GCR さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
京都アニメーションの執念とプライド
京アニと言えば、誰もが真っ先に思い浮かべるのは、圧倒的にハイクオリティな作画や演出だと思う
だが「けいおん」以降の作品群では、その有り余る作画リソースを持て余しているなと、個人的に思っていた。
キャラを無理に動かさなくて良い会話シーン等で、過剰に身振り手振りをさせて動かしたり
やたらと派手で見栄えの良いデジタルエフェクトを多様したりと
穿った見方をすれば、物語の必然性からというよりは画面の派手さ優先の
技術力を見せ付ける様な作画演出をしている様に思えた。
それが今作では、従来の京アニ路線の派手な作画は鳴りを潜め、一見するとあまり動きがなく
落ち着きのある抑え気味の色彩設定と相まって、地味な印象さえ受ける。
では手抜きをしているのかというと、そうではなく
むしろ今まで以上に、驚異的なこだわりのある映像を作り出していた。
実写カメラの映像を研究したであろう、多数の光学エフェクトを駆使し
2次元の絵に実写のような奥行きや空気感を与え、とても効果的にアニメーション演出に落としこんでいる
蛇口から流れる水や、ガラスに張り付く雨粒等の水の表現、
うららかな桜の舞う春の陽気、梅雨のジメッとした空気や夏の強烈な直射日光による照り返し等
圧倒的な自然表現で言葉以上に、情景が画面から伝わってくる。
まるで実写映画の様な絵作り、いわゆるフォトリアルな演出を徹底し、決して派手ではないが
従来の作品では成し得なかった、圧倒的な情報量を獲得することに成功している。
あえて2D作画によって3D以上の情報量を目指す、京アニのアニメに対する並々ならぬこだわりと気概を感じた。
(明らかに3Dで作った方が楽な楽器を、あえて手描きにしたのは、こだわりというか執念すら感じるレベル)
近年は他のアニメスタジオも、動かすだけなら相当なレベルになってきたと思うが
それらと一線を画す演出力を持って、京アニはまた一段上のステージに上った。
劇場版以外のTVシリーズで、ここまで驚異的なクオリティを実現した京アニには、本当に頭が下がる思いだ。