ムッツリーニ さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 2.5
状態:観終わった
試合に勝って勝負に負けた作品
この機動戦士ガンダムというシリーズ、ひいてはロボットアニメというジャンルは常に関連商品をいかに売り上げるかというスポンサーの経営的戦略の歴史でもあります。
いかに新たな商品を開発するか。いかに類似商品との差別化を図るか。ロボットアニメの企画開発の要諦はこの一点に集約されていると言っても過言ではなく、今作においてそれは圧倒的な成功を収めたと言っても良いでしょう。
これまでのガンダムでは忘れられていたシンプルでスマートな形状、主人公が乗る機体は子供心をくすぐる白赤青のスリートーンカラー。ライバルである4機のガンダムはそれぞれ悪役らしさを押し出したネイビーな色合いを持たせることで視覚的な差別化を図り、さらにガンダムWでの成功実績を踏まえて近接型や遠距離型などの極端な特徴を持たせることで解りやすいイメージを形成する。これらを踏まえた上でデザインされたデザイナーの方々の苦労は筆舌に尽くしがたい物であったことは想像に難くなく、そして今では作品としてもプラモデルとしてもガンダムでは一番人気という栄誉を獲得したことで、それは確実に実を結んだと言えるでしょう。
しかしこれを商材としてではなく一つの映像作品として見た時、多くの批判があることもまた事実。まぁその問題の根幹は物語を支えるキャラクター配置にあるでしょう。
危機的状況を何とか打破しなければならない現地部隊と戦争という非日常に放り出された少年達との軋轢。
生き残るために戦列に加わる主人公とそれを黙認する隊員の心理的葛藤。
命令を下す司令部とそれに従う隊員など、それらを主軸として物語を用意しなければならない。その上で最も戒むべきは主人公の思考停止的活躍を英雄的に描く没論理的演出であるが、現実に実行されたのがまさにそれであったという点がガンダムSEEDにおいて最大の問題だったと私は思います。
その文武両道ぶりは比肩しうる者がない主人公キラ・ヤマトを主軸として展開される物語は、その全てが彼を持ち上げ、その万能ぶりを他者と比較するための物でしかなく、その他のキャラ達がただただ主人公を羨むだけの存在でしかないのは、ドラマとして成立しないばかりか人間としての感情が存在するのかすら怪しく思えます。さらに中心にいるはずのキラでさえ不思議系というか若干コミュ障気味なので余計に始末が悪いです。彼にルルーシュほどの牽引力とカリスマがあれば評価もまた違ったのでしょうね。
「でも…っ!!」ってなんだよその先言えよ。
そんな中で異彩を放っていたのがクレイジーサイコビッチことフレイ・アルスターですね。キャラクターとしての好否はともかく、父親を殺された復讐を遂げるためにキラを利用しようとしたり、敵の捕虜になった後も何とか生き残ろうと必死になる姿は実に人間的で良かったと思います。まぁ結局死ぬんですが。
総評としてはそうですね……、大人の情けなさを露呈した作品、ですかね。
DESTINYのレビューどうしようかなぁ、書くべきかなぁ………