sinnsi さんの感想・評価
3.4
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
アニメ業界の表面を知る上では大変優秀。しかし……
最初の数話を観た時、自分には目新しい事だらけで面白いと感じる一方、かのような繰り返しであるのなら、間違いなくダレると思っていた。
そして、それは案の定であった。
まず、基本的に制作進行の主人公は、仕事の依頼と催促、納期にキリキリと苦しむ様の繰り返しばかりで「またか……」とうんざりするようになる。
実際に、これは忠実でいて、このような印象を根付かせた時点で成功しているのかもしれないが、
幾人もの記号的な美少女キャラクターの言動を見るに、アニメ制作の現場をエンタメ向けに脚色した作品であるのは間違いなく、
不幸自慢に甘んじているのは、変化がまるでなく退屈なのだ。
そして、上山高校アニメーション同好会の流れが、不要であるようにも感じた。
異なるアニメーション技術を持つ5人だが、それを描くのは劇中の他キャラクター同士の衝突でも十分であり、
登場頻度の差が激しく空気と化しているキャラクターもいる上、物語に欠かせないほど出番のあるキャラクターも、単に会社の同期というだけで構わない気がしてならない。
何より、最終的に{netabare}5人は会社で制作中のアニメの仕事を、間接的に共同で行うのだが、その展開が帳尻合わせ{/netabare}に他ならず、物語を陳腐化させてしまっている。
また、劇中で制作するアニメのシナリオが、これまたいい加減な具合なのだが、
それを真剣に検討し合っている間抜けさに首をかしげる事も多々あり、それが当作品にまで反映されてしまったのだろうか。
登場人物が葛藤に苦しむ描写は数話にかけて丁寧に描かれているのに対し、それに対する打開策はやや漠然としていて、あっさり数分で終わるのだ。
根本的に真摯に作っていないからこそ、このような適当な展開となってしまったのだろうか。
しかし、制作進行を離れた現場の仕事は自分の知らない事ばかりでいて本当に目新しく、
空想でない、長年の経験に裏付けされた現場の描写は実に綿密でいて、コメディタッチで分かりやすく、当事者も魅力的だ。
過去に業界アニメは何作も出ているが、アニメに関心が注がれる中で実直に描いたからこそ、多数に支持されたのだろう。
上記点だけでも観る価値は十分にあり、自身の中でもアニメに対する観方が多少なりとも変わったが、
如何せん物語の流れと、記号的な美少女キャラクターが、この作品の価値を下げてしまっている。
1クールでは明らかに描ける部分が不足するため2クールとしたものの、逆に尺が有り余る事となったのだろう。
そして、上山高校アニメーション同好会の流れを取り入れたのだろうが、上手くまとめきれていないのだ。
いや、実に惜しい作品であった。