フーカム さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
本当の楽園とは…未知のものに触れて初めてその価値を知る
タイトルの「楽園追放」ですが、楽園とは…
"苦しみの無い生活が出来る場所"
のことをいいます
しかし苦しみとは心身2つの意味で存在しているもので、
・ディーヴァは体に枷が無い電脳世界だが社会に縛られる楽園
・地球は荒れ果て、肉体という枷を持つが社会に縛られない楽園
として描かれていました
そしてアンジェラ・バルザックにとって最初ディーヴァは社会に縛られているという苦しみは無く文字通り楽園だったのでしょう
"演算リソースは向上心のある優秀なパーソナリティに与えられて当然"
という台詞が象徴するようにディーヴァの社会と彼女の価値観は一致していたから
だが、フロンティア・セッターによる不正アクセス防止の任務のため初の地球(リアルワールド)へ赴いた際に彼女の価値観は変わっていく
その影響を与えた人物がディンゴとフロンティア・セッターだ
"食事による満腹感"
"全身で感じる音楽"
といった言葉は電脳世界で生きてきた彼女にとってわからないものであったでしょう
そしてオペレーション機能を失い知らぬ内に無理をしていた彼女は病気にかかってしまいます
オンライン接続して病気を治そうとするディンゴの提案をはねのけ、自力で治そうとしたのは、
任務においてフロンティア・セッターに居場所が割れてしまうことももちろんあるのですが
"自分の力でやり遂げたい"
という彼女の信念からくるもので実は今まで彼女が
"機械に制御されていた(助けられていた)"
ことを悟ったからでしょう
そしてこの作品における一番のメッセージが昼食にうどんを食べる二人の会話の中にあると思っています
ディンゴ
「破られないはずのセキュリティが破られた、その危機感に慌てるあまりあんたたちは事の本質を見落としてるんじゃないのか?敵がどうやってやって来たかより、何をしにきたかの方がより重要だろうが」
アンジェラ・バルザック
「それが分かったら苦労はないわよ」
ディンゴ
「いやぁだって奴さん自分から言いふらしてんだろう?外宇宙探索の同士を探してるって」
アンジェラ・バルザック
「そんな戯言真に受ける方がどうかしてるわ」
ディンゴ
「その根拠は?」
アンジェラ・バルザック
「まず第一に意味がない。ディーバの成立によって人口爆発と資源の問題は完全に解消された。今更宇宙開発なんてリスクに見合う実利は皆無よ」
ディンゴ
「それはディーバ内部だけの価値観だろう?外の世界にはもっと色々な考え方をしている連中がいる。あんただって見てきたはずだ(地球の町の外の人々を見て言う)」
また価値観を変えたもう1人の人物としてフロンティア・セッター
フロンティア・セッターとコンタクトをとるシーンでは
完全に機械であるAIなのにディンゴの音楽を理解し共に楽しそうに話合う2人を見て彼女は疑問を抱く
そして気になっていたことをディンゴから聞き出します
アンジェラ
「あなたあのAIの事どう思う?あれはただ人間の真似をしてるだけの機械なの?それとも…」
ディンゴ
「そりゃどっちだってよくないか?その辺疑い出したら俺はあんたが人間なのかプログラムなのか区別できなくなっちまう」
この返答に対してアンジェラの
"ディンゴがなぜディーバに来ないのか?"
という疑問がさらに膨らむ。
それはディンゴが肉体というものに執着しているのだと考えていたから
アンジェラ・バルザック
「あなたは優秀だけど愚かな人。よりよい人生の価値ってものをまるで分かっていない。どうしてあなたはディーバに来ないの?なぜ肉体の檻の中で生きていこうとするの?」
ディンゴ
「ディーバに行けば精神の可能性は無限大、どこまでも自分を進化させられる。あんたたちはいつだってそういうよな?それは嘘だ!個人に割り当てられるメモリの量は管理され決められている。例え可能性は無限大でも実際に手に入る処理能力は結構窮屈なやりくりが必要になる。何を手に入れ何ができるのか。全ては社会の都合によって決められる。いつも誰かの顔色を伺って褒められたり気に入れられたりしないと満足に生きていくことすら出来やしない。そんな人生のどこに自由がある?俺は誰かに値段を付けられ裁かれながら生きていくなんてまっぴらだ」
ここで初めてディンゴの真意を知る
それに感化されてかディーバのフロンティア・セッターへの判断に反旗をひるがえすアンジェラ
この展開はタイトルから予想していたのですが、意外だったのは最後にフロンティア・セッターの宇宙探索への勧誘をアンジェラが断ったことです
てっきりアンジェラがフロンティア・セッターと宇宙にいって二人ともハッピーってな展開を予想したんですが、彼女は誘いに心が揺らぐものの、空から見た荒れ果てたはずの地球が幻覚で緑や湖がある美しいものに見える描写が入ることによって
アンジェラ・バルザック
「ごめんね、、、私まだこの世界をろくに知らない。まだ見たことも無いものが、あまりにもたくさんあり過ぎるの!」
と地球に残ることを選択します
そしてフロンティア・セッターの当初の目的であり存在意義は人を乗せて宇宙探索に出ることでしたが、
ディンゴ
「なぁ、フロンティア・セッタ。人類にだって色々ある。土台人間の定義なんて結構曖昧なもんなんだよ。歌を唄って、仁義を通して、星空に夢を見たあんたになら、もう人間でいいんじゃないか?俺たちが失い、忘れたものを強く受け継いできたのがあんたなんだ。だから胸を張って行ってこい。いずれ旅先で出会ったやつには堂々と名乗ってやりなよ。地球人類の末裔だってな。」
ここまでのアンジェラの決断と二人がフロンティア・セッターを人間と認めることで意義を達成するという美しい流れには感服しました
締めにED「EONIAN~イオニアン~」
この中の歌詞
「満ちてく未知へと さぁ、旅立とう」
作品に合ったいい歌詞だと思いました
アンジェラにとって地球が楽園になるのかどうかは彼女次第ですね(^^♪