tao_hiro さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
還元主義者にはわからない
<2015/7/3:加筆>
「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」・・・サン=テグジュペリの小説「星の王子さま」の一節です。
私たちは幼少の頃から「科学的思考」を教育されます。なぜなら現代社会において科学的思考なしでは生活できないからです。科学によって証明できない物は「非科学的」として疑問をもたなければ、様々なリスクを背負うことになってしまいます。
その一方で、脳科学の進歩によって、科学的なアプローチがようやく進んできた「感情・精神」というものを私たちは抱えています。しかし、まだ解明したと言うには程遠い段階です。
「感情・精神」に関しては、伝統的には「哲学・宗教・芸術など」が、その働きを説明してきました。ところが科学の目覚ましい進歩に比べて、これらの進歩がついてこれていない状況が続いています。科学と精神が著しく乖離しているのが現代です。
このため、私たちは「目に見えるものや自分で確認できるもの」を追求し、「目に見えないものや確認できないもの」を重要視しなくなくなり、猜疑心をもって接してしまうことになっています。
例えば、「思いやり」「優しさ」「愛」「友情」「勇気」「絆」などの概念は、直接見る事は出来ません。「行動」として現れたときに初めて認識できます。しかし、間接的にしか認識できないために、それが「本物か」「偽物か」を常に疑ってしまうことになります。このように信じられるものの範囲が狭まれてくると、最終的には「自分自身」しか信じる事しかできなくなります。
ところが、この情報過多の世の中において、アイデンティティーを保つのは大変なことで、特に若者においては、その唯一の頼りとなる「自分自身」にも自信が持てないというのが現状でしょう。
そのため、偏ったイデオロギーにすがりつき安定を求めたり、シニカルな態度で達観した体を装い不安を紛らしてしまうのでしょう。
これが現代人の不幸の元になっていると思います。
この作品は、この現代人の悩みに一つの解を与えてくれます。それは、伝統的な考えであり、科学的思考においては「非科学的」と判断せざるを得ない方法です。
それは「目に見えない物の中にこそ、大切な物がある。人の心とか、思いやりとか、気配りとか、神様のお働き、ご先祖様の御守護、仏様のお導きなどたくさん大切な物があることを理解すること」です。
そして「見えない物に対して心を向けたならば、信じられる物、自分に力を与えてくれる物がたくさん見えてくる」ということを教えてくれます。
アニメ作品としての評価は低いようですが、取り上げたテーマは、今クールで一番すぐれたものだと思います。
さて、サン=テグジュペリによれば「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えない」そうです。その肝心な「心」はどこにあるのでしょう?
「心は脳の働きに過ぎない」って考えたあなたは、すでにものごとが良く見えてませんよ・・・(笑)
(PS)
還元主義者
⇒物理・化学的に不可解にみえる現象も,要素現象に分析・還元していって,これら要素の作用様式を解明することにより理解することができるとする立場。