蒼い✨️ さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 2.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
無敵でも超人でもない。
昭和52年のアニメ作品。監督は富野喜幸(由悠季)。
名前だけは知ってる人も多いかと思われます。
私は、「人間爆弾」と「最終回」しか今まで観たことがなく感想を書くのに不十分かなと。
それに全23話と昔のアニメにしては短いので観てみました。
神(じん)ファミリー = 神(じん)家、神江家、神北家。
母星を失い150年前に地球に飛来したビアル星人を先祖に持つ3つの家族が一丸となって、
ビアル星を滅ぼした張本人であり人類抹殺を目論む宇宙人ガイゾックと戦う物語。
主人公はドラえもん声のガキ大将・神勝平。無茶、無鉄砲なお子様です。
いとこの神江宇宙太、神北恵子と共に3機のメカが巨大ロボット・ザンボット3に合体して、
敵の送り出す戦闘メカ、通称メカ・ブーストを相手に毎回戦います。
実はこのメカ・ブーストは怪獣みたいな姿で、でかくてやたら強いです。
ザンボット3の攻撃が一切効かず、必殺技ムーン・アタックですら全く通じないのもいます。
無敵でも超人でもありませんね。看板に偽りありです。
弱点を解析して作戦を立てて毎回が辛勝です。戦闘に緊迫感アリアリです。
神ファミリーの長老は、神北兵左衛門。演じるのは波平の中の人。
余談ですが「永井一郎」「若い頃」でイメ検してみてください。
この人凄くイケメンだったのに当時から爺むさい役ばかりしていたのですね。
役者さんって凄いですね。
敵の司令官はキラー・ザ・ブッチャー。プロレスラーみたいな名前のおデブさんです。
パチンコに興じたり兵隊に命じて一緒に阿波踊りをしたりとコミカルなキャラなのですが、
「ドンジャカドンジャカ人間爆弾を作って、ドンジャカドンジャカ人間どもを皆殺しじゃ!ホホホホ」
陽気にゲラゲラ笑いながら人間を虫けらのように扱う外道さ、快楽殺人鬼っぷり。
悪役として物凄いキャラでした。まさに邪悪そのもの!
さて、この作品「人間爆弾」「鬱アニメ」この2つのキーワードが独り歩きしていますが、
本当にそのとおりでしょうか?
他の方も書いていますが、神ファミリーとガイゾックの戦うところは街が壊滅し、
住民は巻き添えを食らって死に、大量の難民が出ます。
神ファミリーはガイゾックから人類を守るために必死に戦っているのに、
「オマエラがいるから襲われるのだ」「日本から出て行け」と迫害を受けます。
街を焼かれ住む場所や家族を失った憎しみや恨みが、得体のしれないガイゾックよりも、
見た目は普通の日本人の家族と変わらない神ファミリーに向かうわけですね。
争いの無残さ、人間の心の弱さが容赦なく描かれています。
やがて、勝平たちの頑張りが認められて人々の理解を得られます。
神ファミリーの為に援助をする者や命がけで戦ってくれる者も出てきます。
故郷での戦渦で一度は断絶した仲の良かった少女(アキとミチ)や悪友(香月ら)とも和解します。
なんだ、人間も捨てたものじゃないじゃないか?人の温かみを感じるストーリーでした。
しかし、「皆殺しの富野」は残酷でした。
かの有名な「人間爆弾」ですね。相次ぐ惨劇が勝平の精神を蝕んでいきます。
ここまでやるか?まだやるのか?詳細は省きますが、
最終決戦を終えるまでの犠牲の数々は、勝平の心に一生の傷を残しました。
すべてが終わり、傷つき一人ザンエースで地球に落下していく勝平の嗚咽。
あれは、台本に無い大山のぶ代さんのアドリブだそうです。
一生に何度お目にかかれるか分からない神演技でした。
大山さんは、その後にゲームなどで勝平を演じることは一度もありませんでした。
それだけ役に入り込んでて、「寝た子を起こすな」
過酷な戦いを終え、やっと安息の時を迎えた勝平をそっとして欲しかったのかもしれませんね。
「鬱アニメ」であることは否定は出来ないですが、
「暖かな光と希望」が残されているラストカットだったと思います。
解釈・憶測の仕方によっては全然違うとも言えますけどね。
ガイゾックが攻めてこなければ普通に一生を幸せに暮らしていたであろう一族が、
地球を守るために宇宙に飛び立ち、幼い子らの明日のために自らを犠牲にして掴んだ勝利。
今どき流行らなそうな設定と展開ですが、だからこそ古き良き美学に溢れた名作になったと思います。
最終回には実は怖いところがあって睡眠学習で恐怖心を取り除いていたから、
生命を犠牲にしての特攻に躊躇がなかったのではないだろうかと?
逆に勝平は最後に睡眠学習の洗脳が解けていたのではないのかと?
勝平たち3人を勇敢な兵士に仕立て上げた睡眠学習装置ですが、ビアル星人の科学も実は黒いですね。
作画監督を置いていないことからバラつきがあり平均すれば作画のクオリティが低いですので、
そこだけは評価が厳しめですが、最後まで観た者の心に深く刻まれる作品であったと私は思います。
これにて終わります。読んで下さいまして、ありがとうございました。