しゅりー さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
在るようにあるだけ
2005年秋のアニメ。漫画原作。
江戸時代のような世界観の中で、世界の様々なところに
存在する怪異のような存在、「蟲」。
その蟲を研究して旅をしている蟲師、ギンコの視点で描かれる
連作短編の物語です。
水墨画のような深い霧に囲われた山々や曇り空の目立つ海辺の寒村など
寂寥感の漂う独特の風景の中で、蟲と出会った人々の人生に
ギンコが関わる事で物語が進行します。
話の冒頭や終わり頃に入る土井美加さんの怪しげなナレーション。
ギンコの淡白な語り口や各話の登場人物のモノローグ時の静的な絵の見せ方。
少ない音で動と静を表現する独特の音楽など様々な要素が合わさって
アニメの中で絶妙な世界観を創り出しています。
このアニメに出てくる蟲という存在の多くは表情のない存在で、
ウネウネと気色の悪い動きをしますので合わない人には観辛いかもしれません。
個人的には「ただそこに在るだけ」であると強調される存在感が魅力的に思えました。
蟲師にとっても全容がわからず、得体の知れない蟲。
人間にとって都合が良い時もあり、災厄をもたらすこともある。
完全に受け入れることは難しく、焼き払って消滅させることも出来ない。
大切なのはどういう距離感で、どういう折り合いをつけていくか。
物事をはっきりさせたい人には不満が残りそうですが、
この「折り合いをつける」という感覚は万物に適用出来そうで
頭の片隅には置いておきたい感覚だと思えます。
上記の通り「そこに在る蟲」とどうにか「折り合いをつける」話なので
完全なハッピーエンドやバッドエンドにはなりません。
それでもしっかり視聴後に感慨に浸る余韻を与えてくれる
おもしろい作風のアニメだと思えました。
こういったジャンルのアニメに興味のある方には
1話だけでも鑑賞してほしいと愚考します。