どらむろ さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
宇宙世紀ガンダムの外伝、不朽の名作。正統なる1.5作目、ガンダムファン必見!
機動戦士ガンダムと、機動戦士Zガンダムの間の(作中時間で)7年間の空白を埋める全13話のストーリー。
当時としては、いや現在でも十分抜きん出たクオリティー!
正に宇宙世紀ガンダムの正統な1.5作目なので、ガンダムファンならば(好むと好まざるとに関わらず)必修科目ではないでしょうか。
※あにこれで既に熱意ある良レビュー多数ありますが、私なりに所感を書きてみます。
思想の是非とカッコよさは別物なのと、悪女の意義についての2点を重視してレビューします。
{netabare}『物語』
宇宙世紀ガンダムの外伝作品の一角ですが、他外伝と違い、明確に1年戦争(機動戦士ガンダム)~グリプス戦役(機動戦士Zガンダム)の間の出来事を補完したストーリーなので、ガンダムをしっかり理解する為にも必見です。
…とはいえ、本作単独でも十分すぎる程に面白いです。
「二つの陣営で争っている」
「主人公コウ・ウラキは連邦軍、ライバルのアナベル・ガトーはデラーズフリートに所属」
ガトー達は負けた祖国の為にテロやろうとしている、コウ達は阻止するべく追撃戦やってる。
…辺りを押さえておけば、仮にガンダム本編うろ覚えでも、単独でも楽しめるのでは。
詳しい事情は、熱心なガンダムファンならば言わずもがなですし。
最前線の兵士達の硬派な物語です。
新米パイロットのウラキが、ベテランのガトーに初め圧倒されつつも成長、互角以上に激闘繰り広げるまでに。成長物語としても熱いです。
ウラキ「僕だってパイロットだ!」
ガトー「その心意気や良し!だが私を敵に回すには君はまだ、未熟!」
序盤のこの二人のやりとりが超カッコイイ!
ウラキは序盤は「ニンジンいらないよ!」と食わず嫌いする頼りない少年でしたが…
その後ウラキは一癖も二癖もあるが頼れる仲間達と共に奮闘。
ガトーも志高きデラーズフリートの理想に殉ずるべく命を燃やす。
デラーズフリートではないが志を共にする同志達の生き様もカッコイイ。
…イデオロギーは違えど、信念に準ずる武人の活躍は、理屈抜きに憧れてしまいます。
※本作の評価が割れる要因、デラーズフリートの思想の是非について。
個人的には彼らは間違っていると思います。悪、と言わざるを得ない。
だが。
思想の是非とは無関係に、彼らの生き様自体がカッコイイとも思う。
日本人の、判官贔屓といいますか。
例え悪の集団であっても、誇りと信念に準じて散っていく戦士は応援したくなる。
あまり適切じゃない例えかもですが…
新選組ファンは多い(私も好き)けれど、別に彼らの佐幕を支持しているのとは無関係でしょう。
ルーデルやカリウス(第二次大戦で活躍したドイツの英雄)をカッコイイと思う人も、決してナチス支持してる訳ではあるまい。
…そしてアニメ(それ以外の物語でも)はフィクションなのだし、思想の是非は度外視しても良いんじゃないかな。
ガトー達の大義を否定する事と、ガトー達をカッコイイと思う感情は、矛盾しないと思うのです。
そのような視点で…
ウラキ達の地球連邦も腐敗していて決して正義の味方ではない、ガトー達デラーズフリートも狂信的テロリストで悪、だけど大義を信じるという多面的な見方こそがガンダムシリーズの魅力なのだ!
…というのもその通りなのでしょうけれど。
私は、そこはあまり重視してないです。
本作は前線で命を懸ける戦士たちの物語。
ウラキとガトーは激戦繰り広げますが、決して互いの信念押し付け合っていたワケではない点も注目。
普通のガンダムだと戦闘中に演説合戦しがちなのですが…本作はそれしないのも好印象。
正義とか関係なく、両者の生き様を純粋に見せてくれました。
…この他。
ニナ・パープルトンとのラブコメ要素もあり。
こちらは…かなりほろ苦い(苦々しい?)展開でした。
まあガンダムシリーズのお約束的な「男は思想に、女は感情に」なんですかね。
是非はともかく、感情で動いていく物語もまた、決して悪くはないです。
シーマ様「私は故あれば裏切るのさ!」
男達が信念を掛けて命削り合う馬鹿馬鹿しい戦争を尻目に、女がかき回す。
これもまたガンダムらしさなのでは。
本作はシリーズ屈指の硬派な男達、の戦争なのですが、同時に悪女二人の存在感により、一層深みが増している気がします。
終盤の盛り上がりも素晴らしい。
成長を遂げたウラキと、信念に燃えるガトーとのラストバトルは圧巻!
