ふりーだむ さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
これだよ、これなんだよっ!これだからアニメはやめらんねーんだよっ!
一人の少女は幼き日に見た、幼いピアニストに憧れた。中学3年の夏、一つの決心を胸に秘め、その少女は成長した幼きピアニストに春に再会し、「一つの嘘」をつく。そこから過去に苦悩するピアニストと、病に冒されたヴァイオリニストの少女、そしてその友人たちの鮮やかに色づいた一年が始まる。
この作品は、仕事柄「名前」は知っていました。どんな作品かは知りません。前々から気にはなっていましたが、ある方が「すごく良かった」ということで、視聴に踏み切りました。
過去の作品を、その時の気分と琴線に触れたかで作品をつまみ食いする私にとって、ちょっと前に見た「ゴールデンタイム」も良かったのですが、この作品はそれを超える作品でした。「私が「涙」した作品&シーン」というベスト10を作ってますが、その中でも上位に来る感動作であり、私が見てきた作品の中で10本、いや5本の指に入る個人的にものすごく好みな作品でした。
ストーリー、登場人物、音楽、絵の綺麗さ、声優さんの演技、どれをとっても申し分ない、素晴らしい作品だと思います。
前半と後半の2部構成(だと思う^^;)
前半は主人公・有馬公生が中3の春、彼は運命的に一人の少女と出会い、彼女に引きずられ、苦悩しながらピアノへの道に戻るまで。
後半は本格的にピアノの道に戻りつつある公生と、病気が進行し闘病しながら公生を応援するかをりの姿を描いている。
物語もさることながら、絵の構成、音楽の使い方、人物の心情や心の移り変わりなどを、綺麗に、丁寧に、美しく描いていたと思います。
前半の公生の苦悩、後半の様々な思いの交錯。予備知識なく見た作品で、1話から見事に物語に引き込まれました。
演奏シーンがとても素晴らしかった。画や回想エピソードの入れ方が絶妙で、演奏者の想いや聴く者の想いを見事に表現していたと思います。
最初に伴奏をしたかをりのコンクールでのかをりと公生の競演。かをりの願いと公生の必死さがよく伝わりました。
ガラコンでのかをり抜きでのピアノの独奏。なぜかこの演奏のシーンで涙が出ました。母への想い、かをりへの想いが伝わってきたからでしょうか。
音楽をかじったこともなく造詣もない私がピアノの演奏がうまいとか下手とか解る訳も無いのですが、このシーンで初めてこの作品で涙しました。
その後のライバル相座の妹の学祭での演奏、もちろんラストのコンクールの演奏も涙なしには見られませんでした。
公生だけでなく、相座の迫力ある演奏、絵見の自信満々な演奏、どの演奏もその奏者の気持ちを良く表せていたと思います。
しかし、幼い絵見が公生の演奏で泣き出した隣にかをりがいたのには驚きましたが。
演奏シーンのほかにも登場人物の心情の描写が良かった。
公生を思うかをり。かをりに惹かれていく自分に気づく公生、それに気づき焦る椿、そして何といっても渡。公生が「僕は宮園さんがとても好きだよ」と告白したシーン。
笑顔を浮かべ、
「知ってるよ」。
このシーンがすごく良かった。
登場人物がそれぞれの想いを知り、それぞれに思いやる。そんな心理描写もとても良く描けていたと思います。
最後のかをりの手紙のシーン。ここはもう号泣でした。
語られることのなかったかをりの過去。幼き日に憧れた幼きピアニストに近づくため、両親にヴァイオリンをせがみ、
「こうせいくんにピアノ弾いてもらいたいの!」
これがすべてのきっかけ。
語られるかをりの淡き恋心と強き想い。どうやって声をかけようかな、どうやったら近づけるのかな。仲の良い3人に近づくことができず、眺めている日々。
自身の病状を知り、長くない命と知り、一大決心をした中3の春。思い立ったかをりの決断は、「一つの嘘」。悲しい嘘。恥ずかしさを隠す嘘。
