STONE さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
よくこなれた印象の作品
原作は未読。
近世風のファンタジーで、ストーリー的にはガズ皇帝の遺体を集めるチャイカ・トラバント
(以後白チャイカと表記)と、それを手伝うことになるトール・アキュラ、アカリ・アキュラの
一行の冒険譚を軸に、途中から白チャイカを追うアルベリック・ジレット一行、次々と現れる
別のチャイカといった具合に話が膨らんでいく。
更に白チャイカ自身が本人も知らぬ謎の部分が多分にあり、その謎を巡るミステリー要素も
加味。
この展開だが、話を広げすぎず、伏線を盛りすぎずといった感じで、非常に按配が良い
印象で、話に無理を感じるようなことが少なく、いたずらなストレスを感じることもなかった。
テンポ感は割と早い印象だったが、じっくり見せるタイプの作品ではないため、これで
いいかなといった感じ。
締めも今後の波乱を感じさせる要素を多分に見せ、2期(分割2クール後半?)への期待を
抱かせるうまい終わり方。
絵のタッチが比較的ソフトであったために押さえられた感があるが、序盤からユニコーンが
内蔵を露わにしたり、終盤の航天要塞内での血だらけの逆さ吊りの少女など、結構グロい
シーンもあったりする。
元々、こういった部分に抵抗がないからかもしれないが、ストーリー上必要なら変に回避する
ことなく、ちゃんと描いてくれる姿勢は嬉しい。
白チャイカだが、まず棺桶を背負っている姿と、チャイカ語とも言うべき接続詞を排除した
独特の話し方が印象的。
「棺桶の中に武器(ガンド)が収納」というと、自分などはマカロニウエスタンのDjango
(邦題「続・荒野の用心棒」)を思い出してしまうが、あれは棺桶という忌物を持たせることで
主人公にダーティーなイメージを与えたり、主人公の回りに死体が絶えないという暗喩的な
ものだと思っているけど、こちらは集めた遺体を収納するための棺桶ということで、設定的にも
理に叶っているのかな。
しかし、徐々に遺体が集まってくるわけだが、それを入れた棺桶を少女が担ぐという図式は
「重くないのか?」といたずらな心配をしてしまった。
この白チャイカを助けるトールとアカリだが、サバターという独特の職業の戦い方や理念が
なかなか印象的だった。
サバターという存在は戦国期の忍者を思わせるものがあるが、単に忍者イメージを引用した
だけではなく、ちょっと捻ってあるのが面白い。
序盤は仕事として雇い主の依頼に従うという行動原理のトールが、やっていることこそ
変わらないものの、白チャイカ自体に心を寄せていくようになる心情の変化が興味深い。
他にも職業柄、戦乱を望むようでいて、リカルド・ガヴァーニのような存在には共感
できなかったり、行動や判断が冷たいようでいて、結果的には情に厚い行動を取っていたりと、
白黒で割り切れない味のあるキャラ。
劇中でも「サバターに不向き」と言われていたが、本来は喜怒哀楽が激しく、優しい性格で
ありながら、サバターという枠に自分をはめていたのかな。
この白チャイカ、トール、アカリの日常における噛み合っているのか、合っていないか、
よく判らない会話もなかなか楽しい。
そして、4番目に加わったフレドリカ。キャラ自体は魅力的だったが、メタ的には少々持て
余し気味だったかなという印象で、彼女が本格的に協力するとその高い戦闘能力ゆえに
白チャイカ一行が一気にチート化しそうで、他陣営とのパワーバランスを崩しかねない。
そのためか自身の性格を気まぐれにしたり、不意打ちを食らって行動できなくしたりと、
展開的には扱いに苦労していたみたい。
他のキャラに関しては、ストーリーに沿った絞り込んだものになっている感じで、無駄に
出したキャラが少ないのがいい。
各キャラの行動や思考だが、他作品ではストーリー展開のために当初の設定を無視して、
ぶれてくるキャラがいたりすることもあるが、本作は皆がそのキャラらしい行動思考するため、
味方にしろ、敵にしろ割と好感が持てるものだった。
他では見られない設定、予想外の展開、斬新な演出、強烈なインパクトのキャラ、超絶な
作画・・・、といったような先鋭的な部分はなかったけど、各要素のレベルが割と高い印象で、
非常に安定感を感じた作品。