惹こうと一歩優位に立ちたがる聖司。この二人がとにかく微笑ましかった。
聖司に関して言えば、雫の視点同様に、どんどん魅力的に映っていったのが良かったなぁ。屋上での告白紛いのシーンなんて、ついついニヤけてしまうよね。
微笑ましい描写を挿んで甘酸っぱい恋愛が展開されながらも、青春ストーリーとしてきっちり纏まった名作ですわ。