ムッツリーニ さんの感想・評価
4.4
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
不思議の国のアリス:終末版
遥か未来――いや、もしかしたらすぐそこまで来ているかもしれない未来。
既に人類は種としての役目を終え、「妖精さん」と呼ばれる新たな人類に未来を託し、ゆるやかな衰退の道を辿っていた。
これは、そんな時代に生きたある一人の女性が残した報告書を元に描いた、恐ろしくも穏やかで、悲しくも優しい物語。
物語は不思議の国のアリスを捻ったような仕立てで、1話1話が一冊の絵本のよう。
一つ一つの話もまるで乱雑に並んだ本棚から適当に引きぬいたように取り留めが無く、時系列も滅茶苦茶。なんだこれと思いつつ、しかし視聴を終えてみると、それがこの作品の無垢ないい加減さを引き立てているようにも思える。
しかし、主人公である「私」がドライな捻くれ者であることと、妖精さん達の可愛らしく無邪気でリアリスティックな言動も相まって、ただの不思議なファンタジーに落ち切らず、やっていることは表面的にはポップで可愛らしくありながら、その実皮肉たっぷりのブラックジョークめいた非道な行いとその顛末という二面性をもっている、というのは日本昔話やグリム童話に通じる物がある。
そういった物語が好きな方は、手にとって損はないでしょう。
ところで、目下疑問に思うであろう「妖精さんとは何であるか」については、結局明らかにされない。原作の最終話では「ある種の気付き」のような形で一応の回答は得られるのだが、それは原作を読んでのお楽しみ、ということで。