Lovin さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
観た感じ
■概要{netabare}
原作:神楽坂淳
監督:池端隆史
シリーズ構成:池端隆史
キャラクタ原案:こたろう
キャラクタデザイン:神本兼利
制作:J.C.STAFF
話数:1クール全12話
OP:「浪漫ちっくストライク。」
by 鈴川小梅、小笠原晶子、川島乃枝、宗谷雪
(CV.伊藤かな恵、中原麻衣、植田佳奈、能登麻美子)
ED:「ユメ・ミル・ココロ」
by 伊藤かな恵
{/netabare}
■感想
原作ライトノベルは未読でDVDを視聴。ナックルボールをお見舞いする話。
世は大正末期 欧化の名の下に海外の文化が積極的に取り入れられていると思われる時代で、女性の社会進出も徐々にではあるが進んでいる模様。だが昔ながらの考え方はまだまだ根強く残っており、主人公の通う女学校でも袴姿とセーラー服が入り混じっているような、変革の過渡期と言えるような時代の物語。断定的に書かないのは、私にはこの時代に関する知識がなく、ツッコミを入れようにも歯切れ良くいかないのが理由である。
上記のような時代に生まれたセーラー服に憧れる鈴川小梅は、女学校に通う14歳の少女である。そんな小梅の女学校での親友の小笠原晶子が突然、「男子がすなるというアレ」をやると言い出し、小梅も強引に参加させられることに。断りのタイミングを伺いながらも悉く外してしまい、また晶子の気持ちに賛同する形となり深く関わっていく。
小梅の実家は麻布十番で洋食店を営む庶民の家庭で有るのに対し、晶子の実家はパーティを主宰したりする貴族の家庭である。洋食店を営むのが庶民なのか、庶民の娘にとってパーティという単語が理解できるのか引っかかるが、アレの用語は「よし」とか「だめ」ではなく現在と同じ単語が使用されている。まあそういう単語は敵国の言葉を話せない戦時下での苦肉の策だったが。
納豆屋が天秤を担ぐ姿、学校関係者が鐘を鳴らす姿が定番的に描かれており結末まで続くのかとも思われたが、余りにも長閑過ぎて白熱する話には合わなかったのか序盤だけだった。あと「おジャンでございます」+拍手という流れも該当するが、後半アレが多く描かれる事を考えれば減るのは仕方のないことかもしれない。
作中では現在で言う変化球を「魔球」と呼称しており、○ジャイアンツや○○狂の詩を観た人間としては、海老投げハイジャンプ大回転分身魔球やドリームボールを連想してしまうが、監督として登場する金髪女教師の口から、前者に関してはパロディとして言及される。しかしこの監督の問題は、素人を相手に本気を出し過ぎるところだ。
この世界にも注目すべきキャラが居た。武道が趣味というこのキャラは、自分から仲間に入れてくれというのは何か違うと、アレをする集団をずっと遠目に見ていた。監督の「球が見えていれば」の一言を侮辱と受け取り勝負を挑み、投げられたみかんを見事真二つにして己の動体視力を証明したのである。このキャラの何処に注目すべき点があるのか?それは彼女のお頭がかなり残念なのに対し、運動神経だけは無駄に優れているという点である。
試合で大振りを繰り返すのだが、聞けば「ホームランが打ちたいから」「ヒットはいつでも打てるから」らしいのだ。それを証明するために打席に立ち、晶子の投球ではあるが全て打ち返した。この、勉強は出来ないが鍛え抜かれた感性で高いパフォーマンスを発揮する辺りに私は魅力を感じる。
またこのキャラには「お姉さま」と彼女を慕う後輩が居る。女学校ということで挨拶が「御機嫌よう」だったり、皆が使う敬称が「さん」だったりと、まだ観た事のない「マリア様がみてる」を髣髴とさせる。更にこのキャラは、アレに興味があったわけではなく、小梅に対して並々ならぬ興味があったようだ。それほど濃い百合描写はないが、緩い百合が好きな方々には大好物だろう。
主人公小梅の父親は洋食店を営んではいるが、チャッキチャキの江戸っ子である。巻き舌で古い考え方が残るタイプなのに、よく娘を女学校に通わせようと考えたものである。そんな男を選んだ母親も芯がしっかりしているように見えるが、昔ながらの良妻賢母という雰囲気を纏った女性である。声優が久川綾と言えば想像できるだろう。
当の小梅自身は、とりわけ特徴のある女性でもないが、この作品に登場する唯一のりんごちゃんである。しかし、庶民の家庭に育った普通の娘を演出するために、無理にりんごちゃんにされてしまった感もある。
アレに関わるキャストは監督を含め10人居るが皆有名である。伊藤かな恵、中原麻衣、植田佳奈、能登麻美子、甲斐田裕子、喜多村英梨、広橋涼、牧野由依、後藤佐緒里、新井里美、マネージャー兼新聞部部長は藤村歩。本編での新井里美に毒はないが、番外編では黒子やキルミーのような演技が若干ながら見られる。
本作品はあの有名な「けいおん!」の後番組らしく、ネットには「大将野球娘キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !! 」なるスラングがあるらしい。その真意やスラングとしての意味はわからないが、もし本作品を揶揄するものなのであれば、個人的にはそう悲観するような作品でもないと否定したいと考える。確かに何でも自分達で考え、その行動全てが理に適っている辺りは腑に落ちないが、全12話という事を考えれば仕方のないことだろう。でも人力車(現在で言う俗称コンダラ)を使った特訓など面白い部分もあるし、晶子の投球フォームが所謂「女投げ」から投手らしい投げ方に成長する姿など、自信を持って人に奨められる作品だと思う。
■蛇足{netabare}
正式には「ナックルボールをお見舞いするぜ」だが、
HTMLタグを使えないこのレビューでは
イントネーションを伝えるのが難しい。
{/netabare}