ビアンキ さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
遠くと遠くを繋ぐファンタジー
ネット上の至る所で本作に対する絶賛の声を聞き
ならば見るかと、1年半ぐらい前にレンタルDVDで全話視聴
多くの謎が絡み合うファンタジーアニメ、全26話。
本作の感想を書いてみる
まず本作は制作スタッフが凄い、このスタッフ達が魅力的だ。
あの「未来少年コナン」の制作スタッフが再結集して作られたアニメである。
ただし「未来少年コナン」で実質的に監督をしていた宮崎駿の立場に、
「なかむらたかし」というクリエイターが入っている。
このなかむらたかし氏、かつてアニメ映画「AKIRA」の作画監督を務めている上、
本作以前にも、自身が原作・脚本・監督を担当した
「とつぜん!ネコの国 バニパルウィット」
と
「パルムの樹」
という2作を手掛けた実績がある。
しかし上記の2作はアニメ映画である。
テレビアニメで 原作・脚本・監督を務めるのは、本作が初めてだったようだ。
本作は深夜帯の放送だった上、DVDのセールス上はヒットしなかった作品だが、
上記のスタッフたちの情熱が入り
スローテンポながらもしっかりと作り込まれた内容の本作は、
今現在でも、コアなアニメファンからの評価は非常に高い一品である。
本作は、主にある刑事とその助手による、
「ベフォールの子供たち」と呼ばれる、
白髪で黒いマントを羽織った謎の子供たちの目的の調査・追跡と、
主人公の少年:トーマと、その仲間のチットが
ヒロインであるヘルガの描く、ヘルガ本人すら分からない、しかし存在するという確信のある
自分の描く絵の場所に行きたいという願いを叶える
…という
全く違う場所からスタートする2つのシナリオが並行して進む。
そして
途中でトーマたちとベフォールの子供たちが出会うのだが、この両者が出会うまでに本作は贅沢にも12話分、ほぼ前半丸々費やす。
この前半は「退屈」との意見もあるが、とても魅力的だと思う。
少なくとも私個人は最高だった。
トーマ、チット、ヘルガ
と
ベフォールの子供たち
この両者の距離がどんどん近づいていく緊張感。
そしてベフォールの子供たちや、子供たちを追跡する刑事、
トーマたち・ベフォールの子供たち両方の前に
現れる謎の老人等々…
多くの登場人物がばらまく、
ベフォールの子供たち、あるいは物語全体の謎を解くヒント。
ミステリアスで、考察しがいがあって引き込まれた。
そして
12話でこの両者が出会い、
ベフォールの子供たちはヘルガの願いに大きく関係する存在であることが明かされる。
この「歯車が噛みあった感」は素晴らしい。
さらに
両者が出会ったあと、物語中盤~後半で
それまでばらまかれていた、しかし散発的で繋がらなかったヒントが点と点を線が結ぶように、どんどん繋がっていく。
このモヤモヤが溶けて消えていくような爽快感はなかなか味わえるものじゃないと思う。
この爽快感は非常に魅力的な要素だろう。
多くの視聴者は中盤あたりで、
本作がシナリオを徹頭徹尾良く考えて練った上で
伏線を蒔いていた作品であったことに気づかされるであろう。
前半を退屈だと感じた視聴者も
きっと満足させる怒涛の展開を中盤~後半は見せてくれる。
しかしその中盤~後半の展開の面白さや、伏線が解消されていく爽快感は、
退屈と言われる前半あってのモノだと私は思う。
前半を飛ばしていきなり後半を見たりせず、
前半もしっかり見て頂きたい。
そして後半の数話分、本作はヘルガの回想となる。
この内容を数話で纏めた構成の上手さ。
そしてあるキャラが心に嫉妬に近い感情を抱え、
泥の道を歩く時のモノクロになる演出。
この2つが素晴らしかった。
特にモノクロになる演出の数分間の内容は、
本作のかなり大きな見所だと思う。
ぜひじっくり見てほしい。
その後ある問題が起こって、その問題が解決されて
最終回の最後の方
主人公とヒロインの関係。
ここはかなり賛否両論あるが、
私はあれでよかったと思う。
{netabare}セスは過去の行いを後悔し、今度こそ友に譲り、
ティナはずっとずっと待ち続け、やっと会えたのだから。
あくまで「今」の話なんだから、納得いかないってのもよくわかるんだけどさ、
でも私個人はあれで満足した、あれで納得だ。{/netabare}
この部分、納得いくかいかないか、
色んな人の意見を見るのも本作の楽しみの一つかも?
本作には様々なキャラクターが登場するが、
主人公やヒロイン以上にベフォールの子供たち、
このベフォールの子供たちがとても魅力的である。
常に自分達の現状を理論的に考えて行動しており、
そのうえ仲間を大切にし、
仲間一人一人の個人的、あるいはやや身勝手な意見も出来る限り尊重する。
トーマやヘルガの裏に隠れた、本作の影の主人公と呼んで差し支えないだろう。
DVD最終巻の特典映像がより「主人公」感を強くしている。
ぜひ本編だけではなくこの特典まで見てほしい。
序盤こそミステリアスで謎が多く、トーマ達の敵のように見えるが、
上記の通りとても魅力的なキャラクター達だった。
作画クオリティーは非常に高い。
ヌルヌル動く訳ではない、しかし常に安定していて全く崩れない。
背景美術も壮大で幻想的である。
作品にあっていて魅力的だった。
キャラクターデザインに癖があるというだけで見ないのはもったいない。「傑作」と評価する。
あらすじに終始してしまった下手くそな長文、お読み頂きありがとうございます。