ossan_2014 さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.5
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
王道を征く漢
もしも筋トレやエクササイズを習慣にしている人がいるのなら、トレーニング後に視聴するのはやめた方がいい。
腹筋の負荷がオーバーワークになって、悶絶する恐れがある(いや、冗談で言っているわけではない…)
少女マンガが原作の本作を特徴づけているのは、キービジュアルで一目瞭然の、猛男くんのヒーローらしからぬ風貌だ。
デカい、ゴツい、ムサ苦しいと三拍子そろった猛男くんのビジュアルは、ヒーローどころかロマンチックであるべき少女マンガ世界の中の異物で、殆ど出オチ級の異化効果を生み出している。
もしも見かけがイケメンであれば少女マンガのヒーローとして普通に過ぎない猛男くんの行動の全てを、ことごとくギャグに変換してしまう異化効果だが、本作は徹底して大げさな映像を展開することで、この効果を最大化しているといえるだろう。
{netabare}典型的なのは雑居ビルの火災現場から脱出してくる猛男くんの描写で、異物感どころか、次元の壁をぶち破って少年マンガの世紀末世界から越境してきたような、過剰な映像演出ぶりだ。
爆笑を生む過剰な描写と裏腹に、本作の笑いが何処か柔らかく穏やかな印象を与えるのは、猛男くん=異物を嘲笑することではなく、子供が見たらひきつけを起こしそうな猛男くんの勇姿(!)を前にして、「この 『カッコよさ』 をどうやって友達に分ってもらおうか」と本気で悩む、大和さんの度外れた「アバタもエクボ」っぷりがコメディを駆動しているからだ。
確かに、互いに相手のことを世界で一番ステキだと思う/思い込むことが出来なければ、恋愛とは言えないだろう。
見つめあう猛男くんと大和さんは、「恋は盲目」を文字通り絵に描いたようで微笑ましい。
ヒーローの変則的なビジュアルによって、本作は少女マンガの永遠のテーゼを、より先鋭な形で純化しているといえるだろう。
色物的な設定に見えるが、少女マンガの王道をまっすぐに貫いている。
それにしても、本作と原作マンガが女性から多大な支持を得ているところをみると、「……ただしイケメンに限る」という俗言は、男の価値観を自己投影した妄言なのかな、という気がしないでもない。{/netabare}