「さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅(アニメ映画)」

総合得点
69.1
感想・評価
96
棚に入れた
430
ランキング
1907
★★★★☆ 3.9 (96)
物語
3.7
作画
3.8
声優
4.0
音楽
4.0
キャラ
3.9

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ネタバレ

雷撃隊 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

成長した鉄郎と成長できないメーテル

映画999は2本連続でDVDを再生するのが僕の基本。リアルタイムの人はこの映画は蛇足という人もいるが僕は最初から2本あることを知っていたので前・後編として素直に楽しめた。

キャラ紹介は映画1で済んでいるので今回はキャラ描写に幅と余裕が感じられる。前作ではメーテルやハーロックたち人生の先輩に助けられ、教えられてばかりだった鉄郎が本作ではチームの一員としてのびのびと活躍する。エメラルダスからは「鉄郎、メーテルを護るのは貴方の義務ですよ」と励まされる。対してメーテルは殆んど活躍せず鉄郎に護られてばかりで情けない。さながら鉄郎はお姫様を守護するナイトに成長した。

映画1では喋らなかった機関車さんも車掌さんとコントをやらかす。車掌さんもメインキャラに昇格して鉄郎たちとの絡みが増えた。今回車掌さんは終盤に人命救助に大活躍する。車掌さん、戦士ではないけれど列車と乗客を守りきった鉄道員の鑑にして漢である。

作画も大幅にレベルアップ、999号もアルカディア号も美しいぞ。CGとは違ったセル画の迫力満点だ。ラーメタルステーションでのメーテルの登場シーンは神レベルの作画だ。BGMとの相乗効果で涙腺が刺激される。999号がアンドロメダステーションに突入するシーンもSF映画していて神秘的。このアンドロメダ終着駅の美術ボードが原作コミックの最終回に使用されているので本作が原作の先行最終回ともいえるだろう。

主題歌「SAYONARA」はさながらメーテルのテーマ曲だろうか。洋楽だけど松本零士はクラシックや外国文学に詳しいのでよくマッチしている。この点が他の昭和アニメと違う点で独特の味わいだ。ちなみに前作の主題歌は鉄郎のテーマ曲だろうか・・・

ヤマトや999の松本キャラは僕にとって人生の先輩みたいな存在だ。しかしガキの頃は憧れのヒーローとして全ての言動に共感できたが流石に歳食うと斜に構えた見方になってしまう。あのハーロックですら「青臭いガキ」に見えてしまうこともしばしば。でもその甘っちょろさや優しい理想主義が彼らの人間的魅力なのは変わらない。少なくとも彼らは人として間違ったことは言っていない。「約束は守るべき」とか「限りある命は尊い」とか「人の心と尊厳を踏み躙る奴等はクズだ」とか確かに大切なモラルだ。しかし現実の世界情勢のニュースでは鉄郎たちが忌み嫌うクズ共が騙し合いや殺し合いを続けている。無人兵器の開発なんか本当に999の未来そのものでやるせない気分になる。

メーテルはいつまでも優柔不断で成長できない臆病な女性に思えてくる。使命ばかりでは前に進めない。鉄郎が欲しいなら自分にウソをつかずに素直になればいいのに「私は貴方の思い出に残れればそれでいい」なんて自分を殺してばかりで成長がない人だ。確かに重過ぎる罪を背負った女の典型だけど鉄郎は全てを受け止められる大きな男だから大丈夫だろう。この人、あと一歩が踏み出せないタイプなのだろう。そんなことを考えて見ていると松本作品は自分の感性の変化を測るツールにも成り得る。

しかし何時まで経っても変化しないものがある。それはカッコイイ乗り物パラダイスという点だ。いくつになってもヤマトやアルカディアはカッコイイし気高く美しい。歴戦の戦艦を従えて疾走する999は最高にイカシタ列車だ。TGVも新幹線も999の前では存在感が霞む。999よ、お前は宇宙で一番美しく尊い列車だ。

松本零士作品は自分にとって原点で、自分がガキの頃と比べてどう変わったか、或いは変わっていないかを確認するのに役立つ。おそらくジジイになっても見続けることだろう。

投稿 : 2015/06/22
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サンキュー:

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