おぬごん さんの感想・評価
3.3
物語 : 1.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
SF作品に対する「視聴者の良心」を逆撫でしてしまった
記憶に制限時間のあるアンドロイド「ギフティア」を巡る、SFラブコメ
タイトルの「プラスティック」は、英語で俗語的に「紛い物の、人工の、不自然な」といった意味で使われる言葉ですね
さて、もうテーマからして泣かせる気満々ですが、まあそれはそれでいいんです
「あの花」なんかもそうでしたが、泣かせる気満々だと分かっていても、その期待に応えてしっかり泣かせてくれれば、視聴者は満足するんです
実際に1話は独立した話として非常に完成度が高く、私もほろりとしてしまいました
最終回ラストの観覧車の「上りと下り」を使った演出、密室で退路を断つことでアイラの覚悟を見せる演出も、ベタだけど凄く良かったです
…問題は、この作品にはあまりにも大きなノイズがあったことです
まあ具体的に言うと、4~6話の「ワンダラー」についてのエピソードです
SF作品というのはそもそも設定にある程度の突っ込み所があり、視聴者もそれを分かった上で「それはそういうものだ」と割り切り、主題を楽しむものだと思っています
この作品のギフティアの「9年4ヶ月で記憶がなくなり復旧不可能」「心や表情が人間と同じなばかりか尿意も催す」という設定も突っ込みたくはなるところですが、「まあPCのHDだって4年くらいが寿命だしそういうこともあるよな」「その方が可愛げがあるもんな」と自分を納得させて作品に興じるわけです
ところが、先述のワンダラーについての設定は、こうした視聴者の謂わばSF作品を楽しむ上での「良心」を凌駕してしまうものでした
某掲示板風に言うと、
ギフティアの記憶は9年4ヶ月でなくなる ←まあわかる
記憶がなくなると他人に害を及ぼす ←自分も他人も分からなくなるわけだし、まあ多少はね
本能的な行動しかとれなくなり、元の持ち主を襲う ←は?
身体のリミッターが外れるため、超人的な力を発揮する ←????WWWww??wwwWWW??w
とまあこんな感じですね
記憶がなくなって人格も崩壊し、持ち主を「あなたは誰?誰?知らない、やだこっちにこないで!」なんて言ったりして傷つけるような行動を取ってしまう…という展開なら、まだ理解できたことでしょう
しかし、超人的な力で暴走して元の持ち主を襲うなんてなると、もうそんな危険な商品が普及していることへの違和感しか感じることが出来ません
更に作中では輪を掛けるように、明らかに危険な存在となったワンダラーに対処する警備部隊を、主人公側がまるで「悪」であるかのように扱うんですよね
いやいや、あんだけ危ないものに容赦しちゃいけないでしょ!と
挙げ句の果てには、主人公たちが何の説明、伏線も無く、剣や銃で戦い出す始末…
このエピソードは視聴者の「良心」を逆撫でし、一気に設定の粗に目が向くようになってしまったように思います
もちろんこういった展開には、ラストの展開に向けて「アイラもこうなっちゃうんじゃ」と視聴者の不安を煽る要素として印象づける目的があったのでしょうが、それにしてもやり過ぎでした
絵は終始綺麗で暖かく、優しすぎる程の職場の人間関係や、アイラとの初々しく寂しさのあるラブコメ描写も丁寧で、もちろんアイラもあざと可愛かっただけに、中盤の展開が悔やまれます
まあ個人的にはOPとEDを含め、全体的に一昔前のTVドラマっぽくてやや古さを感じたんですがね…w
余談ですが、最終回の2人…一緒に風呂に入ったり、結構普通にキスしたり…明らかに一線を超えた後だったような…w