STONE さんの感想・評価
3.6
物語 : 4.5
作画 : 2.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
心技体を一歩ずつ
原作は既読。
作品全体がほぼテニスを描くことに集中している印象で、キャラ同士の人間ドラマ、
恋愛事情、学校を始めとする日常シーンなどテニス以外の要素もあるが、これらも結局は
ほとんどがテニスに繋がっていくことが多い。
肝心のテニス自体はいわゆるトンデモ要素は少なく、地に足が着いた感が強い。もっとも
自分におけるテニス経験は何度かコートでラケットを振り回した程度で、本格的に取り組んだ
ことがないので、ここで描かれている内容が真にリアリティがあるのかどうかは判りませんが。
展開自体は王道といった感じだが、主人公の丸尾 栄一郎は逆に従来の王道スポーツものの
主人公に多く見られる熱血タイプではなく、理論派といった印象なのが面白い。
「黒子のバスケ」や「ログ・ホライズン」などは既出のモチーフを用いながらも、どちらかと
いうと主人公のライバルや仲間にいそうなタイプのキャラを敢えて主役に据えることによって
個性化を打ち出している印象があるが、この作品もそういった系統の作品みたい。
データ収集を行い、そのデータを元に行動していく丸尾だが、データ重視タイプと言っても
いわゆる策士キャラといった印象は薄く、生真面目にコツコツとやっていく素直なキャラで、
それが可愛いし、好感が持てる。
このデータ主体の行動は試合スタイルだけではなく、日頃の練習方法や気持ちの持ち方にまで
及んでいくが、試合で追い詰められた際などは粘り強さや本能的動きが出てくるなど、従来の
主人公っぽさも持ち合わせており、この辺が頭でっかちな印象にならないところなのかな。
メインヒロインの鷹崎 奈津は丸尾とは反対にテニスにしろ、普段の行動にしろ感覚で動く
キャラで、むしろこちらの方が主人公タイプといった印象。
通常、アニメのヒロインに見られる体型とは異なり、腕などはそれなりに太く描かれて
いるが、この辺はスポーツ選手としてのリアリティを感じてしまう。
この鷹崎は丸尾と共にテニスに向き合っていく過程で、丸尾へ恋愛感情を抱くように描かれて
いるが、出会いの頃から丸尾には他者とは異なる関心の強さを見せており、テニスとは関係
なく、丸尾本人にはある程度の好意があったのかな?と思わせるものがある。
丸尾がテニスを始めようと思った時点で、感覚的に丸尾がテニスの世界に深く入ってくると
読んでいたのかもしれないけど。
ストーリー自体はタイトル通り、少しずつ自身を向上させながら、結果もそれに伴うといった
印象で、練習シーンなどはちょっとしたハウツーもののような感もある。
この向上要素に関してはまさに心技体といった言葉が相応しいもの。
いわゆる技である技術の向上などは他作品でもよく描かれるが、マイク・マグワイヤとの
イメージトレーニングや、青井 竜平との本能の活かし方など、心である心理や精神の面も
訓練により向上させられる描写が興味深い。
残る体である基礎体力に関しては、即効性がなく、映像的に地味になりがちであるために
描きにくい要素ではある。
そのためか、作品によっては技術や戦術でそれを凌駕してしまうようなものもあるが、
本作品では土台である基礎体力が弱いとある程度のレベルには通じても、それ以上のレベルには
通じないことを見せつけ、基礎体力の重要性を描いているところが好感が持てる。
練習により得た心技体を持って臨む試合では、加えて試合全体を考えた戦略、局面による
戦術、更に相手の戦術によって自身の戦術を変更させていくなどの読み合いなど、頭脳戦的
要素が強く、一種の知的ゲームのような面白さがある。
ここまでいいことばかり書いてしまったけど、残念だったのは作画で、スポーツものに
求められる試合や練習の描写における躍動感がかなり貧弱。
あと試合シーンにおけるモブキャラのギャラリーがひどく、なんかマネキンのようで怖くさえ
あった。