OZ さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
競技かるたの知名度を上げた文科系青春スポーツアニメ
原作の漫画は読んでいないが
オススメして頂いたので観てみる事にした
2011秋~2012冬に掛けての2クール作品
■競技かるたの知名度を上げた文科系青春スポーツアニメ■
百人一首を用いた競技かるたを題材に
友情だけじゃなくほんのり恋愛も描かれた
文科系青春スポーツ作品『ちはやふる』
そもそも「競技かるたってどういうものなの?」と
お正月の風物詩くらいにしか認識しておらず
普段なかなか耳にしないのもあるが
プロのいないマイナー競技なので
存在自体をよく知らない人も多いだろう。
だが 知らなくとも
説明口調にならない程度の台詞を交え
「なるほど!こういうものなのか!!」なんて
観ているだけで伝わってくるのだ。
この"分かり易さ"が非常に優れており
地味な競技でありながら興味を抱かせてくれ
経験者は勿論のこと未経験者にも優しく
入り込み易い構成は見事である。
肝心のストーリーだが
真面目もあればコメディもありとバランスが良く
少女漫画原作と言えど
中身は思いっきり少年漫画の様な
"友情 努力 勝利"を盛り込んだ
ド真ん中を行く熱血展開だ。
だからと言って ただかるたに打ち込むだけでなく
微かに仄めかされる恋愛描写も見所の一つ。
加えて嫉妬 後悔 焦燥 畏怖等の
様々な心情描写が巧みであり
展開も然る事ながら
各キャラクターの成長を追っていけるのが
本作品のもっとも大きな魅力である。
これといった弱点はないけれど
強いて挙げるとするならば
扱っている題材が競技かるたと馴染み深くないだけに
どれだけ視聴前に興味を引けるかくらいだろう。
実際 オススメして頂かなかったら
手に取る事はなかったかもしれないので
1番の壁は"作品に興味を持てるか"が鍵となりそうだ。
ただのかるたと侮る事なかれ
競技かるたの知名度を上げるのに大きく貢献した
老若男女問わずに楽しめるであろう
熱いけれど爽やかさの薫る作品である。
■大人の存在■
色々な作品を観ていると感じる事だが
容姿は仕方ないにしても
歳相応に見えない幼い性格をした
子供又は学生の様な大人キャラクターを目にする機会は多い。
確かにそれも一つの個性ではあるのだけれど
本作品が高評価に繋がった理由は
かるた部顧問の宮内先生や
千早と太一が所属するかるた会 白波会の原田先生等
"大人が大人として描かれている"点である。
中でも原田先生の言葉は核心を突くものが多く
第23話「しろきをみればよぞふけにける」にて
ユーミンこと山本 由美に敗れ
茫然自失となり礼を怠ってしまった千早に
「千早ちゃん さっき試合の後 きちんと礼をしなかったね
いけないよ どんなに悔しくても礼を大事にしなさい」
静かな口調で叱責する場面がある。
技術を教えるのは師なので当然ではあるが
誤った行動をとれば叱り
ちゃんと心構えを説いてくれる
良き指導者として大人達が描かれているのだ。
歳を重ねた大人をしっかり描いているからこそ
積んできた経験からの言葉が重みを増し
高校生の若さや未熟さと対比して
今まさに成長過程にいるのが伝わってくるのである。
物語を引きたて
千早達高校生を輝かせているのは
彼等大人達の存在があってと言えるだろう。
■友でありライバルである関係■
振り返ると心を熱くさせる名場面が多かった本作品。
挙げたいシーンは沢山あるけれど
もっとも感情を揺さぶられたのは
第15話「つらぬきとめぬたまぞちりける」だ。
千早がクイーンに敗れた一方で始まったB級決勝戦
一進一退の勝負を繰り広げる太一だが
試合が進むにつれ体力の限界から
頭では理解していても思う様に腕を動かす事が出来ず
善戦するものの結果は惜敗で準優勝
「相手は藤崎の3年 3枚差までよくやった 準優勝だ 十分だ・・・」
負けを納得させるかの様 自身に言い聞かせる太一
すぐさま気持ちを切り返して
応援してくれたかるた部面々の方に笑みを浮かべてみせるが
絵に描いたようなガッカリっぷりに反対に驚いてしまう
千早 机くん かなちゃん
それぞれが悔し涙を流す中
一人グッと手を握り締め
全身から悔しさを絞り出す様に
「・・・悔しいっ・・・」
震える声で呟いたのは肉まんくんであった
思えば彼はB級に昇格してからなかなか優勝出来ず
A級に上がれない辛さを身を以って知っているからなのだろう
「悔しいよな 準優勝が 一番悔しいっ・・・」
幼い頃 新に敗れて優勝を逃した
苦い記憶が脳裏をかすめているからなのか
自身の事の様に涙を流す肉まんくん
「泣くな 俺はまだ泣いていい程 賭けてない 悔しいだけでいい」
抑えていた感情がじわじわと込み上げてくる太一だが
目に涙を浮かべるものの決して頬を伝う事はなく
まだ頑張っていないと自らを戒める
そんな彼等を見てかるた部 顧問の宮内先生は
「負けと向き合うのは大人になっても難しい」
そう心の内で見守るのである
確かに子供であろうが大人であろうが
負けを受け入れる事は出来たとしても
正面から向き合うのはなかなか難しいものだ。
太一と肉まんくん
友として同じ部の仲間として
互いを競い高め合うライバル関係の二人に感動してしまい
この場面がハイライトになりました。
■あとがき■
実は本作品を視聴するにあたり
「『ちはやふる』を観ていないなんて人生損している」と言われ
大袈裟だなーなんて軽い気持ちで観始めましたが
予想以上に全25話を楽しめたので
確かに損していた気持ちにさせられました(笑)
地味な競技ではあるし当然簡単ではないのだけれど
「ちょっと競技かるたをやってみたいかも」って
感じさせてくれて最後まで見応えがあったよ。
お気に入りの男性キャラクターは「肉まんくん」こと西田 優征だね。
幼少期の序盤で初登場した時は
一介のモブキャラ程度だと甘く観ていたが
高校生となって再度登場し
彼がかるた部へ入部してから以降一気に面白くなっていったな。
女性キャラクターでは
ファッションセンスがダサかわな現クイーンの若宮 詩暢。
第15話で千早に「スノー丸のTシャツ可愛いですね」と話し掛けられた直後
驚きながらも頬を赤らめる姿に萌えたね。
クイーンの時とは異なる素の表情が魅力的でした。
余談ですが一昔前に「ツンデレカルタ」なるモノがありまして
声優の釘宮 理恵さんが読み上げる
音声CDの付いたかるたがありました。
【か】で始まれば
「勘違いしないでよね 別にあんたのためにやったわけじゃないんだから」や
【し】で始まれば
「し、心配なんてしてないんだからね!」等
次々とテンプレ通りのツンデレ台詞が読み上げられる中
一際インパクトが強かったのは【ら】
「ラーメン伸びるわよ はやく食べなさいよ!
えっふぅふぅしてくれ?ばかぁー」
・・・これには思わず堪えきれなかったよ(笑)
なかなか触れる機会は無いと思いますが
アニメ好きな方達と何時の日か一緒に興じてみたいものです。
さて 若干話が逸れてしまいましたが
2期も引き続き期待してしまいたくなる程
熱くなれて刺激をもらえる作品でした。
今後 千早 太一 新の3人はどこまで登り詰めるのか?
また それぞれの恋心はどうなっていくのだろうか??
まだまだ『ちはやふる』の序歌は詠まれ始めたばかりである。
満足度 ★★★★★★★★☆☆ (8)