そしてようやく近づき、憧れだった公生のピアノでの演奏。夢がかなった瞬間。そして病状の悪化。しかし、ピアノに再び目覚めた公生ともう一度演奏するために諦めた人生をもう一度取り戻すため「生きること」に未練が生まれ、病と闘うことを決めたかをり。
最後の、
「有馬公生君、君が好きです」
もう、涙が止まりませんでした。思い出し、これを書いている途中でも涙が出てます。
こんなに感動したのは、初めてCLANNADを見た時以来、こんなに涙が出たのは「東京マグニチュード8.0」を見た時以来、それ以上の感動と涙があふれました。
観終わって丸一日たってからこのレビューを書いてますが、この一日、仕事にならず、思い返しては涙をこらえ、鼻歌に「光るなら」「七色シンフォニー」を歌いながら涙をこらえたり、仕事になりませんでした^^;またレビューを書きながら涙が出ているのですが。TT
作品も良いのですが、「ちはやふる」同様、アニメの制作側にも、ものすごい力の入れようを感じました。
ここぞというときの「手」の描き方、随所に出てくる夜空の描き方、作品の雰囲気を壊すことなく作り出される風景や画は絶品そのもの。
作画、音楽どれをとっても文句なし。細部にこだわった描き方、作り方に感服します。
主題歌も「光るなら」「七色シンフォニー」「キラメキ」「オレンジ」と作品にこれ以上ないほどマッチした楽曲。
この作品をイメージして作ったのか、曲が先なのかはわかりませんが、後者なら間違いなく「奇跡」でしょう。
このメロディーだけで泣けます。
そして何より、声優さんたちの演技が素晴らしかった。違和感なし、どのキャラも見事に演じ切っていたように思えます。(ここにわが愛しの法子様がいないのが残念ですが^^)
実際のところ声優に詳しくない私は主要キャラの声優さんたちは知らない方ばかりでした。しかし、何といってもかをり役の種田梨沙さん。この人の演技に尽きます。素晴らしかった。今後マークしたいと思います(法子様は別格!)
どの面を取ってみても、この作品は素晴らしい。まさに私にとって至極の一作になりました。出会えたことに感謝。
心より「宮園かをり」ちゃんの冥福を祈ります。
無駄な長文をお読みくださった皆様に感謝。
余談
これだからアニメはやめらんねーんだよ!こーゆう作品に出会えた時の感動、至福の極みなり!
追記
個人的妄想
最初の涙は幼少期に憧れた公生とやっと出会えた嬉しさの涙か。
「渡亮太のことが好き」という嘘をついて、出会えた奇跡。
この後、「好きな渡君」ではなく公生の手を取って走り出すかをり。
「憧れの公生君に私のヴァイオリンを早く聞かせたい!」みたいな気持だったんでしょうか。
ここに「中学3年生の女の子」という初々しさがあったと思います。
涙ながらに伴奏をお願いするかをり。
まさしく「夢の実現」目前で躊躇する公生に何としてもかなえたい夢の為に必死にお願いしたのか。
コンクールの舞台上、ピアノの音が聞こえなくなった公生が演奏を止め、かをりも演奏を止めて仕切り直す。
再び始まった演奏は「ヒューマンメトロノーム」と言われた公生のピアノと違い、「想い」が込められていた。
この演奏(競奏?)で、かをりの心が「憧れ」から「恋」に変わった瞬間だったのでは。
公生が作中でかをりのことを「憧れ」から「恋」に変わったように、かをりにも同じ心の変化があったのではないかと思う。
一度はあきらめた「生きる」ということ。でも公生とともに過ごす「生きる時間」に未練を感じ、「もっと生きたい」と願い、過酷なリハビリや、手術に踏み切ったのではないか。
と個人的にそう思った。
渡 亮太という男について
レビューにも書いたが「知ってるよ」のくだり。
かをりが公生を好きなことを、うすうす感づいていたのではないか。
明らかに違う自分と公生への対応。「渡亮太が好き」と言っておきながら、公生の前では本音で感情をぶつける姿を見て、なのか。
だけど、本当は渡も本気でかをりを好きだったのではないか、と思う。
最終回のかをりとの写メを見ているシーン。
「知ってるよ」のシーンで、「やっと俺とやりあう気になったか!」というセリフ。
