どらむろ さんの感想・評価

4.3
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態：観終わった

個性派の大人達が生暖かく見守る、淡い青春恋愛物。下品で騒々しいように見えて意外と繊細

「恋愛ラボ」の宮原るり先生の漫画が原作のラブコメディー。全12話。
無口で本の虫な先輩美少女と、彼女に惚れている後輩少年が一つ屋根の下(下宿)に…
本以外関心の薄い先輩に、健気にアタックする少年という微笑ましいラブコメディー。
…なのですが。下宿には一癖も二癖もある大人達も居て、純情な二人(主に主人公)はドタバタ騒ぎに翻弄されていく…。

下宿「河合荘」のアットホームな雰囲気と、もどかしいラブコメが魅力です。
多少のシモネタ(セリフのみ)あったり、生々しい感情描写もありますが、周囲の大人のフォローのお陰か安心感あります。
…シモネタ極度にニガテ、またはきちんと進展するラブコメが好みの人には合わないかも。
問題無ければ2014年度のラブコメアニメ屈指の良作です。

{netabare}『物語』
憧れの美少女と一つ屋根の下に…
一見王道ありがちなラブコメ、かと思いきや、超が付く程の個性派の大人達のせいで、非常に騒がしいコメディーな感じでした。
…騒がしい一方で、同時にとても繊細な青春ラブコメディーでもあり。
この騒々しさと繊細さの絶妙な両立が、本作特有の魅力でした。

コメディー面では、シモネタ上等な面もありますが、特に不快な程ではなかったです。
下品さも、そこがむしろ親しみ易さと同居人としての家族的な繋がりを感じさせる意味で、悪くは無いと思ったです。
家族だからこそ、遠慮なく言い合える。そんな河合荘の関係性が好きです。
やり過ぎても、ちゃんと管理人さんが止めてくれますしｗ

宇佐くんの忙しいツッコミは、コメディー的には若干苦しい面も。
最も彼はツッコミが本職じゃないだろうし仕方がない。
私的に、ギャグはそこそこ笑えれば良く、本筋は二人の清純なラブコメが引っかき回される様を、ニヤニヤと生暖かく見守るのが楽しいと思いました。

やたら鬱陶しい大人達が居なければ、終始もどかしいラブコメ未満を延々見せられるだけだったろうし(それはそれで観てみたい気もしますが)、故に本作の構図は独特な青春ラブコメディーとして非常に面白かったです。

また、人間関係や感情面で結構生々しい展開と、くせ者だが頼れる大人の助力で解決していく流れも爽快感あり。
律とは別ベクトルの「本好き」(律のような真摯な読書家とは相容れない)前村ちゃんの、悪気は無かったけれどすれ違ってしまうエピソードはかなり緊張感孕んでいたけれど、きちんと真摯に向き合って互いの理解深めていけたのが好印象でした。
※かなり余談になりますが。
「俺ガイル」の八幡が得意そうなトラブルでした。
本作の方が正攻法できちんと向き合えていたのは、河合荘住人という「大人」の存在感が大きいです。
人生経験豊富な大人のサポート受けて、真っ直ぐに成長できる。
この安定感あればこその、生々しい展開多少あっても、清々さもあったのかも。

…ラブコメは中々進展しないのでもどかしくもあり、けれどそこが微笑ましい。
本を通してほんの少しずつ互いの気持ちが近づいていく二人の距離感が、とてもステキでした。
1クールあっという間。この二人のラブコメをまだまだ見ていたいと思わせてくれる、温かみのある青春ラブコメディーでした。


『作画』
明度が高く透明感のある、アニメでは珍しいタイプの色使い。
キャラ作画(律ちゃん)が非常に可愛く、表情の繊細な変化も魅力的。
単に可愛いだけでなく、「美少女」と呼びたくなる綺麗さ。
無口無表情系の律ちゃんの感情の動きがしっかり伝わるのは作画(と花澤香菜さん)のお陰でしょう。
また背景もかなり良く、河合荘の描写や風景も魅力あり。
本作の一見乱雑なように見せて実は繊細な作風を、見事に表現していました。

『声優』
律ちゃんの花澤香菜さんが素晴らしいです。
無口クール…と見せて不器用系、感情は意外に豊かという難しいキャラを非常に上手く好演されてました。

宇佐くんの井口祐一さんも、ツッコミは苦しい面もありましたが、清純な少年を好演されました。
はまり役だったのでは。

シロさんの四宮豪さんもかなり上手い。割とベテラン、シロさんの変態的キャラがかなりハマってました。

麻弓さんの佐藤利奈さんも素晴らしく本領発揮してました。なんたる強烈なお姉様か！
彩花さんの金元寿子さんもゲス可愛いクセ者っぷりを発揮。意外と絶妙なハマりっぷり。
金元さんと花澤さん、「琴浦さん」とは清純ヒロインとクセ者先輩ポジが完全に逆転しているのが面白いｗ
ついでに彩花さんの悪友ツネコの諏訪彩花さんも。
「悪魔のリドル」とはガラリと関係性変わっててやはり面白いｗ
…な感じで、声優さんの演技の幅って凄いなー、と思ったり。

住子さんの小林早苗さんのカリスマ管理人さんっぷりも意外な好演でした。
緑川光さんと近藤隆さんの先輩キャラも良し。

全般に非常にハマっていたように思えました。

『音楽』
OP、ED共に雰囲気バッチリの良曲。綺麗な動画も相まって非常にステキな感じでした。
BGMも良い雰囲気です。

『キャラ』
河合荘住人の個性がバツグンのインパクトでした。
真正のドМな変態だがそれ以外はかなり頼れる人格者だったシロさん
本作が一筋縄で清純ラブコメにさせない張本人な困ったお姉さん、麻弓さん
原黒女子大生で麻弓さんとの相乗効果で波乱巻き起こす彩花さん
…そして、彼女らの暴走のストッパーとして君臨する老婦人、住子さん
住子さんが茶目っ気と包容力備えたステキな女性で、そのお陰でクセ者揃いでもアットホームな雰囲気になっているのが凄い。

主人公・宇佐くんの苦労性っぷりはハンパ無かった…
この手の主人公には珍しく対人能力高く、清純だが律先輩に積極的に近付こうと努力するのが好感持てる。
…何気にハイスペック主人公、河合荘住人の妨害さえ無ければ、割と順調にラブコメ出来たハズ。
それだとお話すぐ終わるので散々ちょっかい出されてしまう！
応援したくなるラブコメ主人公です！

律ちゃんは無口不器用系読書少女で非常に可愛い。
ありがちな不器用系ではなく、ちゃんと喜怒哀楽はっきりしているのが可愛い。
周囲のドタバタが、彼女の繊細な可愛さ引き立てる…
宇佐君と共に、少しずつ着実に成長が見られるのも良いです。

千夏ちゃんも可愛かった。やっぱり小学生は最高だぜ！
前村ちゃんも視聴者視点ではイラッと来るが、決して悪い子ではあるまい。

多少善意じゃないキャラも居ますが、あまりイヤな雰囲気にならずに済んでいるのも、本作の「一見下品で騒々しいけれど、実は家族的な繋がり、絶妙なラインで本音出し合える関係性」のお陰でしょう。
不思議な感じです。
キャラクターのお陰で、不思議と爽やかなアニメでした。{/netabare}