ノリノリメガネ さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
大人になりたい
・監督:原恵一
・敵:ケン、チャコ(イエスタデイ・ワンスモア)
春日部に万博(20世紀博)が。懐かしいアトラクションが多く、大人が嵌ってしまい、それに留まらず、街全体が昔の流行を取り入れ始める。そして大人たちはすべて万博へ連れ去られるが、それはケンの作った懐かしい匂いによるものだった。
21世紀に絶望したケンとチャコが時を戻そう(究極の現実逃避、思い出への回帰)という敵の思想や作品のテーマがかつてないほどに哲学的でかっこいい。
ケンが野原一家にわざわざチャンス(未来への可能性)を与えたのは粋な展開。幼稚園バスを使ってのカーチェイスは見物。さらにひろしの回想シーンは美術・音楽共にアニメ史に残したいほどの名場面。後半は野原一家がただ塔を全力で上っていくだけなのに演出が素晴らしいので非常に感動的な仕上がりに。
他の作品に比べて名台詞も多い。誰もが大人になればあの頃は良かったと過去に思いを馳せることもあるが、そんな過去に浸る大人たちとは対照的にしんのすけは未来への希望を堂々と口にするのがかっこいい。以下、大事な台詞を抜粋。
「昔外の世界がこの町と同じ姿だったころ、人々は夢や希望にあふれていた。21世紀はあんなに輝いていたのに。今の日本に溢れているのは、汚い金と燃えないゴミくらいだ。これが本当にあの21世紀なのか。」byケン
「外の人たちは心が空っぽだから、モノで埋め合わせしてるのよ。だからいらないものばっかり作って、外の世界はどんどん醜くなってゆく。」byチャコ
「俺の人生はつまらなくなんかない!家族のいる幸せをあんたたちにも分けてあげたいくらいだぜ。」byひろし
「おら、とーちゃんとかーちゃんやひまわりやシロともっと一緒にいたいから。ケンカしたり頭に来たりしても一緒がいいから。あと、オラ大人になりたいから。大人になってお姉さんみたいな綺麗なお姉さんといっぱいお付き合いしたいから!!」byしんのすけ
友情・家族愛・笑い・作品に込められた哲学がしつこくなく、ほど良いバランスで成立している。大人も子どもも楽しめる非の打ち所の無い傑作。間違いなくシリーズ歴代最高作であり、アニメ映画のくくりの中でも最高峰の出来だと思う。