takarock さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
比企谷八幡のようなひねくれ者が俺ガイルのレビューを書いてみる。
その起源までは知りませんけど、
私は「涼宮ハルヒの憂鬱」はヲタクにとっての放課後ユートピアモデルを
提示したと思っていて、それ以降そういった作品が激増しました。
要は主人公を始めとして、部室であったり、生徒会室だったりに美少女たちが集まってきて、
部室でゲームしたり、夏休みは海や夏祭りに行くというような
大学のオールラウンドサークルの学園バージョンみたいなアニメです。
もっとも、「涼宮ハルヒの憂鬱」はSF要素が強く、
それらの作品とは一線を画すると思っていますが。
この作品の1期を放送当時観てたら「奉仕部」ですからねw
正直またかとw
ところが、この作品は
奉仕部内部の関係に終始することなく、
主人公の比企谷八幡(ひきがやはちまん)とも密接に関わってくる
スクールカーストの上位に属するリア充グループという
対立関係にあたるような外部性を取り入れることによって、
従来の放課後ユートピアモデルのアニメとは
明らかに異なる性質を帯びている作品となっています。
比企谷八幡は、ぼっちならではの斜に構えた鋭い視点を以って、
ビシバシとリア充グループの関係の脆弱性を指摘していって、
何も持たざる者の強みとも言わんばかりに自らが犠牲になることも厭わず、
彼独自のやり方で、リア充グループ内の問題を解決していくのですが、
そんなダークヒーローである比企谷八幡に、
視聴者は「よくぞ言ってくれた!」と共感することができるかが、
この作品を楽しめるかどうかの境目だと思っています。
ちなみに私の友人2人は「こいつなんか偉そうで嫌い」と視聴断念。
そんな中視聴した本作(2期)は、1期と比べると「違和感」ともいえる相違性を感じました。
製作会社がブレインズ・ベースからfeel.に変更。
キャラデザも大きく変わり、比企谷八幡はイケメンになっていましたw
だからか!w
いや、もちろんそれだけでなく、
本作(2期)の比企谷八幡というのは、
{netabare}スクールカースト上位に属する葉山グループのメンバーともそれなりに接して、
トップの葉山からはライバル視されるくらい一目置かれ、
後輩の一色いろはにはなんやかんやで頼りにされ(つーか、好意を持たれ)、
比企谷八幡を超下に見ていた中学時代の同級生の折本かおりからは見直され、
教師の平塚静からは何かと目にかけてもらい、
戸塚という男の娘の友達がいて(材木座略)、
小町という可愛い妹がいて、
その上、雪ノ下と由比ヶ浜に好かれ・・・・ってもういい加減にしてくれ!{/netabare}
ハッピースクールライフとも言えるリア充っぷりです。
まるで比企谷八幡スクールサクセスストーリーです。
比企谷八幡は、最初は
「自分もぼっちだよ~非リア充だよ~君たちと同じだよ~」と近づいてきて
読者や視聴者に好かれ、さらには感情移入の対象にまでされている節があります。
この時点では非リア充の読者、視聴者たちと同じ立ち位置という完全なる共感型主人公です。
しかし気づけば、こんな風になれたらいいなという憧憬型主人公にシフトしています。
厳密に言えば、共感型でもあり、憧憬型でもあるハイブリッドな最強主人公だと思います。
そのスムーズなシフトを可能たらしめるのは、
今日に至るまでの彼の活躍だったり、苦い経験を経ての成長だったりを
我々が目の当たりにしているということです。
そして、主人公のタイプのシフトに伴って作品のテーマもシフトしています。
ぼっち目線で人間関係を斬っていく痛快ダークヒーローものから三角関係ラブコメへ。
おそらく1期では「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」というのはタイトル詐欺だ
なんてことが言われていたでしょうけど、今となってはそんな声は皆無でしょう。
男1、女2の三角関係ラブコメというのは
「何でこの男がモテるのかが分からない」とか、
「何でこんな男を好きになるのか分からない」というような
キャラに感情移入できないが故の問題というのが発生しやすいのですが、
この作品ではその問題はもうクリアされています。
つまり、これまでの話の中で、比企谷八幡の、雪ノ下雪乃の、由比ヶ浜結衣の、
それぞれの心情やその変化を我々は知っているので、
この状況(三角関係)に至るのは当然だと受け入れることができるということです。
2つのシフトによって、自然を装いつつ、このような舞台を作り上げたことが、
この作品の巧い所だと思います。
もっとも、その三角関係の話はこれからなのですが。
もし、この作品が最初から三角関係をテーマにしたのであったなら、
ぼっち主人公がいきなり三角関係なんて夢物語にも程があるだろと思っていたでしょうし、
比企谷八幡「本物が欲しい」
俺「気持ちよくラリってんじゃねーゾ! コノ野郎!」
ということになっていたでしょうw
そして、私が前述した1期と比べた際の「違和感」の正体というのはこの2つのシフトのことです。
何故「違和感」と感じたのかといえば、おそらくそれは私が原作未読だからです。
本作(2期)では相当なペースで原作が消化されたようです。
原作ではもっと丁寧に心情や状況の変化が描かれているでしょうから、
違和感など感じさせず、より自然にシフトできているのだと思います。
また、テンポが良いには良いですけど、
キャラの心情が非常に読み取りづらいところもありました。
どのキャラがどのキャラにどのような感情を抱いているのかというのは
だいたい分かるので、理解不能というレベルではないですが、
この辺りがアニメとしての本作(2期)の弱点でしょうね。
やはりこの作品は、アニメよりも原作であるラノベを読むのが一番楽しめるのだと思います。
ただ、少なくとも私はアニメである本作(2期)をおもしろいと思っているので、
3期があれば是非観たいです。