yapix 塩麹塩美 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
SHIROBAKOは開けてはならないパンドラの箱?
これを読んでいる99.99999%はアニオタでしょ?
少なくともアニメファンであることは間違いないよね?
そんな僕らにとって、
これはとても興味をそそられる作品である、
と同時に、
実は観ないでおいた方がよい作品なのかもしれない。
好きなもののことは一から十まで知りたくなる。
オンエアをリアルタイムで視聴し、
初回特典付きBRを予約し、
擦り切れるまで何度も何度も観る。
それだけでは飽き足らず、専門誌、WEBラジオ、インターネット・・・
ありとあらゆるソースを駆使して情報収集。
とはいえ一般人の僕らにできるのはここら辺が限界。
と・こ・ろ・が
この限界を超えさせてくれるのがこの作品なのである。
一言で言えば、
とてもとても興味深い。
どこまでリアルに描かれているかは知りようもないが、
アニメ制作の現場ってこうなってるんだ!
って驚きに満ちている。
そして、当たり前のことなのだが、
アニメ制作も仕事なんだ!
ってことがよくわかる。
それがどんなに夢に溢れ、芸術的で、高尚であっても、
仕事である以上、こなすべき対象である。
個人の趣味、あるいは、大芸術家のライフワーク
であるならばそうではないかもしれない。
だが、仕事であるということは時間的制約が付きまとう。
時間的制約があるということは、
どこかでなにかしらの妥協を強いられるということである。
あと一日時間があったら・・・
もう一時間あれば・・・
一分だけでいい・・・
その分だけクオリティが犠牲になる・・・
なんてことは絶対にない!!
締め切りのない仕事は仕事ではない。
期限があるからこそ終わるのである。
その限られた時間的制約の中で出来る限りのことをやる。
そうやって、現時点で実現可能な最高クオリティの成果物を提供する。
それが、真摯な仕事というものである。
つまり・・・
楽しいだけの仕事、楽な仕事は存在しない。
なーんだ、アニメ制作の現場も同じじゃん!
ただねぇ、これを観ちゃうと、
OPとEDのクレジットを見る目が変わっちゃうよね。
全くの一視聴者として観賞することができなくなるかもね。
主人公は「宮森あおい」。
これは揺るぎない。
でも、高校のアニメーション同好会の面々もメインヒロインだよね?
作品への露出的には、
宮森あおい>安原絵麻>今井みどり>藤堂美沙>坂木しずか
という順番になろう。
要するに武蔵野アニメーションとの距離の違いである。
宮森あおいを描くことはそのままアニメ制作の流れを追うことになり、
それこそがこの作品の一義的な目的であるのだから、
宮森あおいが主人公であることは必然である。
と言うわけで、まずは宮森あおいについて(制作中)
{netabare}制作進行という仕事に求められる能力、
それは、
調整能力であり、コミュニケーション能力である。
極度に細分化された現在のアニメ制作の現場においては、
その細分化された各セクションをつなぐ潤滑油が欠かせない。
{/netabare}
安原絵麻と藤堂美沙について(制作中)
{netabare}アニメーションとは、極言すれば、絵が動くことである。
動く「絵」がアニメーションであると定義するならば、
アニメーションのキモは「絵」ということになる。
安原絵麻の出番が宮森あおいに次いで多いのもこれが理由であろう。
{/netabare}
今井みどりについて(制作中)
{netabare}今井みどりの役どころはなかなか掴みどころがない。
{/netabare}
坂木しずかについて
{netabare} 現在のアニメーション界の花形は声優である。
専門誌まであり、一部の有名声優は一般にまで名を知られている。
が、アニメーション制作の全体像の中での声優の果たす役割という観点からみると、いささか異なる様相を呈する。
完成されたアニメーション作品における声優の影響力、
これは、時には(むしろしばしば)円盤の販売数を左右するほどである。
しかし、アニメーションの制作過程における影響力となるとかなり限定的である。
かなり限定的という表現でさえ控えめと言ってもいい。
いったんオーディションで声優が決まってしまえば、
その声優たちがアニメーションの制作に影響を及ぼすことはほぼ皆無であろう。
そんな訳で、アニメーションの制作現場を描くこの作品に坂木しずかの出番が少ないのは必然なのである。
必然・・・なのではあるが、その数少ない出番においてもなかなか報われない。
いや、わかるよ、ぽっと出の何の実績のない新人声優がそう簡単に名のある役にありつけたりしないだろうさ。
就職した仲間が着実に夢の実現に向かって進んでいる(ように見える)姿を目の当たりにし、
学生と言う身分の今井みどりまでもがアニメーションの制作現場に携わるようになる。
そんな状況にもかかわらず、腐ることなく仲間たちにすら愚痴もこぼさない坂木しずかには思わず感情移入してしまった。
自分自身が何者でもないというやりきれない感覚。
皆がぶち当たっている壁にさえたどり着けていないという自覚。
何をすればよいのか、
何をすれば自分の夢を実現することができるのか、
コレを、コレさえやれば私の夢は必ず叶う。
そんな処方箋はどこにも見当たらず、
皆の背中を見失わないように暗闇の中を走り続ける。
そんな彼女にようやく射し込む希望の光、
キャサリンの妹ルーシーの役。
ふ、不覚にも泣いてしまった・・・
ようやく皆と同じスタートラインに立っただけかもしれない。
でも、彼女は一歩を踏み出したのだ。{/netabare}