chariot さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
テリトリーを広げすぎた感もありつつ、各方面に興味深い。
2015年冬期放送の全12話。
中世ヨーロッパの100年戦争後期を舞台に戦争を嫌う魔女・マリアが奮闘する話・・・
恋愛要素多め、哲学、宗教学の知識あるともっと楽しめるかも?
小難しい話も多々あります。
誰もが絶対的に間違ってはいないという葛藤がかなり話を難解にさせています。
しかし、純粋に愛の物語として捕らえて行けば意外とすんなり入り込める・・・はず。
まずとにかく目を引くのは世界観。
なんの変哲もない(魔女がいて魔法はあるけど)中世の戦争をしている国が舞台ですが、甲冑や武器、傭兵たちの考え方などが
かなりしっかりと当時を再現している(ような気がする※)点が興味を惹かれます。
※雰囲気を作っているのか正しいのかは僕には解らないので。
公式HPのスペシャルのコーナーは色々説明がしてあるので興味があれば見てみると良いと思います。
戦争物は他にもたくさんありますが、時代に沿った形で表現している作品は意外と少ないですからね。
ストーリー。
戦争を止めたいマリア、戦争をする領主、教会、神(天使)、傭兵、魔女。
色々な立場の人がいてそれぞれの考えや利害があり、どれもが納得出来る反面、何を正義とするかを考え出すとキリがなくなる…。
戦争は悪い事、だけど戦争をしないと傭兵たちは生活出来ない、領土が広がらなければ民も苦しむ、という現実。
誰を救う為の「戦争妨害」なのか?という疑問と各々のより良い生活の交点(妥協点)を探したくなる強い欲求に駆られました。
中盤以降、神とマリアの対立が表面化して、マリア寄りの視聴者には一見神が横暴で役立たずな印象を与えながらも天から見守る傍観者としては当然の行ないで、
考え方が違うのだから相容れる事はないという状況に。
多方面の思考が入り乱れ、話は一個からの一方的正義ではなくマリアを主人公としつつも群像劇的な展開を見せていたように思います。
難点としてはその群像劇的展開で視点が定まらず、マリアの愛の物語である根本に辿り着くまで相当な尺を取られている事。
ストレートな話に深みを持たせる為に宗教や哲学を混ぜ、更に観やすくする為にエロネタを挟んだ事でテーマが見えにくくなっていると感じました。
しかし逆にその多少のごちゃごちゃ感が面白くも感じられ、1話1話が見応えのある作品になっていたとも思います。
序盤にきつめのエロを盛り込んだせいで断念した方。
サキュバスのお仕事なんて序盤だけです。
貞操がどうのというのは一貫してある話題ですが、ストーリーは至って真面目な物です。
エロ押し一辺倒の作品ではないので出来れば本題に入るまで頑張ってみてもらえると嬉しいです。。
綺麗にまとめすぎた感もありますが、{netabare}マリアの魔力がどうなったのか?以外は{/netabare}納得の締めだったと思います。
{netabare}魔力なくなるとアルテミスたちはふくろうのままなんだよね、きっと。
喋らなくなるのは少し寂しいかな。。
良き隣人として認められた事で制裁も解いてくれたらいいけど…{/netabare}
時間を空けてまた見直したい一作でした。
キャラ。
{netabare}ガルファ。
傭兵ですが、作中で一番人間味のあるキャラという印象でした。
最終話、ミカエルの問いに答え、最後に口にした言葉の続きは…
ジョセフに対して最初から気に食わなかったと言っていましたが、彼の中にジョセフを羨む気持ちがあったのではないか?
ジョセフの方も彼が「眩しかった」と言っているように、お互いないものねだりなんですよね。
育ってきた境遇も性格も全く合わない二人にどこか強い友情のようなものを感じさせました。
マーサとアン。
いやぁ…これは反則レベルでずるいキャラです。
こんな優しいおばあちゃんと幼女、誰が嫌えると言うのでしょうか。
マーサが神の子である証にマリアに石を投げろと言われるシーン。
マーサの苦しみとマリアが無言で促す…二人の間の信頼と愛情が溢れんばかり。
魔女だからと敬遠しないでマリアの本質を信じた彼女たちの存在もマリアが厭世的にならずにいた要因のひとつかもしれません。
ベルナール。
ザビエルカット(トンスラ)の修道士。
9話が最高でした。一人で理論を組み立て無神論に辿り着く化け物。
以下、彼の長い独り言。
{netabare}いないのと同じ…?
神が…?同じ…同じ…同じ…
普遍はない事と同じ?
いや、形相的にそもそも存在しない。
神の導きのない世界を考える。
神を疑ぐ…あり得ない。
サン・トマは神の存在証明を…
いや、オッカムのギョームは人間の理性は神を証明出来ないと…
不合理であるからこその信仰なのか?
しかしアリストテレスは肯定しつつ否定する事は出来ないと…
だとしたら、だとしたら…
いや、待て。普遍を前提とするのがそもそも間違いだとでも言うのか…?
神を疑い、疑い尽くした後で残ったものが本当の信仰になる。
神が残らなかったらどうなる?
いや、それはわからない。
人が人の世で生きる。
普遍をないものとする。
エッセ・エスト・デウス!(神は存在なりや)
いや、私の認識こそが存在とでも言うのか?
認識と存在は神によって…
いや、私によって!
神なき世界を生きると仮定すれば全て自由意志によって自分を救わなければならなくなる。
そうなのだ、ペラギウスの教えにように神を崇めつつも自由意志によって自分を救う。
より良き繁栄と幸福、魂の安寧を求め、神は我らの認識によって存在する。
そうなれば世界は神から人へ!
信仰と人の調和へ!
(え、読んだの?お疲れ様♪…聞き取って書いた僕もお疲れ様…){/netabare}
この一人討論会のシーンが一番好きでした。
基本的にマリアと同じく「何言ってんのかわかんない」でいいと思います。
要はマリアの言った「まずは自分の足で立つ事」なんです。
神が成すのではなく自分で成す。
神は存在するけれど、人の世を動かすのは人であるという事。
まあ、この時代にそれを言ったら異端ですからね…
最後は塩となりましたが、ならなくても異端審問にかけられてアウトでしょうね…
胡散臭くて好きじゃないキャラだったんですが、このシーンの櫻井氏の抑揚をつけた好演が際立ちました。
ビブとエドウィナ。
魔女。
悪態をつきながらもマリアの世話を焼くビブ。
抗議しながらも結構頑張れるエドウィナ。
マリアだけじゃなく、魔女って結構いい子多いのね。。
猫好きとしてはエドウィナの使い魔が可愛かったけど、人化しても可愛かった…
あ…メインキャラのマリアやジョセフについて何も言ってない…
えーと…
爆 発 し ろ!!{/netabare}