ふの人 さんの感想・評価
3.6
物語 : 2.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
「意味不明」では納得できない
ある意味で「続きが気になって仕方がない」作品でした。
延々なぞなぞを解かされている様でその答えがとにかく気になったのでした。
残念ながら明確な答えというものは出てくることはありませんでしたが…。
しかし毎度PAの作品を見るたびに本当に細かいところ丁寧に作られていて
作品の世界への配慮が凄いなぁと感心していたのですが、
この作品でもそういう意味では非常によく作り込まれていたかと思います。
ただあまりにも繊細な糸で物語を紡ぎすぎたが故にストーリーに絡みと歪が生じ
結果「全体的に意味不明」のような評価が下されてしまったのではと思います。
さらにどの台詞を取っても、後々の伏線にしか聞こえないんですよね。
なので視聴者の頭の中に意識しない「伏線の欠片」がどんどん溜まって行って、
でもそれが何も意味を持たないものだった時の釈然としなさというか、
そういうものもストーリーへの評価に繋がっていったように感じました。
ざっくり全体を要約して考えてみると、本人たちの自覚していない状況下で
片思いっぽい恋心がお互いに芽生えてしまっていた仲良しグループに、
元々かなり不安定な年代という事も手伝ったのか、ちょっとした外部からの変化で
一気にそれを意識するようになってしまった(今回の場合は駆の登場)。
それでなんかよくわからないけれど“未来の欠片”が見えることが縁となり
透子と駆を中心にストーリーが回り出す、みたいな感じですかね。
これは個人的にかなり雑な物語要約というか解釈だったりするのですが、
どうもこの作品はあまりにも深く考察を巡らせてしまうとその瞬間
一気につまらなくなってしまうのではないかと感じてしまったので、
あえてこの程度のぬる~い解釈でとどめてみました。
正直透子と駆の件を除くとただの青春恋模様を描いているだけなんですよね。
とはいえ、その二人もそこに“未来の欠片”という他者とは別の、
それこそ「唐突な当たり前の孤独」を象徴するようなただの比喩的表現というか
他人からは理解できない何かを挟んでいるだけで深いところはあまり変わらないのでは?
と観終わってからふと考え込んでしまったのでした。
最も“未来の欠片”が「未来の予知」ではないことは最終話で透子の母から示されているので
結局それは「未来への自分自身への願望」だったんだなという事がわかりますが。
自分は自他ともに認めるバカなので、正直物語の中で示唆されていた
哲学的表現を全くと言っていいほど上手く解釈することができないため、
結局、「ああこの作品の鍵は青春と恋と、そして孤独なのかなぁ」という程度の
認識しか持つことができませんでした。
PAからの挑戦状だと思って頭を必死に捻ったものの、全く抗えませんでした。
そういえばOPの映像、あれって物語の世界から2年前とかその辺の世界なんですよね。
透子の髪も作中とは若干異なっていますし、何より陽菜が小学生姿です。
他の面々も少し雰囲気違いますが、それが局のサビ部分で一転作中と時間軸が同期されます。
正直作中の内容よりもこの意図の方が上手くまとまらずにいて、
そうなると強引にこれは“未来の欠片”の存在をこの時点で暗に示していたんじゃないかと
着地させざるを得ないんですよね。
ロリ陽菜が見られたという意味ではとても美味しかったりするのですが、
色々な意味で印象に残るOPだったのではないでしょうか。
サビでの時間軸の切り替えも手法としてはなかなかハッとさせられるものがありました。
EDは実に西村監督らしい流れを組んだ演出でなんだか懐かしい気分になりました。
なんとなく強引に話を丸め込もうとする印象もありましたが、まぁこれはこれで…w
あと最後に劇伴の話。
劇中で使用されたEDの「透明な世界」のピアノVer(サントラTr.28のやつ)の
なんとまぁ心に残ったこと。使い場所が印象的だったのか理由はわからないけれど、
何故か最近のアニメの劇伴ではトップクラスの印象深さでしたね。
正直「何がしたかった作品なの?」って思われても仕方がないなぁと思うのですが、
個人的にはこれをただ「意味不明だった」という結論には落とし込むような事だけは
絶対に避けたいと思ったので何とか自分なりの解釈を当てはめる様心がけました。
各々が各々の解釈を重ねることで、どんどん成熟した作品になっていくのかなぁと思います。