westkage。 さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
題材は非常に斬新ではあるが肝心の経営に関する描写が不足しており、強烈な個性を持つ登場キャラクターに助けられている感の否めない作品☆
本作は賀東招二のライトノベルを原作とした作品です。2014年10月から12月にかけて、全13話で放映されました。賀東招二は有名作「フルメタルパニック」の原作者としても知られており、本作のアニメ化にも監修として参加している。アニメ化に伴い原作とはいくつか設定を変えているのが特徴です。大きな改編としては、舞台のテーマパークの来場者数の期限が「2週間で10万人(原作)」という課題から「3か月で25万人(アニメ)」となっている事、総支配人のラティファが盲目である設定が無くなっている事…などが挙げられます。
あらすじ・主人公‘可児江西也’は頭脳明晰で身体能力も優秀な高校生。以前芸能界で子役タレント活動をするほどルックスも良いが、極度のナルシストのため友達が少ない。ある日、転校してきたばかりのヒロイン‘千斗いすず’に一緒にテーマパークに行こうと銃で脅される。仕方なく訪れたテーマパーク、甘城ブリリアントパークは来場者数も少ない寂れた遊園地だった。いすずは訳あってここの支配人代行を務めており、西也を総支配人の‘ラティファ・フルーランザ’に引き合わせる。聞けばこのテーマパークは「魔法の国メープルランド」の従業員がほとんどを占めており、来場者からの「楽しい気持ち」をエネルギーに変換する事で存在を維持しているという。しかしこのテーマパークは極度の経営難に陥っており、あと3カ月で25万人を動員しなければパークを閉鎖する危機が迫っていた。ラティファは西也に支配人になり、この甘城ブリリアントパークを立て直してほしいと懇願する。あまりの現実ばなれした話の連続に西也は半信半疑だったが、ラティファに相手の心を読む魔法を与えられ事実だと認識する。そしてブリリアントパークの支配人として、経営に携わっていく日々が始まる…といった感じです。
実はこの作品、視聴前から「テーマパークを題材とした日常系もしくは経営を立て直す系のお話だろう」とあたりを付けていたので敬遠していた作品でした。視聴前もどうせ1話切りだろうと予想していましたが、まさかのファンタジー展開が入ったので「テーマパークの経営に魔法などを取り入れて、面白おかしく再建していくのか。面白そうだな」と感じて視聴を続ける事にしました。
総評として「題材は非常に斬新ではあるが肝心の経営に関する描写が不足しており、単に強烈な個性を持つ登場キャラクターに助けられている感の否めないギャグアニメ」という所です。主人公のスペックが高い所から「カッコよく経営を立て直す姿」を連想した視聴者も多いのでは?と感じますが、実際経営に関するお話はほとんど力任せの解決方法でギャグアニメだから許されるギリギリの許容範囲。真剣にテーマパークの経営に関する話として視聴すると論外です。
私は3話の辺りからギャグアニメとして頭を切り替えて視聴する事で‘楽しむ’事は出来ました。これも強烈な個性ある登場人物あっての事でしょう。登場する女性キャラクターは皆可愛くて好感が持てます。また着ぐるみ姿に見えるメープルランドの妖精?達も、ギャグ担当として大いに笑わせてくれます。もし視聴を検討されている人がいれば、ギャグアニメだと心構えをして視聴を始めると良いかもしれません。
ただ繰り返すようですが非常に残念な点としては、折角の斬新な設定に関わらずもテーマパークの経営に関する話が非常に雑で見るに堪えないという点。テーマパークの経営学に関する知識をもっと取り入れてから制作にあたれば、もっと内容も充実した良アニメになった予感もします。
*以下はネタバレになりますので、閲覧は注意して下さい。
{netabare}
3話で「入場料・施設利用料を全て無料にする!」と主人公が発言した時点で、この作品のマジメ展開は断念しました。本当に頭脳明晰の設定が必要だったのか、疑問です。スタッフに諌められて30円にはしたものの、テーマパークの運営には莫大な運営費用が掛かる事は想像に難くないと思います。特に「人件費・光熱費」に関しては負担も大きく、有名なディズニーランドの1日の電気代は1000万円。中規模の遊園地でも200万前後はかかると言われています。物語中盤からナイター営業も始めているので、いくら小規模遊園地だからと言って低く見積もっても50~100万くらいでしょう。テーマパークの外食は基本価格設定が高いですがブリリアントパークではコロッケを販売するなど、飲食における客単価にも力を入れていません。12話でスタッフが総集合して打ち上げするシーンがありますが、ざっと見ただけでも100~150人のスタッフが居ます。そんな運営で果たして成り立つでしょうか?少し考えただけでも破たんしますよねw
実は日本に乗り物が1回50円~100円の遊園地が存在します。「刈谷ハイウェイオアシス」という所ですが、こちらは遊園地だけでは無く天然温泉やショッピング施設なども入った総合テーマパークです。年間入場者数が830万人という、ディズニーランドやユニバーサルスタジオジャパンの入場者数に次ぐ日本第3位のテーマパーク。経営スタイルは「長く繰り返し来場して頂くために、安い単価で勝負する」という方針の施設ですが、この動員数をもってしても収益としては微妙な所のようですね。
あとサッカーの大会を招致するに当たっての営業活動ですが、心を読む必要ありました?最初から条件を提示しておけば誰でも話をまとめることが出来るような好条件でしたよねw
アニメにそこまでリアリティを求められても…という意見もあるかと思いますが、昨今のアニメは進化し続けており視聴者はみな目も肥えています。私以外にも同じ考えを持った方は多いのではないでしょうか?結論としては十分楽しませていただきましたが、非常に惜しいと言わせて頂きます。
{/netabare}
指摘する部分が非常に多い作品ですが、今回に関しては「作品への愛着」のような気持ちも自分の中に確かに存在するのを感じます。キャラクターが非常に魅力的で作品の気に入っている部分がキチンとあるからこそ厳しい意見も出てくる。そういう気持ちが溢れてくるような作品でした。