徹頭徹尾、手に汗握るバトルやりつつ、ラストは戦士たちの戦いにちゃんと決着付けている。
総じて
TV版も含め、宇宙世紀ガンダムの最高峰だと思います。
評判の悪い悪女ニナの存在も含めて、評価したいです。
『作画』
当時としては破格のクオリティー。
無論現在からすると古い面はありますが、メカデザインやバトルの迫力は色褪せていない。
デンドロビウムやノイエ・ジールかっこいいのは勿論、ドラッツェも好き。
戦闘は、手に汗握る名場面の連続です。
『声優』
コウ・ウラキは堀川亮さん。ドラゴンボールのベジータ、聖闘士星矢のアンドロメダ駿と並び、堀川さん三大キャラなのでは。
未熟な少年兵から成長していく熱演でした。
アナベル・ガトーの大塚明夫さんの熱演も圧巻!
「ソロモンよ!私は帰ってきたァ!」
大塚明夫さんで真っ先にガトー挙げる人も多いのでは!?
私的に大塚さんの代名詞に近いです。
このお二人特に大塚明夫さんをもって最高評価しかあり得ない。
大塚明夫さんの父上、故・大塚周夫さんのシナプス艦長もいぶし銀。
ニナ・パープルトンの佐久間レイさんもよかった。
熱演名演揃いで素晴らしいです。
『音楽』
前半後半のOPとED4曲共に素晴らしい名曲揃い。
特に前期OP「THE WINNER」が好きで、カラオケ行けば必ずチョイスしてます♪
BGMも素晴らしい。手に汗握るバトルを盛り上げるに十分です。
『キャラ』
本作を代表するキャラ一人挙げろと言われれば、やはりアナベル・ガトーでしょうか。
信念に殉じて命を懸ける、武人の鑑。
思想の是非はともかく、とにかくカッコイイんです!
…実は25歳。意外と若い!
貫禄凄過ぎてもっと年配かと思ってましたw
コウ・ウラキも、ニュータイプみたいな異能に頼らぬ良き主人公でした。
グングン成長していく主人公好き。
「ニンジンいらないよ」
は妙に有名なセリフで、未だにニコニコ動画の他アニメでニンジン登場する度にネタにされてますw
※最近だと「レーカン」8話で入院中の少年がニンジン除いてるシーンでウラキ少尉湧いてましたw
連邦・ジオン残党双方に魅力的なキャラ多数。
いぶし銀のベテランなバニング大尉、その部下達も歴戦の兵揃い。
シナプス艦長は理想の指揮官でした。ビッター少将も理想の名将。
デラーズ閣下はレーニンっぽかった。
ガトーの盟友カリウスも、ガトーにヒケを取らぬ武人でした。
ウラキとの交流から対決の流れも、切なくも燃える。
(ガトーがシャアポジなら、カリウスはランバラルポジかな?)
また、連邦の高官も面白い。コーウェン少将も勿論のこと…
ワイアット中将も無能な印象持たれているかもだけど、人物的には味があります。
シーマとのやりとりは中々クセ物っぽいし、シーマからの評価も悪くない。
奇襲に対し的確で迅速な指示出してたり、意外に有能な印象あります。
…そして本作の重要な悪女二人も外せない。
ニナ・パープルトンは「宇宙世紀ガンダム三大悪女」の一人という不名誉なヒロインです。
{netabare}ウラキと恋仲だったのが、ガトーに乗り換えて裏切る。「私のガンダムが!」等の頭おかしい発言の数々。
※余談だがスクウェアのRPG「バハムートラグーン」のヨヨ姫が蛇蝎の如く嫌われているのと似た理由か。
…憶測だけど、時期的にニナが先輩なので、ガンダム0083の影響があったのかも?と根拠の無い邪推してしまいますw{/etabare}
※「白銀の意思アルジェボルン」のジェイミーちゃん見たとき、ニナ彷彿としました(主人公機担当のエンジニアで恋仲)が、ジェイミーちゃんは良い子でホッとしましたw
もう一人の、シーマ・ガラハウも外せない。
ジオン残党側の女性指揮官、年増だが美女、純粋に義に殉じる男達とは違い、打算で動く狡猾な女…
でも、彼女の抱える複雑な感情が、本作を単なる男たちの戦争バカとは違った視点見せてくれるという意味で、大事だった。
ニナとシーマ、二人の悪女により、ウラキやガトーの純粋な男たちのドラマが汚された面も否めないけれど。
だが。
彼女たちにも強烈な魅力を感じます。
彼女たちが居なければ、本作は名作とまではならなかった気がします。
一方で純粋な武人たちの生き様、一方で感情と打算の女たち、その裏で上層部の腐敗…
いくつもの視点で重層的に描かれるキャラクター達だからこそ、面白い!{/netabare}