逢駆 さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
~摩頂放踵~
空はどれほど高いのだろう
風はどれほど強いのだろう
水はどれほど澄んでるだろう
君の胸の中では―――――
前作『LAST EXILE』にも増して壮大な世界観を圧倒的スケールで描いた冒険活劇。
戦闘描写はもちろん、ヴァンシップと呼ばれる小型飛行艇や迫力ある戦艦の数々がスチームパンクの魅力を十二分に惹きたてています。
前作から2年の歳月を経た世界、舞台は「プレステール」から「青い星」へ。
世界制圧を掲げ他国へ侵略を進めるアデス連邦。トゥラン王国をはじめ諸国家がアデスと戦うなか、戦艦を捕獲し加工や転売をして生計を立てている空賊集団カルタッファルがあった。そこに属する主人公・ファムは空賊稼業である「鯨捕り」をして暮らしていた…。
この作品の大きなテーマのひとつ、それは「戦争」。
そのため国家間の思惑やそれを指揮する人物たちにスポットを当てて物語が進められていきます。
自らの信じる正義に従って行動する者たち。
しかしその信念や意志に対する描写があまりにも希薄で唐突でした。戦争の方向がころころと変わったり、戦場にすべてを賭けている軍人の銃を下ろす理由がとても安易なものであったり…
そして、その最たる人物が主人公であるファム。
「みんなが仲良くすれば世界は平和になれる」と、戦争を終わらせるために力を持たずしてひたすら自分の理想を叫び続けます。ラストで平和のためには力も必要だということを悟りますが、結局最初から最後まで大した成長がなかったように思いました。
また政治的な面が増すにつれて、どんどん薄れていくファムの存在感。
それなのに無理やり主人公のポジションに据えておこうとした結果、ちぐはぐなストーリーになってしまった感じがして残念でした。
大風呂敷を広げた割に小さくまとまってしまった印象の本作。
ただ、音楽に関しては大満足でした!
悲壮感漂うナンバーから血湧き肉躍るようなナンバーまで様々ありひとつひとつの迫力に圧倒されました。空賊、そして壮大な空のイメージにぴったりの楽曲ばかりで本当に素晴らしかったです。
作品としての落とし所は無難でしたし、言わんとすることもわかりました。
ただもう少しファムの成長と挫折や、戦争と平和といった部分を細かく描いてほしかったなと思います。
もしかするとミリアやディーオを主役にしてたら、だいぶ作品の印象が変わってたかもしれません…。