STONE さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
異色の販促作品
現実に存在するトレーディングカードゲームであるWIXOSSをメインモチーフにした
作品で、序盤はセレクターバトルに挑んでいく少女達を描いていくが、この時点で判明している
設定はセレクターバトルのメリットばかり。
ただ、この段階でも随所随所に不安を感じさせる描写があり、早くも不穏な空気が漂う。
これは絵のタッチが暗いせいもあるかもしれないけど。
皆が願いを叶えるためにセレクターバトルに挑む中、主人公である小湊 るう子は願いも
無く、バトルそのものに惹かれていくが、この点も何かしら危なげな匂い。
このるう子のルリグであるタマも、るう子と同じくバトル自体にはまっているようだが、
他のルリグとは異なり、幼女のようなキャラのタマが、幼子が素直におもちゃに夢中に
なるように、バトルに興じていく様はある種の怖さを感じさせる。
中盤以降、3回負けた場合のセレクターの処遇、夢限少女になることの真相など、セレクター
バトルのデメリットが明らかになる。
あえて中盤以降にデメリットを明示することでインパクトを与えるやり方は最近だと
「魔法少女まどか☆マギカ」や「結城友奈は勇者である」(こちらは本作品より後発ですが)
辺りを思い出すが、この作品に関しては序盤から暗い雰囲気出しまくりであったため、衝撃の
真相とはならなかった気がする。
ただ、ここから以降は雰囲気だけ不穏だったものが、実際の展開も鬱的なものになり、
どんどん目が離せない展開に。
終盤において、それまで願いの無かったるう子がやっと見つけた願いが、自己犠牲による
関わった者全員の救済という展開は前述のまどマギを思わせるものがあったが、この作品は
そこから先に更にどんでん返し的展開があり、今後どうなる?といったところで終了。
展開のみならず登場キャラや、キャラの持つバックボーンなども全体に暗めで、主人公
サイドからして複雑な家庭環境のるう子、実の弟に恋愛感情を抱くことで苦悩する紅林 遊月、
友達と呼べる存在が全くいなかった植村 一衣など、いずれもあまり楽しげとは思えない要素
ばかり。
それだけにようやく友人関係になれた三人が単なる遊びのWIXOSSに興ずるシーンなどは
作品全体のささやかなオアシスのよう。
キャラに関しては、個人的には敵役?であるアキラッキーこと蒼井 晶の表裏あるいかれた
感じがなかなか良かった。
この作品、トレーディングカードゲームの販促作品なのだろうが、通常この手の販促作品は
作品内でゲームの魅力やルール、戦術などを紹介したり、作品内の世界観において、登場
キャラがゲームをやって良かったと思わせる展開がほとんど。
ところがこの作品ときたら、ゲームそのものの描写は少なめで、登場キャラ達の人間関係の
描写に比重を置いている。更に中盤以降はこんなゲームやるんじゃなかったと思わせる展開。
正直なところ、販促作品としてはどうなんだろう?と思っていたが、WIXOSS自体はかなり
売れているらしく、作品内で露骨なカード自体の宣伝をせずとも、作品の面白さを追求した
ことで、結果として面白い作品の中で使われたカードだから売れるという戦略を確立した
みたい。