nk225 さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
アニメライターが選ぶ、2015年春アニメレビュー!
■京都アニメーションの吹奏楽アニメ「響け!ユーフォニアム」
高校入学初日に吹奏楽部の演奏を聴いた黄前久美子は、その下手さ加減に思わず顔をゆがめる。「だめだこりゃ」と漏らすほど散々な腕前らしいのだが、いっぽうでそんな演奏にも関わらず目を輝かせて聴き入る女子生徒の姿も描かれていた。久美子とは違い、彼女たちは演奏の良し悪しがわからない人のようだ。本作はこのようにして、持てる者と持たざる者をあっさりと暴露してしまう。その残酷さは最終話では制服によって表現されており、オーディションの合格者は冬服、不合格者は夏服と、ひと目でわかるようになっていた。
第11話の再オーディションでは対比がより際立っている。部員全員の拍手でソロパート担当者を決めるはずなのに、ほとんどの部員は手を叩くことができないのだ。これまで問題が起きないような選択をしてきた部員たちは、どちらも角が立つ選択肢を前に沈黙するしかなくなってしまう。その中で久美子は立ち上がり、高坂麗奈のために拍手を続ける。あの拍手が高らかに鳴り響くのは、自分も特別な存在になろうという決意の音色が備わっているからだ。
春は年間を通じてもっとも多くのアニメがスタートする季節。1クールアニメはもちろん、半年や1年にわたってオンエアされる作品も揃っている。
ヒット作・話題作を振り返って、これからの展開に期待していこう。
「涼宮ハルヒの憂鬱」「たまこまーけっと」をはじめ、数多くの人気作を手がけてきた京都アニメーションが送り出す吹奏楽アニメ。同じく音楽をテーマにした「けいおん!」ではゆるふわな女子空間が描かれていたが、本作は部活特有の難しい人間関係にも踏み込んでいる。苦手な相手に話しかけようとして思わず息を飲み込んだり、会話を終えてから口に手を当て呼吸を整えたりする仕草から、心の機微を感じ取ることができる。
その細やかな描写は、ユーフォニアムが息を吹き込む楽器であることと無縁ではないだろう。方向性の違いから部員が退部したり、先輩より上手い後輩が入部するといった複雑な状況を、京都アニメーションがどう描くのかも見逃せないポイントだ。
「美少女動物園じゃないところがいい」早くも“京アニの本気”と呼び声高い
先日、アニメ制作会社・京都アニメーション(以下、京アニ)が手がける春の新作アニメ『響け!ユーフォニアム』の第1話が放送された。高校の吹奏楽部を描いた本作は、今後の京アニを占う意味でも注目度が高かったが、その評価は幸先のよいスタートを切ったようだ。
京アニといえば、『涼宮ハルヒの憂鬱』『けいおん!』など、これまでにも高いクオリティーで数多くの名作を世に送り出してきた。しかし、ここ数年の作品に目を向けると、『Free!』に対しては男性ファンから「腐女子向けだよね?」とか、『甘城ブリリアントパーク』では「第1話からヒロインのお尻が丸見えとか、京アニ的にどうよ……」のように、これまでと毛色の違う作品が並んだことで「迷走を続ける京アニ」といった声も、ネットでは多く見られていた。
しかも、『響け!ユーフォニアム』が吹奏楽部のアニメということで、複雑な形をした楽器を数多く描く必要があり、登場する人物が多く、演奏の収録も簡単ではないなど、制作の難しさがうかがえたことから、放送前から不安の声も少なくなかった。
だが『響け!ユーフォニアム』では、監督に『中二病でも恋がしたい!』や『AIR』、『Kanon』『CLANNAD』などの監督として名を馳せた石原立也が、キャラクターデザインには、『涼宮ハルヒの憂鬱』と同じく池田晶子、そして演出は『けいおん!』で監督を務めた山田尚子が担当するなどの堂々たる布陣で挑んできており、まさに“京アニの本気”を感じさせる作品でもある。また、現実でも男子部員が少ない吹奏楽部を舞台にすることで、ありがちなハーレムアニメではなく、より自然なかたちで少女たちのイキイキとした活躍ぶりを描くこともできるとして、近年の作品に辟易としていたファン層からは期待が集まっていた。
第1話が放送されると、ネットでは「まるで体育会系的な学園青春ものだ」「美少女動物園じゃないところがいいね」など、決して“日常系”や“空気系”ではなく「まじめな部活を描いた作品だ」という意見が目立った。また、「やっと京アニが本気出したな」とか「これでダメだったら京アニは終わりだろう」といった“京アニの本気”を意識させるファンの声も多く、中には早くも「今期の覇権アニメだ」という評価もあるようだ。
“音楽系の部活アニメ”というと、かつて社会現象とも言われた『けいおん!』と比較する人も多いかもしれない。しかし、『けいおん!』を「まじめな部活のアニメだと思って見たけど、ちがった……」という人にとっては『響け!ユーフォニアム』は、まさにうってつけのアニメ作品といえるだろう。
京アニは、2013年に「新たな挑戦」ともいうべき『Free!』を世に送り出した。『響け!ユーフォニアム』では、「吹奏楽部のまじめな活動を描いている」という点が、第1話で順調な評価を得られた要因だろう。高校の吹奏楽部をテーマとしたアニメは決して多くはなく、その制作も容易ではないことがうかがえる。本作は、いわば“文化系の部活によるスポコン”であり、京アニには別の意味での「新たな挑戦」として、今後の展開に期待がかかっている。
2015年4月より6月までTOKYO MXほかにて放送された。
京都府宇治市が舞台のため原作では久美子など一部を除いて大半の登場人物の台詞が関西弁だが、テレビアニメでは登場人物全員が標準語を話すという設定に変えられている。