本来であれば友達思いの渡はおそらく両想いの二人を上手くくっつけるよう手を打ったと思う。だけど、同じ幼馴染で公生を好きな椿のこともあるが、公生の本音を聞いたとき、友人として、嬉しかったのではないか。公生がかをりを好きなのは当事者2人以外みんな気付いていただろうし。
でも、渡もかをりのことをホントに好きになっていたのではないか。でなければ、気の多い渡が何度もかをりの元へ見舞いに向かうだろうか。
友達思いな渡だから、それで顔を出してるってこともあるだろうけど。それだけではなかった気がする。やはり「好きになったから」ではないか。
「紹介されただけであって付き合ってるわけではない。」
渡も「彼女」とは言ってないし、かをりも「彼氏」とは言ってない。
あくまで、かをりは「渡のことを好きな女の子」だったんじゃないか。
ここで渡は「かをりちゃんは俺を好きなんだぜ」とか「俺もかをりちゃんが好きだ」ではなく、スポーツマンらしく正々堂々と、かをりを本当に振り向かせたいと思っていたのではないか、と思う。
だから「やっと俺とやりあう気になったか!」というセリフになったのではないか。
「かをりちゃんはおそらくお前のことが好きだ。でも俺も好きだ。だから正々堂々かをりちゃんを取りあおうじゃないか、選んでもらおうじゃないか、俺は負けないぜ、絶対に振り向かせて見せる」
みたいな感じだったのでないかと思う。
チャラチャラしてるけど、試合で負けても仲間を気遣い、トイレで一人泣く。仲間想いでホントにいい奴だよ、君は。
最終回の写メを見ているシーンを見て個人的にそう思った。
以上勝手な妄想でしたw
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2回目視聴につき追記
全てを知った上での2回目視聴、泣けました。とにかく泣けました。1話から泣けました。かをりの言葉一つ一つに泣けました。
かをりのヴァイオリン、公生、相座、絵美のピアノすべての演奏に泣けました。渡のやさしさに泣けました。
かをりの絶望と希望に泣けました。公生の母の想いに泣けました。相座の妹の兄への想いに泣けました。そして、
かをりの人生、命、そしてすべての想いを伝えた「手紙」に泣けました。
1回目以上に泣けました。すべての登場人物の想い、苦悩、喜び、悲しみ、不安、希望、絶望。全てを美しく、そして観ている側に伝わるように、優しく描かれている。夜空、手、表情。描き方がたまらなく良かった。画といい、声優の演技といい、演奏といい、作り手側の、この作品にかける情熱というか、迫力というか、作品愛というのか、とにかく「この作品を最高のものにしたい」という思いが伝わってくるようでした。
一つの作品を知るのにやはり一度の視聴ではすべては伝わらない。全てを知った上での2回目の視聴は細かな心の動きや、想い、感情を発見できました。好きな作品は何度でも見て、何度でも泣く。これが私の視聴スタイル。そしてどんどんその作品を好きになっていく。
この作品もそんな「好きな作品」になりました。
そして2回目の視聴はさらに渡をイイ男に見せてくれました。表面上カルい男を演じながら、友人たちへの想いは熱く、優しい。
公生を励まし、背中を後押しし、椿の公生への想いを見守り、かをりの「好き」が自分ではないことに気が付きながらも、お見舞いに足しげく通い続ける。最後のかをりとの写メを見つめるシーン、そこに本当の「彼の気持ち」を見たような気がする。(「思い出」として見ていたのか、「本当の気持ち」だったのかは知る由もないが、、、)
「2回見たらさらに泣ける」の成分タグをつけたのは私です。最初についたのは「-」。違うのかな?と思いましたが、しばらくしてみてみたら「+17」の評価。23人のユーザーがそう思ってくれたことがうれしかった。
こういうことで共感を得られたり、作品への想いを共有できるこの「あにこれ」。本当に良い場所ですね。
ここで出会えたこの「四月は君の嘘」という作品。私の中で本当に出会ってよかった、見て良かった、最高の作品となりました。
ふりーだむ的名作認定No.01