ノリノリメガネ さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
哲学的社会派アクション
世に生み出された多くのアニメの中でも強い存在感を放つとにかく硬派なアニメ。萌えもくそもない、大真面目な社会派アクション。
設定がかなりリアルで凝っている。近未来の日本が舞台になっていて、説明は多くないが核戦争によって東京が住めない状態になっていたり、光学迷彩や兵器、電脳化等、近い将来こうなるだろうなという未来が無理なく描かれています。ドラえもんの四次元ポケットは夢物語だろうけど、攻殻にある未来要素はどれも少し頑張れば出来るかもしれない絶妙なポイントを押さえているといえます。
アニメ放映当時、実社会で「防衛庁」だった組織が、作中では「防衛省」として登場しており、その後実社会でも「防衛庁」から「防衛省」に格上げされる等、時代を正確に先取りしていたことはその後の社会そのものが証明しています。
上記のような緻密な設定の中で、公安9課と呼ばれる精鋭部隊がさまざまな組織のしがらみや巨大な敵に対して正義を慣行していくストーリー。また、ゴースト(魂)に焦点が当てられ、自分の存在とは何かを問いかける哲学的要素も大きく描かれています。
前者に関しては、薬害問題に端を発する「笑い男事件」に立ち向かっていく公安9課が描かれます。その事件性からスタンドアローンという現象もテーマとして取り上げられています。僕はスタンドアローンを「集合的無意識に基づく模倣犯」と理解しました。専門用語も多く、ストーリーを理解するのが難解なのがとっつきにくい面ではありますが、一通り観るとなんとなく分かってきます。
後者については、過去の事故で子どもの頃に自分の肉体を失い、ずっと年齢に合わせた擬体に乗り換えてきた素子の境遇から、果たして自分自身の存在を決定付けるものとは一体何なのか、視聴者にも問いかけています。少なくとも肉体や容姿は擬体がありふれた社会ではそこまでの意味は持たない。また、作中に登場する自立型兵器のタチコマがその好奇心から次第に個性を勝ちとり、ゴーストらしきものを発現させる描写がある。兵器としては欠陥とみなされたが、個とは、ゴーストとは何か、自分とは何者でどこにいくのかを考えさせられました。
後半のバトーを助けに来るタチコマは涙なしでは観られません。
作画・音楽も申し分なく、アニメ史に残る唯一無二の存在として今後も君臨していくことでしょう。